第106話 爆撃
それから数時間後。
戦術長のロイと航空班長のライアンが話し合い、作戦の段取りを決める。
そして出来上がった作戦案を寺門に提出するのであった。
「今回の作戦を簡潔に説明すると、まず巨大建造物に対してホッフヌングで爆撃。そのあとに残った残骸を主砲などで掃討する」
「その後、艦載機が発艦して地下のトンネルに突撃。適宜トンネルを含めた施設を攻撃しつつ、惑星全体にある小基地を破壊って感じかな」
「分かりました。作戦案についてはその方向で行きましょう。作戦開始時刻は、今より12時間後にします。それまで準備を進めてください」
「了解」
そういって二人は持ち場に戻っていく。
「なんだか任せて大丈夫そうですね」
「ロイさん、なんだかんだ言ってキッチリ仕事してくれてるし、いい人なのかもね」
そんな事をモニカが言う。
そのロイは、航海長のデニーと作戦について話し合いをしていた。
「まぁ、なるようになるでしょう」
そんな感じで時間は過ぎ去っていく。
そして作戦開始時刻となる。
「ホッフヌング、作戦開始領域へ入りました」
そう航海長のデニーが報告する。
「了解。これより1番惑星アルファ基地殲滅作戦を実行します。ロイ戦術長、攻撃開始」
「了解。作戦第一段階、遠距離爆撃開始」
そういってミサイルを発射した。
ホッフヌングの搭載しているミサイルの弾頭は、亜重力子と光子の二つがある。
光子ミサイルは、物質と反物質を使って対消滅を利用した破壊力のある弾頭だ。
それに対して亜重力子ミサイルは、亜重力子と呼ばれる素粒子を使っている。文字通り、重力に関係している素粒子で、その効果は光子ミサイルに匹敵するほどだ。
光子ミサイルと亜重力子ミサイルの違いは重力が関係しているかどうかである。
今回遠距離爆撃で使用するのは亜重力子ミサイルだ。重力の力を利用してこの巨大建造物を破壊するのである。
「着弾まで5秒、3、2、1、今!」
その瞬間、地表で巨大な水爆が爆発したような、巨大なきのこ雲が発生する。
「状況は?」
「光学による観測不能。レーダー波による観測に切り替え」
そういって通信長のジェニファーは、どうにか観測しようと試行錯誤する。
数秒後、映像が回復した。
「巨大建造物、被害あり。天井部分に穴が空いている模様」
「まだ予定の大きさになっていませんね……。ホッフヌング前進。近距離での重爆撃を実施」
「了解。重爆撃開始ポイントに移動開始」
ホッフヌングは巨大構造物のほぼ直上までやってくる。
「重爆撃開始」
「了解、重爆撃開始」
そういってある物を投下する。
それはタングステンで出来た金属の棒。そしてその弾頭にはタングステンを対消滅させられるだけの反物質が詰め込まれている。
アメリカ空軍で開発されていると噂される「神の杖」だ。神の杖は重い物質で作られた金属の棒を単純落下させて、その運動エネルギーによって対象を破壊するものである。
しかしただの落下だけでは、貫通力はあっても周囲への攻撃力はない。そこで反物質の弾頭だ。
この弾頭があるおかげで、反応した時の莫大なエネルギーが周辺へ拡散する。
落下したタングステンの棒は、巨大建造物に軌道を修正し、そして命中した。
その瞬間、対消滅反応を起こしたタングステンは消滅と同時に、莫大なエネルギーを吐き出す。
その衝撃は、静止衛星上のホッフヌングにまで伝わってくる。
「とんでもない兵器だな……」
「ありとあらゆる状況を鑑みているので」
寺門の呟きに、アバターが反応する。
「巨大建造物、予定の大きさにまで拡張しました」
「よし。航空班、出撃開始」
「航空班、作戦機体発艦せよ」
航空班長のライアンが指示を飛ばす。
ホッフヌングの下方から、航空機とは呼べないような、巨大な機体が地表に降りていく。
「あれ、艦艇ですよね?」
「いえ、航空機と認識しています」
「本当ですか……?」
思わず寺門は訝しむ。
しかし、そんな事は関係なしに、航空班は巨大建造物へと近づいていく。
『こちら航空班攻撃隊。現在巨大建造物に進入』
「地下に通じるトンネルはあるか?」
『現在確認中。……発見した。これより複数に分かれて進む』
そういって航空班攻撃隊は、複数のトンネルに分かれて進んでいく。
その様子は、ホッフヌングの惑星スキャンによって、常時注視されている。
「しかし、こんな極限の状態でも航空機は破損の一つもないんですね」
「はい。ホッフヌングに搭載されている航空機は、対極地仕様にしているので、この程度何の問題もありません」
アバターの解説に、ただ納得するしかない寺門であった。
そんな中でも、攻撃隊からの報告は入ってくる。
『トンネル内部はかなり広い模様。これなら問題なく進める』
「了解した。念のため、敵からの攻撃に注意されたし」
『了解』
このまま、何事もなく小基地に向かっていくと思われた時だった。
突如、攻撃隊の一機が消失する。
「何が起きた!?」
『分からない!何者かに攻撃された!』
気色の悪い緊張が艦橋に走った。
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