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革命前夜  作者: むつ
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魔道大国改革編〜1〜

だいぶ遅れました。細かい設定を調整したところ月に1回の更新が限界かと思います。

すいません。

「1つ包めばわっちから2つ包めばあなたがた最後に包むは二人ともあそれあそれそれいただきましょう家族の輪♪」

太鼓や笛の音、そして子供達の高らかな歌声が脳内に響く。あたりは暗く街頭が等間隔で設置されている。光が気持ち悪い。

暗闇が心地よく、まるで母体の中の赤ん坊のような安心感に包まれているようだった。

「4つ笑うは子どもから5つ話せば身内かな6つ数える数え唄♪よいそれよいそれご飯だよ9つまでにいただこう♪」

本来不気味で仕方ないはずのこの状況。太鼓や笛の音は次第に大きくなり、その歌は耳元で歌われているかのようにとても大きくなっていた。

「……。」

無言で歩いているうちに真っ暗闇の道を歩いていた。光は一切なく、本来高校生なら絶対に立ち寄りたくもない空間にいた。すると道の横にうっすら光る1つの観音像があった。そこで歌や曲はピタリと止まり、意識が飛んだ。


目が覚めるとそこは一面の雪景色。いや雪ではない真っ白な光の空間だった。電車を降りて以来感じることのなかった恐怖心がもう一度俺を襲った。あたりを見渡すも地平線まで真っ白な何も無い空間。最早声など出そうにも出せなかった。考えてもキリがなく、ここで死ぬのかという確信を得てしまった。

「汝、死せり。故に我が空間へと呼び寄せた。」

突如何も無い空間から圧倒的な光を放ちながら現れたそれは神々しく、放つ言葉一言一言に優しさと自愛に満ちたものを感じた。しかし…

「あのすいません死んだってどういうことですか!俺はこうして話してるし、体の感覚だってありますよ!」

すでに死んでいたという現実を突き付けられて光の先に訴えかける。その時、光が分散されて巨大な影がうっすらと姿を現した。腕が全部で6つあり、顔が3つ見えた。それは紛れもない十三観音像だった。

「…観音…様?」

中学の頃に寺の和尚様(おしょうさま)の講和を聞く授業があり、俺らの地域では亡くなった時に十三観音様に導かれると聞いたことをふと思い出した。

「汝、罪を犯した。親を越し先に死する者石を積み罪を懺悔する。しかし鬼により石を崩され、積み終わることの無い地獄へと誘わせる。」

変わることの無い口調でたんたんと話を進める。その声を聞く度に何故か不思議と落ち着きを取り戻すことができた。

「すいません。観音様、俺は…じゃなくて私はいつ亡くなったのですか?身に覚えがありません!」

今思った最大の謎を訴えると同時に1つの記憶が脳内再生し始めた。

それは子供が道路に飛び出し、トラックに追突しそうになったところをダッシュで元々勢いがついていた俺が子供を吹き飛ばし、変わりにトラックが俺に突っ込んでくるというものであった。トラックが俺の視界いっぱいに写ったところで記憶は途絶えた。

「そんな…」

本当に俺は死んだらしい。その記憶は紛れもない俺自身のものだったのだ。死んだことに気付かないというのは実際にあると実感したと同時にこの先どうなるのかの恐怖が俺を襲った。

「本来、汝閻魔様の元で罪に問われる者。……しかし先程閻魔様からの命令が届きました。あなたに仕事を与えます。あなたの転生先はいずれ崩壊し、世界を滅亡へと導き、星を無くしてしまいます。その世界を救いなさいとの事です。」

古風な口調から現代風な滑らかな口調に変わり、今後の在り方を淡々と説明された。やはり観音様の力なのかさっきからしっかりと落ち着いた気持ちになっている。お陰様で輪廻転生とはこういうことを言うのだと魂の循環法を理解出来た。しかし問題はそこではない。世界を救え。という命令はあまり信憑性がわかないし正直何言ってるかもわからない。

「すいません何言ってるか」

――――――――――――――

「わからないよ!!おじいちゃん達がいなくなったら私だってどう生きればいいか…」

これからの設計を立て全てを見通したおじいちゃんとは違い、ほとんど戸惑って考えが追いつかないセレアは意志をぶつけることしか出来なかった。

………気付くとセレアは国の大きな正門前にいた。ここはすでに国外であり、おじいちゃんの展開された術魔法に気付かずに転送されたのだ。転送魔法はセレアの家系の得意分野であり、セレアの国では転送系などの空間魔法は国宝レベルで重宝されていた。故におじいちゃんはセレアを逃がしたのだろう。指名手配犯として賞金をかけられていたのだから。セレアはそれすら知ることができなかったのだ。孫を想うおじいちゃんによってそれは隠蔽されたから。

