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これ程コロコロと肩書きが変わる【賢者】がいるだろうか?

……という事を、俺『ミトラ・ウル・レイヴァ』が思いだしたのは数ヶ月前のことだ。


 時は【賢者】が世界を統治した時代の遥か後……ざっと千年くらい経った世界。


 そこに俺は転生してしまったようだ。


「……まさか、こんな形でずっと議論され続けた『転生魔法を使用した場合記憶はどのように継承されるのか?』というテーマに答えがでるとは……」


 当時の世界最高峰の魔法使い達が考え続けた答えは『転生後、少しの空白期間があった後に全ての記憶を継承』だったらしい。


 もっとも俺の不完全な魔法がそうさせたのかもしれないが。


 転生した俺……ミトラ・ウル・レイヴァは辺境の貴族の養子(・・)で、12歳の少年である。


 数年前まではスラムにて貧しい暮らしを送ってきたが、ある日唯一の家族である母親を当時の流行り病によって亡くした。


 その時に俺に手をさしのべてくれたのが……現在のレイヴァ家の当主の娘であるアリスだ。


 俺も母と同じように流行り病にかかり、死ぬ直前だった所を偶然街に視察に来ていたレイヴァ家に見つけてもらった。


 すぐさま医者に見てもらい一命をとりとめた。


 そして、その際に国民が全員受ける義務がある『魔法適正』と『灯火鑑定』を受けることになった。


 貧しかったためそんな『普通のこと』すらもできなかったのだ。


 そして、結果は……まあ、これでも前世は【賢者】だったので常人離れした数値を叩き出した。


 同席していたアリスとその従者がその結果を見てザワつき始め、魔法具で誰かに連絡し始めた。


 そこから少し経って、当主……今の義父(とう)さんが飛んできて『キミ、レイヴァ家の子にならないか!?』とすごい勢いで言われた。


 帰る家もスラムのチンピラ達に奪われた。(今までは母親が少ない金を渡してくれていたのでなんとかなっていた)


 一人では食いぶちも稼げない。

 なので、迷うことなく俺はレイヴァ家の子供となった。


 こうして、貧しい少年ミトラは貴族の少年ミトラ・ウル・レイヴァとなった。


 そして今。ミトラ・ウル・レイヴァは前世の記憶を取り戻し実質、ミトラ・ラーヴァナとなった。


 ちなみに、ミトラ少年の性格は何故だか前世の俺に近くなっている。転生した人間なのでなるべくしてなった感じはするが。


 などと、考えていると部屋の外からドタドタと誰かが走る音が聞こえてきた。


「ミトラ~!早く魔法対決しましょ!今日は私が勝つわよ!」


 黄金を溶かしたかのように流れる美しい長髪。


 透き通るような白い肌。


 大きな蒼い目の、とても整った顔立ちの少女が、部屋の扉を思い切り開くやいなや目を輝かせながらそう言った。……そう。おてんばお嬢様こと、アリスである。


「ハァ?嫌だよ。疲れるし、アリス弱いし」


 そして俺はいつも通り拒否する。そう。いつも通り。


「ふふ!そんなこと言っても結局毎日相手してくれるじゃない!」


……そう。いつも通り。


「そうしないとアリスずっとこの部屋に居るじゃん」


「だって……ミトラしか練習相手いないんだもん!」


 アリスが申し訳なさの欠片も見せない明るい笑顔で言う。


「……分かったよ」


 苦笑いを浮かべて承諾する。結局俺はこの笑顔にいつも負けてしまうのである。


……俺とアリスが魔法を学び始めたのは同じ日だったが、俺とアリスの成長スピードは全然違った。


 その時はまだ俺は記憶を取り戻してはいなかったが、このミトラ少年は前世の俺と同じ程の才能があった。(おそらく転生魔法によるものだと考えられる)


 俺は次々に魔法技術を吸収し、たった数日で俺達に魔法を教えてくれていた教師を超えてしまった。


 そこからは、教師から学ぶことも無かったので毎日自分の部屋に籠って魔導書を読みふけっていた。


 するとどうだろう?数ヶ月前、自分の前世の記憶が甦ってきた。


 そんな事は知らないアリスは毎日毎日新しい魔法を覚えては俺に勝負を挑み続けた。


 勝負の場所は決まってレイヴァ邸の庭である。


「じゃあ……準備はいいよね?アリス」


 俺はいかにも魔法使いが持っていそうな長杖を構える。


「もちろん!こっちから誘ったんだもの!」


 アリスは指揮棒(タクト)のような形の短杖を構える。


「《サンダー》!!」


 まずはアリスが雷の魔法を放った。その攻撃がもはや日課となりつつある朝の勝負の、スタートの合図だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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