124話 潜入工作
真歴1087年11月13日14時15分。
その日は曇り空で冷たい風が吹いていた。
アラシア・ヒノクニ同盟軍の制圧目標であるアーニア市には未だに市民が生活を営んでいたが、すぐ側で戦闘が繰り広げられている為に雰囲気は暗い。
赤レンガ製の洒落た店が並ぶ通りを歩く人々の顔は不安気である。
一方でそんな市民を邪魔だとでも言わんばかりに堂々と歩く姿の男達がいた。
それは突撃銃を持った兵士達である。
「何だ貴様! 誰のおかげで無事に生きていられると思っているんだ!」
ある兵士がみすぼらしいコート姿の老人に叫ぶ。
力がある者の中には、それを弱い人間に振るう事で優越感を得る者がいる。
この兵士はその典型的なタイプなのだろう。
「嫌なものを見たわね……」
怯える老人を蹴り飛ばす兵士を見ながら1人の女性が呟く。
シルバーブロンドでセミロングの髪を持ち黒縁のメガネをかけている。
服装は厚手でベージュ色のカーディガンにブラウンのロングスカートという地味なものであった。
「はぁ……、早く戻らないと」
兵士を無視して歩き出す。
オリガ・ミルスキー少佐である。
つい先日にアーニア市内へ破壊工作の為に潜入。
現在はレジスタンスと接触して、工作の準備を行っているのだ。
「よう、何処へ行くんだ?」
足早に立ち去ろうとしたところへ下卑た声がかけられる。
「はぁ……」
ため息ともつかない返事をして振り返ると、声と同じ様に下卑た表情の兵士が2人いた。
手には突撃銃を持っており、逆らえば理由をつけて射殺するとでも言いたげである。
「ご苦労さま。私は家に帰るところです。お気になさらずに」
そう言って再び歩き出そうとする。
しかし、すぐに肩を掴まれてしまう。
「まぁ、そう言いなさんな。俺ら非番で暇を持て余しているんだよ」
「そうそう。ちょっと遊び相手になってくれないか?」
あまりに予想通りの反応にため息が出る。
自分が潜入しているという身分で無ければ速攻で射殺するところだと思う。
「いえ、私は急いでいますので」
オリガは自身のキャラでは無い大人しそうな声で答える。
それが余計に兵士達をそそらせたのだろう。兵士の肩を掴む力が強くなる。
「分かった分かった。金か? それとも食糧か? 少し分けてやるから」
兵士の1人がオリガの前に立ちはだかる。
これは逃げられそうにない。
「はぁ……。なら砂糖を少し貰えますか?」
仕方無いとオリガは諦めた様に言う。
兵士2人はお互いに顔を見合わせて下卑た笑いを浮かべる。弱者を虐げる者特有の笑いであった。
「よし。ここは人目がつくな。俺が借りている部屋がある。そこで楽しもうや」
オリガはコクリと頷いた。
人目につかない場所ならぱ色々と都合が良いというものだ。
そんなオリガの考えを知らずに、兵士の1人が馴れ馴れしくオリガの腰に手を回して歩き始める。
「さぁ、ここなら軍曹にもバレないぜ」
兵士達が案内した場所は町外れにあるアパートの一室であった。
部屋の中はゴミが散乱しており、壁紙も剥がれかけている。
部屋の奥にはベッドが置いてあり、その白いシーツには皺と何かをこぼした後の様な染みが不潔さを醸し出していた。
「さぁさぁ、さっさと始めようや」
下卑た笑いを浮かべる兵士。
この部屋と同じ様な不潔さを感じてオリガはため息をつく。
「待って下さい」
オリガは床に買い物かごを降ろす。
そして上着から脱ぎ始めた。
「おいおい、あまり焦らすなよ」
床の上に服が脱ぎ捨てられ、オリガのしなやかな肢体が露わになる。
まるでストリップショーの様であり、兵士達の興奮も高まっていく。
「焦らないで下さい」
今やオリガの上半身は下着のみであり、白い絹の様な肌と女性らしい柔らかなボディラインがよく分かる。
やがてオリガの手がスカートの縁にかかった。
スカートは重力に任せてそのまま落ちると彼女の足元に広がる。
兵士達の舐めるような視線が白い大腿に向かう。
しかし、そこには本来無いはずの異物が巻き付いていた。
「なっ……! お前……!」
それが何であるかに気付くと同時に兵士2人が声をあげる。