「おじいちゃん…。」

恐怖と王国への憤りを感じつつ、旅立とうとしたその時、体が軽くなった。

「勝手に出られたら困るなー。面倒くさいからさー。」

少年の元気な声が脳に響く。

その日、脱国者が1人、命を落とした。

――――――――――――――

「わからないんですけど、僕なんかにできるんですか?」

「あなたの運命です。閻魔様がそう仰るのです。自信を持って命令を全うしなさい。そのために私の加護を受け取り、閻魔様から預かっている力の一端をあなたに授けます。それがあれば次の世界で生き延びることはできるでしょう。それでは転生を開始します。」

相変わらずこちらの意志を尊重せず、一方的に話を進められやるしかないと実感させられた。観音様の話が終わったその時突然さっきの強烈な光が俺を包んだ。

転生とは、その世界で亡くなった人を依代とし、生まれ変わるというものである。それは次元や種を超え、永遠に循環され続ける魂の性質であった。俺は閻魔の力のせいなのか転生の瞬間をしっかりと五感と六感で感じていた。まず魂を完璧にこの世と分離する。その後は新たなる肉体に宿るというものらしいのだ。…本来なら。それは魂が完璧に分離を完了し、次元を超えようとした時だった。オーブのように丸く白く光る球体と遭遇したのだ。それは魂を誘導するかのように宙を巻い、霧がかった光の空間からどこか見た事のある風景へと下降?していった。

目の前に広がるのは前世のテレビの中でよく見る上空数千メートルとよく似ている光景だった。いや、似ている所ではない。そのものだった。

風などは何も感じないが先程から何かを探すかのようにオーブのようなものが辺りを見渡しながらフラフラと浮遊している。転生中に少しわかったことがある。この世界は地球に非常に似ている部分があるが、自然がとても多く、遠くに色々な国がちまちま見える。救うほど破滅していない気もした。そして、どうやら俺はこのオーブのようなものから一定距離離れることができないらしい。恐らく半径5メートルくらいだと思う。

オーブのようなものがふと動きを止めた。そこにあったのは1人の女性の遺体だった。外傷はなく、とても美しい顔立ちをしていた。


 『ここ入ってー』


 急にオーブのようなものが語りかけてきた。俺に拒否権はなく、その遺体へと吸収されていった。


体が妙に重い。眠い。石や木の根が体に当たって痛い。

「んー…。」

ものすごい眠気が俺を襲うが背中の痛さが睡魔に勝り俺は重い瞼をゆっくりと開いた。

そこに見えるのは膨大な大森林に恐竜のような大きな動物に空飛ぶ大きな鳥、見たことの無いような木と同じくらい大きなきのこも生えていた。

 「本当に転生したんだ…。ん?でも待ってよ一通り説明受けたけどここから何をすればいいのかさっぱりわからないし、そもそも生きていくことで精一杯だぞ」

目の前の景色に感動しつつ、とてつもない不安が体を震わす。どうしようもない現状に絶望に陥ったその時だった。

『ちゃんとできたみたいだね!いやー十三観音様が言う通りにしたら大丈夫だったぽいね!』

 肉体に入る寸前のあの声が俺の脳内から聞こえてくる。鳥肌がざわざわと全身に立つ。直接脳内に聞こえるのはなかなか気持ち悪い感覚だな…。

 「あのー、誰ですか?」

他に聞くことがあるのかもしれないがこれで精一杯だった。

『私はセレア=ノベールただのセレアね!この体の前の持ち主っていった感じかな』

「は?」

名前はわかった。わかったんだけど、その次の発言が引っかかる。正直頭の中が真っ白すぎて思考が追いつかない

『あーとね!私はねつい最近死んじゃったみたいなのね。それで気付いたら十三観音様って言う人が精霊としての生をくれてね。これから来る魂の導きをしてって言うから了承したの。精霊として生きる代わりに私の体をその魂に捧げるってのが条件だったんだけど、私もその体の中に入れる存在になった訳だから今1個の体に2個の魂が入ってるって思ってくれていいよ!簡単に言えば二重人格?』

…なるほど?要は2人で世界救ってねー。みたいなことか、確かにこの世界に住んでいたセレアさんがいるのは心強くはあるな。

「ちなみにこの世界の破滅ってどういうことか知ってますか?」

『私も十三観音様から聞いた話しか知らないけど全国各地で内乱が起きて、いづれ世界は腐敗の地へと変えられてしまい、今後生物は繁栄することも出来ず滅んでしまう。って感じに言ってたはずだよ!ちなみに私の住んでいた魔道国家アルディアも今内乱起こしているんだ…。そこでおじいちゃんに無理やり脱国させられて気付いたら殺されちゃったんだ…。』

そういうことだったのか。セレアさんも犠牲者だったってわけか…。

「…セレアさん大変でしたね。いち早くこんな世界救ってやりましょう!俺らにはそれをやらないといけない使命があるんでね!!」

『そうだね!その通りだ!ところで敬語とかいらないよため口でいいよセレアって呼んで!!』

先程の悲しそうな口調が一変し、やる気に満ちたような口調に変わった。

「よろしくセレア。ちなみに俺の名前は谷崎将人。ただの将人な。」

『よろしくね将人!ところで将人ってさ、ニホンジンでしょ?』

唐突な発言に少しドキっとする。

「確かに日本人だけど観音様から聞いたのか?」

『いいや!!この世界に1人谷崎剛三っていう武術の達人がいるんだ!その人はニホンジンっていう種族らしいんだよ!だから将人もニホンジンなのかなって!』

セレアの発言に更に胸が高鳴る。谷崎剛三といえば完全に俺のおじいちゃんの名前と一致しているのだ。また、おじいちゃんは合気道の達人で武術会の顔と呼ぶにふさわしい程の武道家なのだ。そしておじいちゃんは去年の夏に行方不明になっている。

