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分からない何かが居る

作者: 伏木 元

「分からない何かが居る」


 我が家には何かが居る。正確には私の部屋、さらに正確に言えば私の机が置かれている部屋で自室などではない。その何かは正体不明で名前も分からないのでとりあえず「ハテナ」と呼ぶことにする。

 その日、私は一人で自室と思っている部屋で机に向かい新聞を読んでいた。机は部屋の隅に置かれ、私は部屋の入り口に背を向ける形で座っていた。その時、背後に何か視線の様なものを感じ後ろを振り向いた。そこにハテナが居た。ハテナを有るではなく居ると言っているのは、広辞苑による「動くものが存在する。主に人・動物に用いる」によるところで、私が部屋に入ったときはそこには何もなかった。ハテナはそこに移動してきた分けで動いてきたので動くもの、私の感じた視線はハテナから発せられたと思っている視線を発するのだから目があると思われる。それによりハテナを生き物と判断して居るになっている。私は動いているものでもロボット掃除機からは視線を感じない視線を感じたハテナは何らかの生物だと思う。

 未知の生物を見て我々が最初に考えることは、この生物が我々に危害を加えるか、危害を加えなくとも我々にとって危険であるかないかの判断だと思う。私が振り向き最初にハテナを見たとき、そこに居たことに多少の驚きはあったが私に危害を加えようとしているとか、何か有害物質を発生させていて危険な状況を作るとかの感じはしなかった。何のためにそこに出てきたのかは分からないが、私と敵対関係ではなさそうな感じでそこに居るだけのようだった。そのため、私が逃げたり叫びながら慌てふためくといった行動をとらずにハテナを観察できた。

 まずそこに居るハテナが立っているのか座っているのか分からない、さらに生物だとして頭部になる部分がどこか分からない。生物の中でも昆虫や鳥でもなさそうなので動物と考える。動物の頭部には顔面があり目・鼻・口・耳等があると思われるが、それが確認できない。後ろを向いているのかも知れないが、後ろ向きとして臀部辺りに尻尾を探すがそれも確認できず前向きなのか後ろ向きなのか分からない。私としては、何となく視線を感じたので、いま見ている面が前面だと思っている。前面に顔があるとして中心あたりに鼻があると思われるが、鼻は広辞苑によると「哺乳類の顔の中央に隆起し、呼吸・臭覚をつかさどり、発声を助ける器官」とある。中央に隆起しているこれは目立つはずだがハテナには隆起した器官が見られない。鼻が低いのか鼻自体がないのか、鼻がなければ呼吸をしていないのか。呼吸をしないとなると哺乳類ではないのか、動くもので視線を感じる哺乳類でない生き物とはどんな生き物なのか。目はほとんどの動物で大きさや視力・能力に差はあるものの、何らかの形の視覚器官を持っている。ハテナが私を見ていたから私は視線を感じたのだろう目はあると思うが確認できない。耳もほとんどの動物が頭部の上の部位にあり、開口部を外に向けて飛び出させていて目立つものだがハテナには耳も確認できない。無い無い尽くしつのいでに口、口は広辞苑によれば「動物が体内に食物を摂取する穴状の器官。高等動物では唇・歯・舌などをそなえて消化器官につながり、また人類などでは音声を発するのにも使う。鳥類では嘴となる」とあるが、穴状のものは確認できない。ないとすると食物をどのように摂取するのか、はたまた鳴き声なども発しないのか。頭部および顔面が確認できない。

 他はどうだ、動物には手・足があるではないか。足は広辞苑よると「胴から下に分かれて出て、からだを支え、また歩くのに使う部分」最低でも足は2本はあるはず。1本の生物を私は知らない。人間のような二本、動物の四本、昆虫の六本、蜘蛛は八本、蟹は十本、みんな偶数、奇数はないらしいその後ムカデまで。しかし、ハテナの足は確認できない。手となるとかなり限られるが、前脚ならかなりの動物は持っているだろう。手は広辞苑によると「人体の左右の肩から出た肢」、前脚は「獣や虫などの、頭に近い方の一対の足」であり動物には特徴的なもので胴体から出ている分かりやすいものであるが、ハテナにはその特徴的なものも確認できない。

