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夢の呼ぶ声

 そして、小池の言葉の正しさを、クラスの人間はその日の内に理解することになる。


 数Bの時間。

 学年でもトップクラスの颯一郎でさえ、黒板の前で立ち往生し中途で挫折した、微分の極大値に関する一種の証明問題を、彼は考える間もあらばこそごくあっさりと解いてしまった。

 しかもその解答は、教師に添削する隙も与えない完璧な模範解答であったから尚更だ。


 水際だったそして希有な容姿、明晰な頭脳、且つ滲み出る気品……。

 彼に関してはありとあらゆる噂が囁かれ、そして、噂はまた噂を呼んだ。

 ものの数日とかからない内に彼の存在は、学園中の生徒の知るところとなってしまったらしい。

 女生徒は、連れだってわざわざ彼の顔を見に来る始末で、それはなんと中等部にまで及んでいる。

 男子の方はと言えば、故意に無関心を装う者も少なくなかったが、内心は戦々恐々といったところだろう。

 何故ならルックスは勿論のこと、とりあえず次の期末考査で、その実力の程を見せつけられるであろうことが火を見るより明らかだからだ。


 そんな学園生活を送っている中。

 この頃では毎日のように私は、例の奇妙な夢を見続けていた。

 呼び声は益々大きくなっていく。

 そして、聴けば聴くほどにその声は、あの転校生の声そのものだ。


 私はいつしかあの丘の上まで来ていた。

 そして、神殿を目の前にして、私の心は妙にざわめくのだ。

 神殿の奥から『声』は聴こえてくるようだった。


 誰かが私を呼んでいる──────

 

 私は次第にそう感じ始めていた。

 だとすれば。

  『アルティシア』とはつまり、やはり紛れもなく私自身のことなのだろうか。

 あの日、颯一郎が図らずも呟いたように……



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