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214話 立て直し

「やはり俺が出るべきだったな」

 連弩の居住ブロック内にある食堂。

 そこで気安く笑いながら言ったのは戦闘部隊の総指揮を執る大口翔少佐である。

 彼は今回の作戦になるまで源明の下にいた事は無かったが、同じアベルの指揮下にいた事もあって付き合いは長い。


「しかも、あのアレクとかってパイロットとやりあったんでしょう? 下手すれば戦死してたじゃないてすか」


 咎める様に言うのは連弩の副艇長であるチェ・ソンハ大尉である。

 彼も古くから源明の下で働いていた。それ故に源明の戦機パイロットとしての腕があまり高くない事を知っている。


「私も敵と遭遇するとは思っていなかったんだよ。しかもアレクが出てくるなんて予想外さ」


 おかげで自機を失う羽目になったと源明は笑う。

 アレクのパイロットとしての実力は一番自分が理解している。無事生還出来ただけ良かったというものだ。


「で? 侵攻ルートはどうする?」

 大口が尋ねる。

 複雑な地形故に何処で敵と接触するか分からない。

 連合側に侵攻するにしても、先の戦闘の様に奇襲を受ける可能性がある。


「月牙……、第2中隊が良い具合に進んでいるみたいだから、そちらに任せるよ」


 第5独立部隊は3つの中隊で構成されている。

 連弩を中心とした第1中隊。これの中隊長は小山源明大佐であり、第5独立部隊の総司令と兼任している。

 城前はあくまで連弩の艇長であった。


 そして月牙を中心としたユーガ・スルガ少佐指揮する第2中隊。

 月牙は連弩級の陸戦艇であり、攻撃能力も高い。

 戦闘部隊はクック・クック大尉が率いている。


 第3中隊はピエット少佐が指揮している。

 これには連弩級よりも搭載量と機動性を重視した陸戦艇である木牛級“香車”が配属されていた。

 その主任務は第1中隊と第2中隊に物資や戦力の移送や補給、ヒノクニ本土との連絡などである。

 この部隊は予備戦力として温存している事もあり、前線に出る事はほとんど無い。

 したがって第5独立部隊は実質2個中隊が実働部隊である。


「我々は我々でこの周囲をもう一度調査しないといけないね」


 再び奇襲を受けるのは避けたい。

 それと同時に、今後の事を考えればなるべく戦闘は避けたいところであるとも思っていた。














/✽/















「貴方にしては珍しいわね」

 同じ頃である。

 半壊したザンライを見上げてサマンサが言う。

 その機体はアレクの物であった。

 彼がここまでの損害を受けるというのはいつ以来だろう。


「しかも、やったのは源明の奴だ」

「嘘でしょ?」


 アレクが苦々しい表情で言い、それを聞いたサマンサは彼が冗談を言っているのではと思わず疑ってしまう。


「本当ですよ。生け捕りにしようとしたところを自爆されて……」


 その場に居合わせた名取が言う。

 一緒に出撃したパイロットが言うのであれば間違いない。

 しかし、源明のパイロットとしての腕を知っているサマンサはその事実を飲み込むのに少し時間がかかってしまう。


「……よくは知りませんが、連弩の艇長は元戦機乗りなんでしょう?」


 名取はパイロットとしての小山源明を全く知らない。

 なので、彼からすればその腕はまだ衰えていない程度にしか思っていなかったのだ。


「……それはそうだが。いや……、だからやられたんだろうな」


 源明は躊躇いなく機体を捨てた。

 そもそも彼はパイロットではなく陸戦艇の艇長であり、戦機パイロットとして戦う事に拘りが無かったからだろう。

 というよりも、パイロットだった頃から戦機乗りとして勝つ事にも意義を見い出していなかったのだ。


「結局、俺は軍人になり切れていなかったのだろうな……」

 パイロットとしての勝ち方に自分はこだわりすぎている。それは軍人のする事では無い。

 アレクはそう自嘲しながら呟く。


「で? 今後はどうするつもり?」

 サマンサが尋ねた。

 現在、陸戦艇を率いる2個中隊から侵攻されている。


「一度引いて、奴らが出てきたところをモグラ叩きみたいに迎撃するしかないな」


 これまでの戦闘による消耗と再編成により現在88レンジャーは3つの中隊で構成されていた。

 部隊単位でいうなら源明の第5独立部隊と互角だが、実際の数だけなら88レンジャーの方が少ない。

 これは88レンジャーが特殊遊撃隊という事もあり、アラシア軍の中でもベテランや腕利きのみの兵士で構成された結果である。

 正面から戦えば数に押されてしまうのは自明の理だ。


「副官としてはどう思う?」

 アレクは88レンジャーの副官であるサマンサ少佐に意見を求める。

「私も同じ考えね。陸戦艇に搭載されている戦力を考えれば正面からは戦えないわ」


 サマンサは88レンジャーの部隊状況を思い出しながら答える。

 88レンジャーの部隊内訳だが、まずはジョニー大尉の率いる881中隊。

 これは3個戦機小隊と、ニコライ少尉の指揮する歩兵小隊1個から編成された混合中隊である。


 それに名取陽平大尉が指揮する882中隊。

 これは戦機のみで編成された3個小隊で構成されている。


 そしてダッシュ大尉が指揮する883中隊。

 これは戦闘ヘリの部隊で構成されている。

 しかし、マトモに動ける機体は今のところ6機のみであり、中隊というにはあまりにも心許ない。

 最近ではヘリよりも偵察ドローンを飛ばすことの方が多い。


「3個中隊というにはあまりにも戦力が少なすぎるか……。ランドルフの奴に増援を出すよう頼んでみるか」


 敵部隊は陸戦艇が3隻存在する。

 現戦力では話にならない。

 癪に触るがランドルフに増援を送ってもらわなければ、この地域を守るという任務は不可能だろう。

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