 それでは何もかも確認できないおまえは何が見えているのかと問われると。私に見えているものは。大きさが50Cmほどの体型がハッキリしないもので、全体が毛のようなもので覆われている。毛と言ってしまったが生き物と思っているので毛と表現したが、毛と言うよりは綿菓子のような感じ、さらに言えば雲の様にも見えるモワーとした毛のようなものである。しかも、その毛のようなものが丸くかたまったような感じのものを私は見ている。色は黒っぽく見えるがハッキリしない色である。入り口側が明るいので逆光気味のため、そう見えているのかも知れない。これだけが私に見えているもので、動物的特徴はほとんど確認できない。ここまで色々と確認できないと、我々の知る動物ではないのかと思い始める。動物でないそれは何かUMA、地球外生物、幽霊、妖怪の類かどれにも当てはまりそうでもあり当てはまらなそうでもある。

 見えているものに自信がもてなくなって来た、幻でも見ているのだろうかそれとも夢で見ているのだろうか。見えていることに自信がないのならその他ではどうか、鳴き声や動作に関する何らかの音、神経を集中しよう、「ブーン」コレは家の前を車が通った音か、かすかに「ピーポピーポ」コレは遠くを走る救急車の音、さらに集中「カッチカッチ」コレは壁掛け時計の秒針の音、普段はあまり気にしないが色々な音が聞こえるものだ。しかしハテナからの音は何も聞こえない、「キーン」なんだこの怪音はハテナか、いや違うこれは最近始まった私の耳鳴りだ、周りが静かになると聞こえてくる。ということは周りは静かであり、よってハテナは何も音を出していないらしい。

 耳がダメなら鼻だ、臭いはどうだ生き物なら何らかの臭いはすると思う。魚なら魚臭いし草なら草ポイ臭いがするものだ。生き物なら生体活動により何らかの臭い成分を発生させているはずだ。臭いはどうやって嗅ぐんだっけ、そうだ鼻で大きく息を吸うんだそして集中しよう・・・しかし何も臭わない。もともと花粉症気味で鼻に関しては自信がない、かといってもっと近づいてクンクン臭いをかぐ気分にもならない、なにしろ相手は未確認生物なのだから。目、耳、鼻、我が五感中3つがダメ、あとは触ってみると舐めてみる。しかし、直接触ったり舐めるなどの行為は未知の生物に対しては避けたい。ではどうするか、こちらから何かアクションを起こし相手の反応見てみる。生き物なら何らかの反応をするだろう。声をかけてみる聴覚を持つ生物なら何らかの反応をするだろう。手を振るなど私が動けば視覚があるなら何らかの反応を示すと思う。今のところ目や耳があるかのを確認できず、目や耳を待たなければこれらの行動は意味がない。あとは触ってみる直接触るのはどうかと思うので棒か何かでチョンチョンとつっいてみたいが、ここには棒どころかそれに変わるような物が何もない現時点ではこれも無理である。しかし、これらの行動にはリスクが伴う、相手が驚いて逃げてくれればよいが、逃げずに攻撃的な行動に出るかも知れない。鋭い牙や爪でもあったら、地球外生物で何か怪光線のようなものを発したら私に応戦するすべがない。しかも逃げたくても入り口は押さえられている。

 とりあえず相手が何もしないようなので、あえてこちらからリスクをおかして何かする必要性はないように思われる。しばらく無視をして様子を見よう、私は机に向かい新聞を読むふりをして様子をうかがった。

 そんなことをしていたら尿意を催してきた、トイレに行きたいが入り口が押さえられている。年と共にトイレの回数が増え膀胱の筋力も衰えてきて少しの刺激でもチビッテしまうこともある。後どれくらい我慢できるだろうか大変な状況になってきた。我慢の限界が来たらトイレに走り出すしかない、ハテナも驚いて逃げ出すかも知れないが逆に驚いて反撃してくるかも知れない。そうしたら尿意の我慢とハテナとの二重の戦いになる。これは避けるべきだ、さりとて他に名案はは浮かばない。あとは何とかハテナが消えてくれるよう祈るしかない。そうだ、祈るのだ念じるのだ、様々な感覚器官が無くとも第六感の器官があるかも知れない、テレパシーなら通じるかも知れない消えてくれるようお願いしよう。生物なら排泄が出来ないことの苦しみは分かるだろう、理解できたら消えてくれるかも知れない。心に念じようテレパシーを送ろう。

 脂汗が出てきたもう限界である。私はふり向き部屋の入り口を見た・・・。そこには何もないハテナはいない。私は幻でも見ていたのだろうか。今までの緊張が一気にゆるんだ、それは膀胱の筋肉も一緒だった。心地よい放出感にしたりながらこのことによりこれから処理しなければならない様々な事を考えながら私は部屋の入り口を見つめていた。

                                          

                                        完











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