決死のテレポート
~うみ……み…………
一筋の光。
「……うみ。柊美! しっかりしろっ」
ゆっくりと目を開くと、颯一郎の顔が間近にあった。
「気がついたか……?」
颯一郎が、ほっとしたような表情をする。
「颯一郎……大丈夫、よ」
そう呟いたもののしかし、身を起こした途端、目眩がし、慌てて颯一郎が両腕で私の体を抱き寄せた。
「おい、大丈夫か?!」
「平気……ちょっとだけ待って、て」
颯一郎にもたれかかったまま、再び目を閉じた。
想像以上に体が疲労している。
その原因は容易に想像できた。
私はテレポートしたのだ。
颯一郎と共に。
『船』へとじわじわと上昇しながらも、なかなかその距離が縮まらないことで私は本能的に『瞬間移動』を思いついたのだった。
自信はなかった。
やったことなどあるわけがない。
空中遊泳しているだけでも心許ないのに、横に颯一郎までいる状況の中で、果たしてうまく飛べるのか?!
不安と緊張の中で、しかし私は「第三の目」に、渾身の力を振り絞り、念を集中させた。
その瞬間、私は気を失ってしまったらしい。
しかし、決死のテレポートは成功したのだろう。
私と颯一郎は、見たこともない造りをした広大な部屋の中にいた。
「ありがと、颯一郎。ほんとにもう大丈夫」
まだ多少こめかみの辺りが疼いてはいるが、いつまでもこうしているわけにはいかない。
改めて颯一郎の顔を見つめた私に、颯一郎は初めて不安げな目をして呟いた。
「俺達……一体どうしちまったんだ? 柊美みろ よ、あれ」
「あれ、は……!!」
颯一郎が指さした先にある、巨大なスクリーンのような窓の外に見えたのは。
一つの惑星。
無数の星々の中で、それは一際大きく、青々と輝いている。
「地球……だろうな」
「まさか、そんな」
あとは言葉にならない。
二人、無言で困惑の顔を見合わせる。
その時、だった。