三話
『先日起きた○○高校殺人事件。その日、教室で一体何が起きたのか。犯人死亡という形で幕を下ろした今回の事件に我々ピピット!ピヤネ屋取材班が迫ります』
3日が経った。テレビではどのチャンネルでもあの日のことでもちきりだ。凄惨な殺人現場を目の前で見せられたクラスメイトの中にはショックで寝込んだり、精神科に入院したやつもいるらしい。僕はというとあの日見たこと以上に気になることがある。
声。クラスメイトが我先にと逃げ出す中、僕も早くこの地獄を抜け出さねばと人の波をかき分けていた。その時。声が聞こえた。
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(おい、もう終わりか?)
もう終わりってなんだよ!?これ以上...次は僕らか!?逃げなきゃ早く!早く!
「うん、もういいんだよ」
五条?振り返ると自分の席に座った五条は"何か"と話をしていた。声だけが聞こえる。でもその声の主はどこにいるか見当も付かない。
(なんだそりゃあ。話が違う。何のためにこの力をやったと思ってるんだ?)
どういうこと?この声は...僕にしか聞こえてない。いや、五条と僕か。力ってなんだよ?一体、何が。
(じゃあお前にこの力は必要無いな。返してもらう。契約通りにな)
契約?返す?あぁ糞!わからないことだらけだ。
考えている内に、いつの間にかクラスメイトは皆いなくなっていた。廊下にも誰もいない。五条の顔を見る。さっきまで赤く怒りに染まっていた鬼の顔はいつも通りの不細工な五条に戻っていた。でもその表情はいつもの暗い悲愴に満ちた表情ではなく見たことの無いような晴れた表情だった。なぁ五条、さっきのアレは誰と話してたんだ?その体はどうしちゃったんだよ?
「なに?」
「い、いや...」
何も言えなかった。不思議と恐怖は消えていた。
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その後、五条はおそらく見えない"何か"に感謝を告げたあと机に頭を叩きつけた。そして動くことはなかった。報道によると死因は心臓発作らしい。
あの声は一体なんだったんだろう。テレビの画面を眺める。クラスの誰かにインタビューをしている。胸から下しか映ってないから誰かはわからない。学校からインタビューは受けるなって指示があったのにな。
『あいつはいつもいじめられてましたよ!だからあんなことしたんですかね。でも変なことがあって。ピーッ(加害者生徒)の体が、なんか、んー...大きくなってたような気がするんですよね』
そうだ、声以外にも五条のあの腕や脚。ていうか体だ。牛島の身長は178?あったけどそれを余裕で見下ろしてたぞ。
(何のためにこの力をやったと思ってるんだ?)
(じゃあお前にこの力は必要無いな)
あの"何か"が言ってた、「力」に関係ある?
わからないことがまた一つ増えた。でも、それを知ってる五条はもういないんだ。