声
ここは何処だろう。
辺りは薄い透明な紫色のもやに包まれている。
太陽が、遠い。
木々の植物の、囁きが聴こえる。
大気の声が聴こえる。
優しい大気だ。
見たことのない植物ばかりなのにとても、とても、懐かしい。
全身で限りない無形の愛情を感じている。
そして、どこからともなく響いてくる声を聴くのだ。
─────アルティシア……
と、呼ぶ声を。
ブラインドから射し込んでくる朝の光で、目が醒めた。
「今日もまたあの、夢……」
ベッドから身を起こしながら、思わず知らず、呟きが漏れる。
そして、無意識に片手でそっと我が身を抱き締めていた。
まるで自分の存在を確かめるかのように。
それは、いつの頃からだったろう。
明け方になると奇妙な、同じ夢を見る。
最初は、透明な紫色のもやにぼおっと包まれているいるだけだったような気がする。
それが最近、段々と辺りの様子が鮮明になってきている。
私は、小高い丘の麓にいた。
そこから何か、そう、神殿のような建物が見えた。 日一日と、私を包む大気との波長が合ってゆくのがわかる。
植物達の優しい声。
私の『額』が反応するのだ。
大気の、そして植物達の放つ『光』を私は、額で感じる。
それが彼らの『声』なのだ。
しかし、それとも異なるあの、呼び声。
あれは何。
アルティシア、というのは一体!?
けれど、何故だろう懐かしいその響き……。
そんな不思議な夢を見る。
更に不思議なことには、目覚めた時、私の額はびりびりと何かに反応したように、「熱」を持っているのだった。