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光り

 私の言葉を聞いた男爵夫人は烈火の如く怒った。


「この娘!ふざけないで!今までこの屋敷の者に世話になっておきながらよくそんな被害者ぶったことが言えるわね!スペンサリア公爵様、本当に誤解なんです。子供達は本当はすごく仲良しで」


 男爵夫人がスペンサリア公爵に擦り寄った時、立派な隊服を着た騎士が剣を抜いた。その剣先は夫人の首元に向かう。あの制服は確か陛下の近衛騎士だったはずだ。


「黙れ、下衆。公爵に近寄るな。既にミストン家の調査は終わっている。わかるか?お前らが何をしてきたか、全てこちらは把握している。茶番はもう終わりだ」


 これには、夫人どころか男爵とダリア姉様も硬直した。


「男爵、リズ嬢が何故膨大な魔力を手にしながら魔法が使えなかったと思う?」

「それは、まさか。そんな……」


 男爵は私の光る髪を瞳に映し、まるで恐ろしいものを見たかの様に怯えた。

 スペンサリア公爵は、男爵に近づき耳元でそっと囁く。


「そんな貴方に城への招待状がある。恐らく貴方が望んでいたように多くの貴族と話せることになると思うよ。ただし、『檻の中から』の可能性が高いけどね」


 軽やかな口調とは裏腹に公爵の表情は冷たい。


「それと、王命によりリズの保護をスペンサリア家にて行う。よって只今より、彼女の身柄を僕の屋敷へと引き渡してもらう」


 膝から崩れ落ちるた男爵に、公爵の側近と思われる男が手紙を渡しているのが見えた。


「あの男も、リズ様を大事にしていればそれこそ、大魔法が使える可能性も、貴族としてのし上がれるチャンスもあっただろうに」


 側近がボソッとそう言い、公爵は頷く。


「さて、やっとリズが僕のものになった訳だけど」

「貴方のものになった覚えはありませんけどね」

「どこから研究すれば良いのか僕は正直、頭を悩ませている。やっぱり夫婦になれば出来ることも多い訳だし」

「公爵様がいつも通り変態で安心しました」


 公爵は私をお姫様だっこし、歩き始める。


「ひゃっ」

「それでも、先ずは私の屋敷に帰って体を休めよう。美味しいものをお腹いっぱい食べて、ごろごろして、たまに私の実験に付き合う」

「まぁ、実験以外は最高だと思います」

「あ、マナーの勉強だけはしなくちゃだめだ。体が治ったら陛下にご挨拶に行かなければならないから」

「ちょっ!なんですか、それ。聞いてません」


 話がぶっ飛びすぎて意味がわからない。すると、後ろにいた近衛騎士がフォローをいれてくれた。


「リズ様を害する意思は我々にございません。城に足を運んで頂くのも大変失礼に存じますが、どうか宜しくお願いします」


「そういえば、さっき王命とか言ってましたね。公爵様、一体何をしたんですか」

「大したことはしてないよ。僕は確実に君を救えるように計画立てたからね」


 確かに陛下に助力頂けるなら、それはどんなに心強いことか。

 例え、王族が私を欲したとしても強引な手段に出て失敗すれば、その者は魔法が使えなくなるリスクがある。そんなことを恐れないのはこの奇特な男ぐらいだろう。


 私はお姫様だっこに乗じて、ぎゅっと公爵にしがみつく。


(貴方に会えて良かった。私を見つけてくれてありがとう)


 最大級の祝福を受け取ったスペンサリア公爵の魔法が、常軌を逸した威力を持つことになってしまったのは、言うまでもないだろう。







 二年後、学園を卒業した私は真っ白なドレスを着て教会の赤い絨毯の上を歩く。


 祭壇の前で待つスペンサリア・ジルベール公爵はいつになく輝いて見えた。


 二年前、私を追い回していた変態公爵は今でも自身の屋敷で私を追い回している。彼の側近兼助手をしているニアがストッパー役にならなければ、私はどうなっていたかわからないほどだ。


 とはいえ、私は毎日幸せに暮らしている。それはリズ・スペンサリアになってもきっと変わらない。


 私はジルベールの横に並ぶ。見上げれば彼は本当に幸せそうに笑っていた。私はその顔を見るのが好きだ。誰よりも私が彼を幸せにしてあげたいと思う。


 どうか彼に、この国に、沢山幸せが訪れますように。


 教会中に青い祝福の光りが充満し、招待客から歓声が上がった。


 そしてその日、私の祝福の光りが国中を覆い尽くしたという。


最後までお付き合い頂き本当にありがとうございました。


活動報告に後書きを載せましたので宜しければご覧ください

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