彼女の左右の大腿にはホルスターが巻き付いていたのだ。
そこには、薄型のサバイバルナイフが収められていた。
民間人がキャンプで使用するような物では無く、明らかに軍で採用されているような代物である。
「……!」
兵士が拳銃を取り出す前に、オリガは素早い動作で左右の手にサバイバルナイフを握る。
そこまでは兵士達も視認出来た。
しかし、次の瞬間にはナイフが目にも留まらぬ速さで放り投げられていた。
「ぐあっ……!」
「がっ……!」
右手から放られたナイフは兵士の眉間に深々と刺さる。当然、即死だ。
左手から放られたナイフはもう一方の兵士の喉元にその刃をめり込ませていた。
「……っ! ……っ!」
声も出ずナイフを抜こうとする。 しかし、それより早くオリガが兵士の手を払い除けて喉元に刺さっているナイフの柄を握っていた。
「……」
オリガは今や息も絶え絶えの兵士に顔を近づけると、何かを思い付いた様に尋ねる。
「死ぬ前に見るのが女性の下着姿っていうのは、男性にとって嬉しいのかしら?」
オリガはそんな質問をしながらナイフを更に奥へ押し込む。
兵士は彼女の腕を力無く叩いて殺意に対する抵抗を試みていた。
「少なくとも銃を向ける敵兵よりかはマシかもしれないけど……、貴方はどう思う?」
返答は無い。
兵士は既にオリガが何を言っているのかすら分かっていない。
呼吸が出来ないという苦しさと、喉元に押し込まれるナイフによって喉を裂かれる痛み、間違いなく訪れる死の恐怖で頭の中が焼き切れる寸前であった。
「カハッ……!」
それは声では無く音であった。
兵士の腕はダラリと垂れ下がる。ようやく息絶えたのだ。
「あら」
そのまま床に倒れた兵士を見てオリガは何の気も無しに声をあげる。
「服を脱いだのは正解だったわね」
見れば自分の胸元とそれを隠す下着が返り血で赤い染みを作っていた。
もし、血痕で服が汚れていれば間違いなく町を巡回する兵士に怪しまれただろう。
「それにしても女性を連れ込むのなら、もう少し綺麗な部屋にして欲しいものね」
オリガは再び部屋の様子を見回しながら呟く。
この後始末をしなければならない。
/✽/
「戻ったわ」
オリガが潜伏しているマンションに戻ったのはそれから約20分後である。
そのマンション大通りに面しており、1階には営業停止となった花屋があった。
「遅かったですね」
オリガよりも身長が高いが、どんぐり眼をした幼い赤毛の女性が迎えた。
オリガ直属の部下であるリン・リーファ曹長だ。
一時期はアレクの下にいたこともある。
「途中でスケベな兵士に絡まれたのよ」
オリガはリビング中央のテーブルに買い物かごを降ろしながらリーファに答える。
「これ、お土産よ。何かに使えるかもしれないわ」
それは先程の兵士から手に入れた拳銃と身分証明書であった。
「……大丈夫なんですか?」
それらのお土産から、持ち主は既に始末された事をリーファは察する。
もし、それが明るみになれば市内の警戒は厳しくなるだろう。
「大丈夫よ。ここ数日、街の様子を見ていたけど警察は機能していないし、軍も外の部隊と戦闘するので手一杯ね。兵士の1人や2人いなくなったところで詳しく調査する余裕は無いわ」
それでも不安は残る。
リーファはオリガの言う事に納得がいかないという表情であった。
しかし、それもすぐに消える。
マンションの扉が開き、再び誰かが入ってきたからだ。
「町外れのアパートで火事があったみたいだ」
それは頭頂部の髪がすっかり無くなっている老人である。
彼は部屋に入ってくるなり火事が起きた事を口にした。
「私がやったものね」
オリガが悪びれもせずに言う。
先程、兵士を殺害した後に証拠隠滅と捜査の撹乱の為に行った事だとリーファと老人に話す。
「あまり派手に動かないでもらいたい」
老人が言う。
彼の名前はデローム。
レジスタンスに所属する者の1人であった。
この部屋の借り主であり、オリガとリーファを匿っている。
「されるがままでいろと?」
「そう言う訳では無いが……」