「セレア、もしかしてだけどその人の武術って合気道とかって言わない?」

少し考えた後、思い出したかのようにこう答えた。

『あー!そんな名前だったよ!!百戦錬磨の鬼って言われてるし。』

こっちの世界でもおじいちゃんの力が通用するのか…。どんだけ強いんだあの人は…

『しかもしかも剛三さんって肉体強化スキルが誰よりも強すぎてまさに鬼に金棒って感じなんだよね!多分ステージスキルに到達してると思うね!!うん。』

ん?スキル?ステージ?なんだそれゲームか何かか?

「ちょっと何言ってるかわからない。」

んな!っというような驚きの感情が心の中から響いた。恐らくセレアのものだろう。

そして一息ついた後セレアが説明を始めた。

『そっかーこの世界とは別のところから来たから知らないの

か。この世界にはスキルっていうその人の才能や神や仏様からもらう天恵で魔法みたいなものが使えるっていうシステムがあるの!それでねそのスキルってのにもランクがあって、ほとんどの人が使いこなせる【スキル】とそれを応用した魔法で戦闘でよく使われるレベルのものが【ポイントスキル】そして、常人にはたどり着くことができない達人の領域になったものもしくは神様や仏様から貰った天恵スキルを【ステージスキル】っていうの。基本的にステージスキルを持っていたら国の軍隊の隊長とか総帥とかになれるね!そして次が神話級のスキルランクで、この世界で持ってると思われてる人は現段階でたったの2人。でも表向きに活動しないから誰が持っているのかはわからないんだ。2人持ってるって言う話も都市伝説なんだけどね。そのスキルは、まさに世界を変えるであろう能力と言えるほど強力なの。そのスキルの名前は【クリアスキル】これがこの世界のスキルランク

。まぁいわゆる常識ね』

 ふむふむと首を上下させつつ、話の内容を一通り把握したところで1つの疑問を抱いた。

「この世界の常識はわかったんだけど、そのスキルってやつ俺にもあんのかな?」

『え、あるじゃん。ちょっと目を瞑って心に中でオープンって言ってみ?』

え、逆に見てなかったの?と言わんばかりの反応をされた気もするが途中で察したのだろう。味方を教えてくれたのだから。

とりあえず言われた通りに目を瞑り、一言。

 (オープン)

とつぶやく。

すると暗い視界の中に青い文字が薄らと見え始めた。

少し時間がかかってからその文字がはっきりと映し出された。


スキル一覧

スキル 治癒、浮遊

ポイントスキル 無属性魔法、大回復

ステージスキル セーブ&ロード、十三観音像之加護

クリアスキル なし


とりあえずステージスキルがふたつもあることに驚いたが天恵スキルと思われるため妥当だろう。そして、知りたいスキルがある場合、そのスキルを念じればそのスキルの詳細が出てくるらしいのでステージスキルの2つの詳細を見てみよう。


○セーブ&ロード

・セーブ

相手の助かりたいという気持ちを汲み取り時間軸を保存する。

・ロード

汲み取った時間を実行することでその時間軸に移動することが出来る。前の時間軸の自分はオートモードとして存在し続ける。

同格以下の能力をある程度無効化する。


○十三観音像之加護

・複数のスキル、ポイントスキルを成長する度に自然習得できる。

・所持能力強化


なるほどなるほど。セーブ&ロードはまさにゲームのと同じで加護は成長すれば勝手にスキル手に入るし、持ってるスキルは強化されるよって感じか。

強いな。

その他に沢山あるスキルを一通り見たあとに目を開けた。目を開けると同時に青い文字は消え、さっきの風景に戻った。

「ん?そういえば性別変わってる気がする。入ったのは女性だったはずだけど、今は男になってるぞ?」

『魂の意志で肉体は左右されるんでしょ?多分』

どうも適当な返答だなぁ。

まぁセレアもそこまで知ってるわけないか。

『そんなことより向こうに大きな国が見えるでしょ?そこが私たちが暮らしてる街、魔道大国アルディア。国王がいたずらに住民を支配して、まさに絶対王政って国だよ』

その口調の雰囲気は怒りと悲しみの間でどうしようもない状況に陥っているということは直ぐに理解できた。

「それじゃあ俺らが救う第一国目はあそこだな。セレア手を貸してくれよ!」

国を指さしながらセレアに声をかける。

 『当たり前でしょ!とっとと平和な国に戻すよ!』

その時、国の大きな門の前に強烈な気持ちの悪い光が現れた。

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