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冒険者登録

 予想外の胸の痛みに苛まれながらも、おおよそ無事に道中は進み、激しかった揺れも次第に緩やかになっていく。


「町が見えてきたぞ!」


 誰かが叫ぶと、間もなく、荷馬車が塀に囲まれた町の門へと辿り着く。

 門の両脇に立つ兵の前に、荷馬車に乗っていたあの兵が歩いて行く。

 それを見た門の所に居た兵が、慌てて敬礼をしている。

 どうやら顔パスらしい。

 お貴族様効果なのか、あの兵がやたらと偉いのか。

 どちらにせよ、荷馬車はすんなりと門を通過すると、街へと入って行く。


 ほとんどの物資は、先に一度ギルドに降ろすらしく、荷馬車はギルドの前に止まった。

 冒険者や傭兵もそこで一旦解散となり、それぞれがギルドに依頼完了報告をしていくらしい。


 途中まで全く気付かなかったが、どうやらあのお嬢様も同じ荷馬車のほうに乗っていたらしく、俺や他の人間が降りた後に降りてきていた。

 奥のほうの、広めに空いたスペースに座っていたらしく、物資などに隠れて全く見えなかった。


 冒険者や傭兵と一緒に、俺もギルドに入って行く。

 冒険者登録をして行くためだ。

 登録料が無料なのは一時的にだという話だし、出来れば早めにやっておきたい。


 受付に並ぶと、若い女性ギルド員が笑顔を見せる。

 受付に座るギルド員は若い女性が多く、あちこちから、可愛い!だの嫁にしたい!だのと言うセリフが聞こえる。


 ……ぐっ! な、なぜかまた胸が……


「……? 今日はどのようなご用件でしょうか」


 胸の痛みに気を取られていると、受付嬢から声がかかる。

 気を取り直して、手続きをして貰わなくては。


「冒険者登録をしたい」


「初めての方ですね! それでは、こちらにお名前と年齢などの記入をお願いします」


 受付嬢が、板のような物を取り出して、ペンを置く。

 板に文字が浮き上がり、名前の欄にペンを走らせようとしたところで、はたと手が止まる。


 ……俺、自分の名前なんか知らないぞ!!?


 どうしたものか。

 名乗る機会もなかったので、思い至らなかった。


「どうかしましたか??」


「それが……」


 俺がここに至るまでの経緯を話すと、受付嬢が同情するような顔を見せる。


「それは大変でしたね……。

 でも、大丈夫ですよ! 冒険者には、孤児だったり名前のない方もいらっしゃいますので!

 冒険者登録をするのを機会に、好きな名前をつけて生活する方も多いんです。

 ただ、一度名前をつけて冒険者登録すると、冒険者としてはほぼ一生その名前を使う事になるので注意してくださいね」


「変えられる場合もあるって事?」


「結婚してファミリーネームがついたりする場合はそうですね。

 ファミリーネームがつくのは、大体貴族の方か、大きな功績を残して爵位をいただいた場合などになりますので、平民にはあまり関係ありませんが」


 け、結婚……!

 くそっ! また胸が……っ!!


「せっかくですから、気に入る名前を書くと良いと思いますよ!」


 にっこりと笑う受付嬢の笑顔が妙に眩しい。


「わかった……じゃあ」


 何とか表情を取り繕いつつ、一瞬迷った後、ペンを走らせる。


 テディ。


 この先、小さくても良い。

 少しでも幸運が向いてくるように。

 ちょっとしたおまじないみたいなものだ。


「年齢も、だいたいで大丈夫ですよ」


 言われて、たしか茶髪の少年が同い年くらいだろうと言っていたのを思い出す。

 十二歳くらいにしておくか。


「はい! テディさん、十二歳ですね!

 それでは、魔力を流しますので、こちらに手を乗せて下さい」


 受付嬢が板を操作すると、板が淡く光りだす。

 差し出された板の上に手を乗せると、何かが流れていくような、不思議な感覚がする。


「はい、終わりました。

 こちらが冒険者の証明となるタグになります。

 記入して頂いた情報が反映されていますので、ご確認下さい」


 受付嬢からタグを受け取る。

 丸みを帯びたプレートタイプのそれは、さっき記入して手を乗せたあの板と同じ、手に持つと淡い光を放っている。


「そのタグとこの板は、同じ物質が組み込まれているそうです。

 魔導具の一種らしいですよ!

 再発行には手数料がかかりますので、無くさないように気をつけてくださいね」


 タグを首から下げると、紐が勝手にスルスルと長さを変えて、丁度いい位置におさまった。


「ランクは基本的にE〜Aまで。

 最初はEからで、前後一つずつまでのランクの依頼が受けられます。

 何度も失敗すると、ランクが下がってしまう事もあるので、無理をしないように気をつけて下さいね!」


「わかった」


「依頼は、向こうの掲示板にも出ていますが、受付でも、ランクに合わせて私達が選ぶオススメの依頼を受ける事が出来ます!

 いかがなさいますか?」


「今のオススメは?」


「登録したてですし、装備を整えるお金もない事を考えると……こちらなんかどうでしょうか?」


 差し出された板に映し出された情報を見る。

 

 ランク不問。

 猟友会の狩りの補助。

 武器などは無くても可。

 現地にて食事補助有り。

 依頼料は、狩りの成功による歩合制。


「こちらの依頼は、狩りでとれた獲物の種類や数によって、報酬が支払われます。

 あまり高くはありませんが、猟友会の皆さんの指示に従って集団で動いていただくため、比較的危険が少ないです。

 体力を使う上、拘束時間が長く、報酬が少ないので、正直不人気なんですけど……

 依頼を受けてくれる冒険者がなかなか居ないので、その分待遇が良くなってます。

 今は現地で食事も出ますし、何日か継続して続けて頂く場合には、猟友会のほうで、簡易ではありますが宿泊場所も提供していただけるそうです」


 報酬が少ないとはいえ、無一文でも食事と寝床があるのは魅力的だ。

 雨風がしのげるだけでも良い。


「受けます!」


 俺は迷わず承諾すると、板に手を乗せて、依頼の受注手続きをした。

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