第105話 内部
1番惑星に対して、惑星スキャンが行われた。
寺門たちは、その様子を固唾を呑んで見守る。
数十分後、スキャンの結果が艦長席と航海長、そして通信長の元に届く。
「結果出ました。本艦のいる場所とは反対側に巨大な建造物が見えます」
「えぇ。それもそうですが、この惑星、様々な所に基地を構えていますね」
寺門の指摘通り、1番惑星のいたるところに小規模な基地が存在している。小規模と行っても、1km四方の大きさはある。
それに、惑星の地下を通じて、互いにトンネルのようなものを張り巡らせてあるのも分かった。
「おそらく、この惑星全体を巨大なアンテナ代わりにして、内惑星領域に存在するアルファ艦隊にエネルギーを供給しているのでしょう」
そうアバターが推察する。
「となると、本命のエネルギー生成基地を破壊するだけでは駄目そうですね」
「はい。おそらく、短時間でこれらの基地全てを叩かなければ、再度利用されることでしょう」
しばらく考えた寺門は、席を立つ。
「ロイ戦術長とライアン航空班長は作戦室に集まってください」
「了解した」
作戦室に寺門と補佐のアバター、戦術長のロイ、航空班長のライアンが集まる。
「さて、前に構造物の破壊に関する作戦案をまとめるように指示しましたが、進捗のほうはどうですか?」
「形にはなっている。しかし、その作戦案は例の巨大建造物に対しての作戦案だ。惑星中の小基地を叩く方法は今から模索しないと駄目だ」
「そのことに関して、航空班に注文があります」
「何だい?」
「航空班には、この巨大建造物の方から地下に進入し、地下のトンネルを通って、それぞれの小基地を破壊して欲しいのです」
「かなり高度な要求をするものだね」
「えぇ。かなり難易度が高いです」
「しかし、それが最善なのか?」
戦術長のロイが聞く。
「と、言いますと?」
「今回の作戦立案に伴って、兵装の確認をしたのだが、その中に『岩石惑星破壊弾頭』というものがあったぞ」
「これはどういうものなんでしょう?」
寺門はアバターに説明を求める。
「こちらの兵器は、弾頭に亜重力子を使った重力変動装置を搭載しています。これによって、弾頭周辺に巨大惑星に匹敵する重力を発生させ、対象の惑星に対してロシュ限界を引き起こさせる兵器となります」
「惑星をバラバラに出来る程の弾頭……ですか」
「正直な話、これさえあれば、惑星の内部に進入して建造物を破壊せずとも、惑星丸ごと破壊することは可能であると考えるんだが」
確かに、この弾頭があれば、1番惑星の攻略も容易いことだろう。
しかし、寺門は少し考える。今だアルファに関しては分からないことだらけだ。前回の衛星の前線基地も、残っていたのは地図と部隊配置図だけだった。
今回のエネルギー生成基地も、アルファに関係する何かが残っている可能性も否定出来ない。
「……やはり航空班による攻撃を行いましょう。これでアルファの正体について何か分かるかもしれません」
「確かにその可能性は否定出来ないが……」
「これは僕個人の意見だけど、艦長の考えには賛成かな。アルファの技術ってものに興味がある。艦載機を出して、その痕跡を調べるのも面白いと思うんだ」
航空班長のライアンが意見を述べる。
「確かにアルファの技術を取り入れられるチャンスかもしれないが……。我々には超古代文明が建造した、このホッフヌングというものがある。それで十分ではないのか?」
「いいえ、十分ではありません。あくまでもアルファの艦艇に最低限対抗出来るために建造されたに過ぎません。私たち超古代文明の力だけでは、アルファに打ち勝つことは出来ません」
アバターがはっきりと答える。
その回答に、戦術長のロイは考えこむ。
「今のままでも、十分にアルファに対抗出来るとは思うんだがな……」
「僕が求めるのは辛勝ではなく、圧倒的有利による被害の少ない勝利です。戦いを有利に進めるためにも、今は敵の情報が欲しいところなんです」
そう寺門は力説する。
戦術長のロイは、最後の最後まで悩み続けた。
そして結論を出す。
「……分かった。航空班による小基地攻撃を認めよう。だがあの巨大建造物は戦術科のほうで考えた作戦通りに動いてもらうからな」
「分かりました。それで行きましょう」
「そうと決まれば、航空班の皆の所に行って激励してこないと」
そう言って、航空班長のライアンは作戦室を出ていく。
「なぁ、艦長」
「なんですか?」
「実際航空班って使い物になるか?」
「機体は充実しているそうですから、多分大丈夫だと思いますよ。あとはライアン航空班長と意見をすり合わせてください」
「了解」
そういって戦術長もワープする。
「上手くやってくれるといいですね」
寺門はアバターに問いかける。
「それは彼ら自身の対応によります」
「ですよね。まぁ、なるようになるでしょう」
そういって寺門とアバターも艦橋に戻るのであった。
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