オリガの批判的な視線にデロームは思わず目を逸らす。
「それよりも、ようやく侵入ルートが確保出来たぞ」
デロームは話題を変える。
それはレジスタンスとオリガの率いる特務部隊の破壊目標についての事であった。
「アーニア市第1発電所……」
それはアーニア市周囲の電力を賄う発電所である。
ここの発電施設の一部を破壊する事で、市内の軍事施設の運用に致命的なダメージを与えるのが目的なのだ。
「もっとも、成功した場合は市街地の使用電力が限定されてしまうから市民にも被害が及んでしまうがね」
デロームは眉間に皺を寄せる。
市民の生活を困窮させる作戦は望むところでは無いのだが、イェグラード軍を街から追い出す為なら仕方無いと思う。
「破壊といっても、復旧するのに支障が無い程度よ」
「それは君達がイェグラード軍を早く駆逐出来ればだろう?」
「その為の作戦なの」
「分かっているよ。だから協力しているのだ」
協力しているのはこちらだとオリガは内心で思う。
アラシア・ヒノクニ連合が旧モスク連邦やレジスタンスと共にイェグラードを攻撃しているのは、ルーラシア帝国の最重要地域であるズーマン地域攻略戦を有利に進める為なのだ。
イェグラードを攻撃する事で本命であるルーラシア帝国の関心をこちらに引くことが目的である。
その隙をついてズーマン地域攻略の準備と攻撃を行うのが本来の目的なのだ。
つまりは陽動である。
そして、ズーマン地域侵攻作戦が開始された今となってはこの戦いに大した意味は無いのだ。
「だから私がこんな事をしなければならない」
オリガ・ミルスキーは少佐であり、本来は部隊全体の指揮を執る立場なのだ。
しかし、ズーマン地域侵攻作戦が始まった事で人手が足りなくなり、こんな最前線で自ら潜入任務をしなければならなくなったのである。
/✽/
11月16日9時3分。
朝である。
その日は雨が降っており、空気は普段よりも冷え切っていた。
雪が降らないのが不思議なくらいである。
そんな中を1台のトラックが発電所のゲートを通過した。
「良いな。君達は清掃業者として発電所に入るのだ」
トラックを運転するオリガに助手席のデロームが言う。
2人ともグレーのジャンプスーツを着ており、その胸には清掃業者のロゴが施されていた。
「分かっているわよ」
今回の作戦。
オリガ達は清掃業者を装って発電所内に潜入。
発電機を制御する装置を破壊してしまおうというのが目的なのだ。
「それにしてもあっさり通れたわね」
発電所は中心街から少し離れており、誰が出入りしたかを確認する為のセキュリティゲートがあるのだ。
しかし、デローム達の乗るトラックはあっさりとそれを通過する。
「守衛の何人かはレジスタンスだ。施設内にも同志がいる。……中には買収した者もいるが」
買収という言葉にオリガは反応する。
金で動くような者であれば裏切る可能性も高い。
「いや、買収したと言っても勤務シフトを変更した程度だよ。この作戦に関わる者はいないさ」
オリガの反応を見てデロームが言う。
それでも絶対では無いとオリガはため息をつく。
とあるヒノクニの士官が此処のレジスタンスなど民間人に毛が生えたようなものと揶揄したらしいが、その通りかもしれない。
「さぁ、着いたぞ」
そんなオリガをよそにデロームはトラックを止めた。
駐車場である。
しかし、そこにはデローム達の乗るトラック以外は何も停まっていなかった。
「受付を済ませてくる」
デロームはそう言うと発電所施設前の小さな建物へ向かった。
どうやら来訪者用の窓口らしい。
「さぁ、準備して」
施設前の窓口で受付をしている間に、トラックの荷台からリーファをはじめとしたオリガの部下達やレジスタンスの面々が降りる。
そして清掃道具や機材の用意をはじめていた。
こうして見る分には至って普通の清掃業者である。
「よし、行くぞ。……施設内ではこれを着けるようにしてくれ」
そうこうしている間に受付を済ませたデロームが戻ってきた。
準備をしている面々に来客用のプレートバッジを渡す。
「あぁ……、了解ね」
オリガは自分の部下に視線を送る。
