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つきみのアンハッピーデイズ  作者: 有機宣言
3/3

ひばちチューズ3

第三話!ようやく話が進んできました。そろそろ物語が進展しそうなので読んでみてください!!

 簡潔に言うと、俺たちは教室を出た。

 最初のほうの授業だし、つまらなかったので特に支障はないけど今の段階で途中退室するのは先が思いやられる。

 誰もいない巨大な螺旋階段を男女二人が下りているとなかなか変な気分である。誰もいない、人目のない、そして目の前には美しい美少女。だが、その美少女は全くそんな気持ちはないらしい。

 「なぜ見える。お前にはなぜこの炎が見えるんだ。」

燃えていない左腕をすっと伸ばし人差し指で俺の鼻先を差し、綺麗な黒い瞳がこちらを向いている。美少女はさらに続ける。

 「お前はこの腕を見て誰にも言わないとは思えない。見たところ友達が多そうではないけれど、不安だ。私が順調に歩んできた人生、誰にも邪魔されずに進んできた人生。こんなところで壊されると困るのよ。あなた、死になさい。」

キリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリッッ!!!!!!!!!!!

彼女は速やかにカッターナイフを取り出すと俺の左胸に向かって真っす突き刺した。

ドスッドスッドスッドスッドスッ

攻撃は一発でやみはしなかった。

ズロロロロロロロロロロ!!!!ぶちっ、ブチッと大量の血が飛び、そして何かが切れたような音が広がる。

 「ハア、ハア、ハア、…あなたには何もできないわ。私は悪いと思わない。恨むならあなたの運命をうらみなさい。」

 かろうじで機能した俺の耳に入ってきたのはそんなセリフだった。カツカツカツカツと彼女の足音が響く。その足音はどこか悲しそうであった。




 

 彼女が正門から出ようとする姿が見える。俺は音速で走る。比喩なんかじゃない。周りの景色なんかどうでもいい、見えるのは彼女だけだ。

 スッと彼女の前に出て大の字のようなポーズで直立し、彼女の黒い、闇のような瞳をまっすぐ見つめた。

 「な、なんで。あ、あなた、血だらけだったじゃない。刺したわ、突き刺した。心臓に。何回も。それに、傷も治ってる。なんで目の前にいるのよ!…………」

 彼女は当然と言えば当然な、平凡と言えば平凡な反応を示した。先ほどまで一切変えることのなかった表情が変わった。額からは汗がにじみ出て、目は見開いている。彼女からしてみれば、自分が三分ほど前にぶっ殺したはずの男が目の前で両手を広げて立っているのだ。無理もない。

 だがしかし、そんなことはどうでもいい。困っている女の子が目の前にいるのだ。

 「俺はお前を救うことができる。」


 

 俺たちはある人物。彼女を助けてくれる、俺を助けてくれた人物に合うために最寄り駅からY線に乗った。

 微妙な空気が流れる。

 「お前は何曜日の呪いなのかな。」

唐突に俺は質問をぶつけた。

 「なによそれ。わざと私が答えられない質問をぶつけて優越感に浸るのはやめてもらえない?」

 「そんなつもりはねえよ。ったく、お前外見は綺麗だが心は汚いな。」

 「…」

彼女は黙ってしまった。

 「おいおい、そんなに気にすることかよ。冗談だっての。」

 「別に、気にしてないわ。飴をなめようとしたのよ。」

先ほどからクールな口ぶりだった口に見たこともないような色のチュッパチャプスを入れる。俺は恐る恐る聞いた。

 「お、お前、今口に入れた飴は何味なんだ?」

 「ロールキャベツ。」

彼女はさらっとオブラートに包むことなく答えた。あめの味はキャベツに包まれているけれど。想像もしたくなかった。二つの味を混ぜるのが許されるのはコーヒーがいいとこだろう。肉とキャベツ、普通に食べる分にはいいけれど、飴にはしたら駄目だろう。彼女のほうをちらりと見るとおいしそうに飴をなめている。

 「ところで私を助けてくれるってのはどんなひとなの?」

 「俺を助けてくれた人さ。30歳のわりに綺麗な人だよ。。。。。30歳ってのは聞かなかったことにしてくれ。」

 「30歳の独身で助ける代わりに綺麗な人と呼ばなければならないのね。」

 「おいおい、おまえほんとに言わないだろうな。」

 少しの沈黙の後彼女が口を開いた。

 「あそこに手を振っている人がいるわ。」

 確かに、俺の目からも確認できる。しかし、改札を出たところで大きく手を振るのはやめてほしい。

 そして、手を振っていた30歳の綺麗な人はまるで10代後半かのように━━見えなくはないのがむかつくが。

こう言った。

 「ひっさしぶりーん!!!!!つきみん!!!!♡」

 隣にいる美少女を見ると人間ができる可能な限り不可能な表情をしていた。






 

 


読んでくださりありがとうございました。次回もぜひお願いいたします。

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