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いざ出発!

「はぁ。また負けちゃった」




 ため息をつきながら黄金の髪の少女がぼやく。




「まぁ、アリス弱いしね」




「何よー!私だってたくさん勉強してるんだから!」




「そんなの、誰だってしてる」




「うっ!」




 今は既に朝の日課をこなした後だ。朝食を食べに向かっている途中。




「ところで分かってる?今日から王都だって」




「む!あのねぇ、私はミトラよりも公務に参加したことは多いのよ?」




「パーティーを公務って」




「他の家の人達と関係を作りに行くんだから公務でしょ?」




「確かに」




 こういう所はしっかりしている。納得してしまった。

 さすが貴族の娘、根はポンコツじゃない。




「えーと?今日の夕方に転移魔法を使って王城に行って?」




「もう、ミトラが覚えてないじゃない」




「ま、こういうのは初めてなんで」




「その割には飄々(ひょうひょう)としすぎじゃない……?本当に初めて?」




「元貧民の俺がパーティーになんて参加したことがあるとでも?」




「まーた自虐ネタ?それ、笑い取れてないの自覚した方が良いわよ」




 まあ、実際には前世ではパーティーを開く側だった訳だが、仕事でよほど疲れていたのかそこら辺の記憶がどうも曖昧だ。



 それはともかく、参加したことがある、というの事実があるだけでだいぶ心が楽になるのは確かだ。




「じゃあ、夕方までは時間があるのか」




「そうね」




「特にやることもないなぁ。今持ってる魔導書も全部読み終わったし」




「えっ!?あの量読み終わったの?この前新しいの買ってなかった?」




「速く読むコツがあるんだよ」




「でもこの速さは人間離れしてるわよ。あ、ミトラは王女様と模擬戦があるんでしょ?戦闘練習でもしてたら?」




 そういえば、俺がパーティーに参加するのはそれが理由だった。魔導書で忘れてた。




「いや別にしなくて良いだろ。強いって噂の姫サマに勝っちゃったら、ただの空気読めないガキだ。それなりに忖度しないとな」




 王の御前で姫に勝ってしまったら、その場の空気が凍ること間違い無しだ。



 王は自分の娘を自慢したくて模擬戦を開いているようなものだから。



 それなりに手を抜いて、それなりの戦いをして、自分は魔法使いとして優秀な方だよ、とアピール出来れば良い。



 それでいい感じに、ごく自然に負けて姫様の実力を持ち上げれば良いだろう。




「なんで勝つ前提なのよ。それに忖度って」




「ちなみにアリスは王女様が魔法使ってる所見たことあるの?」



 何度もパーティーに出席しているのだから少なくとも王女を見たことはあるのだろうが。




「あ、話をそらした。そうね……あるわよ。確か、氷属性の魔法をメインにしてたわね。王女様自身が凄く綺麗な人だから魔法を使った後のお姿が氷の精霊に見えたくらいよ」




「へー」




 かなりの実力を持つアリスがそんな風に評するとは。魔法使いとしての腕前は確からしい。




「どうよ。氷の精霊相手にまだ忖度とか言ってられる?」




 アリスがからかうような笑みを浮かべる。




「ま、氷は火に弱いって相場が決まってる」




「うわー、まだイキってる」




 多少、アリスに引かれる。




「そのくらいの心意気じゃないとやってられない」




 俺が冗談めかして、肩をすくめながら言うと。




「ふふ、確かに!」




 アリスは眩しい笑顔を浮かべてケラケラと楽しそうに笑った。



 その姿を見て、俺もつられて笑ってしまった。



 その後は朝食を食べた。ちなみに朝食の時の話題は『無詠唱の使うタイミング』だった。







 結局夕方までは、自分の杖の手入れや前世の『秘術(オリジナル)』の研究をした。

 そこで『秘術(オリジナル)』についての進展が一つあった。



……アリスは庭で魔法の練習をしていた。





 そして夕方。レイヴァ邸玄関にて。




「ねえ、ミトラ結局今までなにしてたの?ずっと部屋に籠ってたけど」




「俺の『秘術(オリジナル)』についての研究」




 嘘はついていない。



 今日の研究で分かったのだが俺は、『秘術(オリジナル)』を一つの属性で二つ(・・)作れるらしい。



 転生に依るものか、魔王の『灯火』を継承したことに依るものかは不明だが、とにかく一属性につき一つの原則がある『秘術(オリジナル)』を二つ作れると。



 この研究結果が出た時は自分を疑った。




「はぁ!?『秘術(オリジナル)』の研究!?何がなんでも早すぎるでしょ!」




 よほどアリスは驚いたようで声を荒げていた。




「自分の魔法の派生ルートを考えてただけだよ」



 これは嘘。自分に最も適した派生ルートなどとっくに把握している。



「いやそれも、魔法学園の高等学年でようやく出来るようになるやつだから!」




 今のが方便だとは露知らぬ、鋭いアリスのツッコミ。




「まあ良いだろ?さ、出発だ!」




「あ、また話をそらした!」




 アリスを置いて、魔法陣が展開されている正門前に向かう。




「おーい、二人とも出発するぞー!」




 魔法陣前で義母(かあ)さんと話していた義父(とう)さんが大きめの声で呼び掛けてきた。




「ほら、アリス。ボケッとしてないで行くよ!」




「さっきの話は今度ちゃんと話してよ!」

 

 


 


 




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