遥かなる声
時はごく自然に流れていった。
颯一郎と私は、いつしか将来を誓い合う仲になっていた。
私は以前にもまして緑の木々を、植物達を愛し、その声を聴いていた。
地球の大気は私を優しく包む。
植物達は、私がこの地に留まったことを喜んでくれているようだった。
私は地球に、そして颯一郎に愛されながら、幸せだったのである。
しかし、時折訪れる植物園のラベンダーの香りに包まれると、私はきまって『彼』を想い出すのだ。
そんな日の夜は、私は一人そっと東の空を見上げる。
彼の言った超常能力は、あれ以来、幸か不幸か目覚めなかった。
ただ僅かに勘が鋭くなり、動植物達の言葉が更に理解るようになった気がするだけだ。
私にその力を使う意志がないせいかもしれない。
しかし私は、東の空を見上げる時だけ、第三の目を開くのである。
見える筈のない幾万光年彼方にあるフレイアの幻が、目の前に浮かんでくる。
それは紫色の輝きを放ち、私の額はフレイアの大気の優しい光を感じてやまない。
そして、聴くのだ。
アルティシア……愛しい、アルティシア……
と、私を呼ぶ遥かなる声を──────
了
昔見た宇宙船を意志の力で操りながら、空を飛ぶ夢……それが本作の生まれたきっかけです。
柊美の能力設定、フレイアの星などのアイデアは、日渡早紀氏、竹宮恵子氏の漫画「僕の地球を守って」、「地球へ……」及び映画「時をかける少女」などに影響を受けました。
香月初のファンタジー作品で、色々とつつけばアラだらけのお粗末な作品で穴があったら入りたいです……!
ここまでおつきあい頂いた方、どうも有難うございました。
尚、作中の第十二話「フレイアの星」では、汐の音さまの「自由絵一覧」より15番「祈り」のイラストを使わせて頂いております。
たまたまではありますが、お話にぴったりフィットしていると思うのですが如何でしょうか?
汐の音さま、素敵なイラストをご提供頂き、ありがとうございました。
それから、目次ページ下部にあるバナーは、汐の音さまの「自由絵一覧」にリンクしています。
クリックすると全イラストを見ることができます。
又、イラストに即した皆さんの小説作品にも飛べますので、是非ご覧くださいませ。
後書き改稿 2022年3月24日