氷の精霊
「あの年で、あの実力……!行く行くはこの国を代表する魔法使いになるのではないか?」
「よくもまぁ、スラムからあんな逸材を拾ったものだ。ガリル・ウル・レイヴァが豪運の持ち主だというのはは常々聞いていたが……」
周囲がざわつき始める。まあ、今まで下に見ていた子供が、才能の塊へと変貌したら驚くのも無理はないのだろうけど。
「ふむ。血は流れていなくとも、レイヴァの名を継ぐ者か。つくづく面白い一族だな」
「!?」
急に背後から声がかかり、ポン、と手を頭に乗せられた。
多少油断していたとはいえ、俺が全く反応できなかった。かつてどんな暗殺者にも気づいた俺が。
見たことのないほど完成された隠蔽魔法。背後に微かに残る魔力の残滓から、そう推測できる。
俺が振り向くと、華美な装いを身に纏った男が楽しそうに笑って俺を見ていた。
「ははは!やはり良い反応をする!」
男は、ぽかんとした俺を見てより大きな声で笑った。
さっき、アリスと俺が入ってきた入口の扉が突然勢いよく開かれる。
「王よ!お一人での行動はお控えくださいとあれほど……!」
そこには初老の男性執事が立っていた。
……というか今、あの人、王って言った?
俺の後ろの人に対して?
「……王様?」
思わず敬語も忘れ、とんでもなく失礼な態度で聞いてしまった。
「ああ。ガリルから話は聞いていたが顔を合わせるのは初めてだな、ミトラ」
それを気にする様子もなく、王様は笑いながら答えてくれた。
「さて……この後の登場は気が引けるか?我が娘、ソフィアよ」
王は今は姿が見えない娘に向けて問いかけた。
今日の主役は王女だったことを思いだしハッとする。
俺が、この後の登場は気まずいだろう、と懸念した、その時。
白く輝く、凍てついた空気が床に発生した。
と思えば、その空気はふわりと浮かび次々に氷の彫像を造り上げていく。
氷の彫像は、剣や槍を携えた騎士を模していた。
綺麗に列に並んだ氷の騎士は、まるで誰かの通り道を作るかのように並んでいる。
一瞬にして顕現した氷の騎士団を従えて現れたのは正に『雪の精霊』。
透き通るような白い肌に、どこまでも穢れの感じさせない銀の長髪。サファイアよりも煌めく瞳。顔の作りは整いすぎて浮世離れしているほどだ。
言われずとも分かる。彼女こそが、今回のパーティーの主役である、ソフィア姫だ。
「いやだわ、お父様。あんなお遊びに気が引けるなんて」




