表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/14

不思議な転校生

加川(かがわ)ルカ君、だ。彼は先月まで北欧にいたということだが、非常に優秀な成績で、我が校我がA室に編入してきた。皆も彼に負けないよう頑張ること」


 朝のホームルームで担任の小池は、その季節外れの転校生を、そう紹介した。

 教室の空気は少なからずざわめいている。

 理由は明快だ。

 何故なら、彼の顔立ちは極めて端正で整っている。その上、とても品がいい。


 何より瞳の色が違う。深いエメラルドグリーン、いやむしろパープルに近いようなそんな……神秘的な色を呈していた。

 そして髪の色。

 何故だろう前髪だけが透けるような銀白色なのだ。

 メッシュというには、あまりにもその色は瞳同様、神秘的すぎる。

 更にその肌! 

 それはまるで陽の光に晒したことなどないかのように、限りなく乳白色に透き通っている。

 しかし、不思議と病弱な印象などを与えることもなく、彼の持つ雰囲気とよくマッチしていた。


 流行(はやり)の顔というのではなく、異国風のエキゾチックさを湛え、そして、どことなく陰がある。

 また、同じ紺色のブレザーを着ているのに彼は、至極大人びていて、同じ高校生のようには思えない。

 これでは、女生徒達が色めき立つのも無理はない。


 入り口付近に佇んでいたその彼を、教師が教壇の上から手招いた。

 ふらりと動いた身のこなしは風のようで、その間中も教室の全生徒の視線は彼に注がれている。

 ことり、と音がして彼が教壇の中央に立つと、それまでざわめいていた教室は、みるまにシンと静まりかえった。


 窓から差し込んでくる朝の光を反射して、彼の柔らかな前髪は、きらきらとプラチナのように透けて一層その輝きを増している。

 まるで一枚の絵を前にしているかのような錯覚を、見る者全てに起こさせるほど、彼の存在そのものが美であった。

 そしてそれにもまして、この存在感はどうだろう。

 それはまさに選ばれた者だけが有する、王者の風格だ。

 皆を無言の内に圧倒していた彼が、改めて前を見据え、そして柔らかに微笑むと彼は、初めてその口を開いた。


「加川、ルカです。ご覧の通り、生粋の日本人ではありません。多少皆さんと違う点もあるかと思いますがどうぞ、よろしく」


 淀みのない、予想に難くなかった理性的な声。

 誰からともなく小さな拍手が湧き起こる中、私一人だけが、ただ愕然と前をみつめていた。


 まさか……そんな!?

 我が耳を疑っている。

 疑っていた。


 あの声、なのだ。

 あの声だったのだ!

 彼の声音は、夢の中のあの呼び声と全く同じ色をしている。

 そんなことってあるだろうか……!?


 戸惑いに呆然となりながら私は、その風変わりな転校生をいつまでも見つめていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