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Ultraman Utopia  作者: утопия
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第1章 第1話


Ultraman Utopia


俺たちは人として生きるか

ウルトラマンとして生きるか

選択しなければならない。



第1話 兆し




地下に続くエレベーターに2人の男が乗り込む

1人は大柄で顔にいくつもの傷がある

もう1人は小柄の少年でメタリックなアーマースーツを着ている

薄光のライトが2人を照らし

エレベーターが機械音声を発する。


「ご利用ありがとうございます

本日、地下 65FはプロジェクトDの試験日により

プルト長官の許可がなければ入室できません

予めご了承ください」


大柄の男がエレベーターに指示を出す


「プロジェクトU

担当補佐のバレンスチルだ

地下50Fの施設に頼む」



エレベーターは動き出した

冷房の冷ややかな風が吹き

バレンスチルは語り出した。


「君の適合能力の高さには長官も

驚いていたよ

候補生 265番

番号は1に近いほど優秀だとデータでランキングにされている

今日65Fにいる1番はまさに才能の塊だ

だが 君は彼をも上回る能力値を持っている

なぜ 試験では本気を出さなかった?」


小さく息を吸い込み少年が口を開いた


「俺は優秀なんかじゃない

試験でも 実力を出し切った」


「それは彼に対する皮肉か?面白いじゃないか

いずれにせよ 今日 君が失敗すれば そんな口も聞けなくなる

心して挑め」


2人を乗せたエレベーターが止まり 再び機械音声が流れる


「地下50Fに到着しました

良い一日をお過ごしください」


2人は外に歩き出す

白い壁が続く長い通路が広がり

その先には黒光りする扉がある


バレンスチルは扉の前で網膜 指紋の認証を行い

同じく 少年も認証を始める


「言っておくが 後戻りはできないぞ、成功すれば晴れて君は

未来への希望になるかもしれん

しかし 失敗すれば その時は..」


バレンスチルは口ごもり言葉を止めてしまった。

少年にも大方の予想はできている

失敗が意味することを


黒光りする扉が開き

中には白衣を着た 研究者たちが

なにやら慌ただしい様子で

行き交っていた。


研究室には

三段の列に並んだパソコンがおよそ50台

眼前に広がる幅30メートル弱はある強化窓

その奥には実験場がみえる。



1人の研究員が息を切らしながら近寄ってきた。


「申し訳ありません!機器に誤作動を確認しました。

5時間前から調整を行なっていますが

もうじき終わるかと...」



バレンスチルは白衣姿の男の胸ぐらを掴み怒声をあげた。


「早急に問題を解決しろ!

さもなければ 貴様の首を私直々に

!」


少年は怒るバレンスチルの腕を掴み

力ずくで押さえ込んだ。

痛みに耐えかね 胸ぐらから手を離しバレンスチルは冷静さを取り戻し始めた。


「すまない... だが我々には時間がないのだ

この瞬間にも...」


「分かっています、あなたも

俺と同じだから」


悲しみの表情を一瞬見せたバレンスチルだったが

すぐに威厳ある顔つきに戻った。

胸ぐらを掴まれた研究員はすっかり怯え 腰を抜かしていた。


その時施設内にアナウンスが流れ

始めた。


「ただいまより 65Fは入室制限となります

また 各施設内にいる全ての関係者

は規定により 現在担当する施設から出る事を禁じます」


アナウンスは3回流れ

先程 腰を抜かしていた研究員は

いつのまにかいなくなっていた。



「65Fの彼が先か お前も準備をして待機だ 分かったな」


肩を優しく叩かれ

少年は身につけていたアーマースーツを脱ぎ

試験場の部屋に入室した。


巨大な機械は 下から見上げると

神秘的な構造をしていて

8の字を2つ 上下左右に重ね

その鈍い輝きは目を奪うほど不思議な物だった。


後ろから年老いた研究員が少年に話しかけてきた。


「君はスターライトゲートを間近に見るのは初めてかね?」


少年は研究員の方に向き直り

その容姿を観察した

齢80はいっているだろうか

肌はたるみ 独特の香りがする


「おや?知らんのかの?

かつてこの星に存在したと言われる巨大な光人の遺品と言われているんじゃ」


「その話は知っています

数千年も昔の神話

しかし 光人は 愚かな我々を見捨て

この星を去ったと」


「いや 見捨てたのはむしろ我々じゃよ」


老人はゆっくりと機械に近付き 手をつけて その感触を感じている。


「光人は我々の守護者としての使命を果たしきれず 阻害され

やがて滅びていった

じゃがな それは我々の最古の傲慢が生んだ結果じゃ」


「それはあなたの解釈にすぎないでしょ? 」


「ただ守られているだけの弱い存在

いつまでも変わろうとせず

争いを続け やがて 守護者そのものを利用しこの星を滅ぼそうとしたのじゃ


そして 我々の前から光人は消えてしまった!」


老人は急に声を張り上げ 少年に向き直った。


「この機械は その光人の力が封印されている 言わば箱のようなものじゃ

そして鍵も手に入れた」


老人はスターライトゲートの4箇所を 東西南北を指差した。


「極地の氷が全て溶け 数百年

かつて氷に覆われていた場所から見つかった4つの鍵

ヴィザンダス.アローガ.

エニグマ.ザニエス.

これらを全て回収するのには苦労したものじゃ

全て揃うのに膨大な年月を要したからのう」


少年は青白い光に見とれていた。


「美しいじゃろう?信じなくてもよいが

あの光は人語を理解しているんじゃよ?」


流石にそれはないと口には出さなかったが少年はちゃんと話しを聞いていた。


「世の中は このゲートをパンドラの箱と呼ぶものもおるが

少年よ 君はどう思う?」



「厄災が起ころうが このまま何もしなければ

我々に未来はありません

あなたも分かっているはずだ

やらなければ 滅びるだけだ」


老人は同情するような顔で少年を見つめた。


「...辛い思いをさせるが

我々の希望は君や 65Fの彼しかいない

わずか16歳の子供に重みを背負わせたくはないんじゃがな...」


少年は胸を張って話し始める

その決意は強固たるものだった。


「生まれてから 青く澄んだ

空を見たい それが俺の夢でした

ですが、そんな事を言っていられる時代ではありません

俺たちは今日 光人の力を手に入れ

時代を変える!」


老人は泣き崩れ 小さな声で何かをささやいていた。

何をささやいていたのかは聞き取れなかったが どことなく

安心しているようにも見えた。


そして先程と同じようにアナウンスが流れる


「ただいまより 50Fは入室制限となります

また 各施設内にいる全ての関係者

は規定により 現在担当する施設から出る事を禁じます」


同じように3回のアナウンスが流れ

少年は精神を研ぎ澄ます



「爺さん 俺行ってくる

いい時間潰しになったよ」




第1話 完



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