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第四章 第三節

 月曜日になり早速メアリーに尋ねると、やはり正解だった。シェイラはライアン邸に引き取られて以来、一度も外に出ていないのである。これはローガンにとっては大発見だった。豪邸とはいえ何か月も屋内に閉じ込められていては、気が滅入るのも当然ではないか。外に連れ出してあげれば、きっと気持ちも明るくなるはずだ、と彼は考えた。

 そこで、メアリーの確認が取れるや否や、ローガンは考えてきた計画を実行に移した。シェイラの部屋に入って挨拶をすますと、立ったまま、いきなりこう切り出した。

「今日は、外に出てみませんか?」

 シェイラはそれを聞いて、一気に疲れたような顔をした。

「外に……出るのですか」

 溜息と共に、つぶやいた。少女のあからさまな拒絶の態度に、名案を思い付いたと興奮気味だったローガンは、一撃で挫けそうになった。

「あの、ちょっと待ってください、ナイトリー先生」

 ローガンが言葉を失っていると、メアリーが割って入ってきた。

「シェイラ様は外に出るのがお嫌なのです。確かにさっき、シェイラ様はほとんど部屋から出ないし、このお屋敷に来られてから一度も外に出ていないと申し上げましたが、わたしは何度も散歩にお誘いしたんです。けれどシェイラ様は外に出るのは嫌だと仰るので、それで一度も外に出ていないのです」

 ローガンがシェイラを見ると、彼女は下を向いていた。

「あなたはどうして外に出るのが嫌なのですか?」

「……とても、そういう気分になれないのです」

 シェイラは俯いて小さくなりながら答えた。

 ローガンは少し迷ったが、それでもこの計画を推し進めたいという気持ちが勝った。彼にとっては何か月も部屋に閉じ籠るというのはそれだけで病気になるような不健康なことであり、外の空気を吸えば必ず今より元気になると、固く信じ込んでいたのである。

「外と言っても、少しお庭に出るだけですよ。たくさん歩くわけじゃない。お屋敷の庭園がとても素晴らしいので、太陽の下に出て木や花を眺めませんか? 外はもう晩秋ですよ。木の葉がすっかり深く染まって、ちょうど良い感じに降り積って、落ち葉を踏んで歩くと気持ちが落ち着きます」

 ローガンは出来る限り、彼女が庭に出たくなるような話をして説得しようとした。

「どうしても出ないといけませんか? 今日の勉強は外でないと出来ないのですか?」

 シェイラが嘆願するように言った。

 ローガンは、どうして外に出るのが嫌なのですか、と同じ質問をしてしまいそうになった。ここまで拒否されるとは予想していなかった。そして、庭に出て気分転換をしてから勉強を始めましょう、と誘い文句を言おうとしたが、瞬間に別のある考えが浮かび、こう言った。

「季節による植物の変化を実際に見るのは勉強のうちですよ。せっかく広い庭園があるのですから、植物学の学習に利用しない手はないと思いませんか」

 ローガンは庭で勉強をするつもりなどなかったのだが、あくまで家庭教師と勉強をすることしか頭にない真面目なシェイラの性格を利用して、外に出ることを承諾させてしまえばいい、という思い付きだった。もともとあった策略ではなく、シェイラの言葉からの連想である。咄嗟のことだったので、ローガンはほとんど何も考えずに実行していた。しかし実行した瞬間に、彼はほとんど何も考えない内に誘惑に負けてしまったと自覚し、自分のしたことに驚いたのだった。


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