第10話
「お、ハゲ山どうした?」
絵里先輩が部室に来た顧問の秀山先生にそう言う。
「秀山です。ええと実は、このゲーム部に新入部員が加わります」
「そうなんですか」
「一体どんな人だろう」
「桐華、とても気になります!」
「何年生ですか?」
私、トト、桐華ちゃん、隆英君はその新入部員がとても気になる。
「3年生です」
隆英君の言葉に秀山先生はそう答える。
「3年生から部活に入るんですね。しかもこの時期に」
「え、えぇっと、まぁ、そうですね。3年生から入るってのは、変わってますね」
秀山先生は苦笑い。
「……こ、こんにちはっ」
その3年生の先輩が部室に入ってきて、先生の後ろに隠れながら恥ずかしそうに、小さな声でそう言った。
この先輩はとてもかわいらしい顔立ちをしていて、そして何よりものすごく身長が小さい。私くらい……いや、
「わ、私より、小さい!?」
「こら蒼島! 失礼だろ!」
絵里先輩が、自分より身長の低い高校生がいたことに感動して涙を流す私を叱る。
「み、緑山翠ですっ! これから、よろしくお願いしますっ!」
翠先輩に続いて私達も軽く自己紹介を済ませた。
そして、最後に秀山先生からこう告げられた。
「翠ちゃんは僕の姉さんの娘、いわゆる姪っ子なんです。姉さんと姉さんの旦那さんは共働きで2人揃って出張に行ってしまったので、そこでしばらく僕が預かることになったんです。小学校から僕の家までは遠いから、歩いてここまで来てもらって、そこから僕の仕事が終わり次第車で帰ることになってるんですよ」
「へー。そうなんですかー」
感動が勝ってテキトーに流す私。
しかし、今気になる言葉が……。
「先生今、小学校って言いました? 言い間違いですよね? 言い間違いきついなー。私の感動がどっかへ行ってしまうところですー」
「おっと、言い忘れてました。実は翠ちゃんは小学生です」
『……ッ!?』
感動は空の遥か彼方へ飛んでいった。