部下達はバッジを付けながら頷く。
「よし、じゃあそれぞれの担当区域を確認するぞ」
デロームは本物の清掃業者らしく言うと、それぞれが担当する清掃区画の指示を行う。
オリガ達はそれに従って清掃道具を持って各々の区画に向かった。
「私達の区画はA棟ですね」
オリガとペアになったのはリン・リーファである。
作業の邪魔になるので長い髪の毛は後頭部で束ね、その上に帽子を被っていた。
「私がゴミを集めるから貴女は手洗い場をお願いね」
オリガが答える。
「えー、この寒いのに水仕事ですか?」
それに対してリーファが口を尖らせて言う。
こうして会話をしている限りは普通の清掃業者だろう。
「午後は私が変わるわよ」
「ずるい」
何の変哲も無い会話であるが、これらは全て作戦内容に関する符号てあった。
誰も聞いていなければ、こんな面倒な方法で会話をする必要など無い。
しかし、先程渡された来客を示すバッジが問題であった。
「盗聴器ね」
オリガ達は渡されたバッジに盗聴器が仕込まれている事がすぐに分かったのだ。
今回、潜入したオリガ達の部隊はそういった事をすぐに察知出来るような訓練を受けている。
おそらく、この盗聴器付きのバッジが拾った会話は軍の人間が何処かで聞いているのだろう。
発電所という重要な施設の警備を考えれば当然の事であり、モスク連邦時代でもよく行われた監視方法なのだ。
「おい、そこは機械室だぞ」
扉の前で発電所のスタッフに声をかけられる。
割とドスの効いた声だったので、一瞬バレたかと思い身体が跳ね上がりそうになった。
しかし、このスタッフはバケツやらモップを持ってウロウロしているオリガ達が道に迷っていると思って声をかけただけのようだ。
「私達はA棟の清掃を頼まれたのですが……」
リーファが声をかけたスタッフに清掃箇所のチェック表を見せる。
「機械室もあるのか?」
スタッフは疑うような顔付きになる。
「ほら」
リーファが見せたチェック表には確かに機械室の清掃を行う旨が書かれている。
それを見たスタッフは苦々しい顔になった。
「気を付けてくれよ。前の清掃業者が何を思ったか高圧洗浄機を機械室で使って大変な事になったんだ」
「あぁ、だからモップと雑巾しか渡されなかったんですね」
「一応言っておくが床を水浸しにするのもナシだ」
「私達も機械が水に弱い事くらい知ってます」
「分かったよ。ただ余計な事はするなよ? 床の掃除だけやってくれりゃあ良いんだ」
「そのつもりです」
以前に嫌な目にでもあったのだろう。
スタッフはオリガ達に釘を刺すように言って立去る。
「始めましょうか?」
リーファが尋ねる。
「そうね。私はその辺のゴミ箱からゴミを集めるから、床掃除をお願い」
これからあのスタッフは更に大変な目にあう事を思うと同情するが、こちらも仕事なのだ。
オリガは自分の役割を淡々と果たす事にする。
「言われた通りに機械室をやる時は気を付けて」
「分かりました」
それから数時間はオリガもリーファも特に何事も無く掃除を行う。
その間にもスタッフや物の配置、どの辺りで破壊工作を仕掛けるかといった確認も行っていた。
しかし、13時を過ぎた時に異常が起こる。
ビーッ、ビーッ!
それはけたたましいサイレンの音であり、否が応でも発電所内で異常が起きた事が理解出来るものであった。
「何かしら?」
その時、オリガとリーファはA棟の機械室にある配電盤に小型のプラスチック爆弾を仕掛けていた時であった。
《施設内にレジスタンスが潜入! 繰り返す! 施設内にレジスタンスが潜入! 奴らは清掃業者になりすましているぞ!》
施設内に響き渡る放送。
オリガは舌打ちをすると愛用のリボルバー式拳銃を握る。
リーファも同じ様に古びた9ミリピストルと隊内通信用の小型トランシーバーを懐から取り出した。
《レジスタンスだ。例の盗聴器を着けたまま、いらん事をベラベラ喋っていた様です》
トランシーバーから部下の通信が入る。
どうもレジスタンスは来客用のバッジに盗聴器が仕掛けられている事に気付かなかったようだ。
「所詮は素人ね」
オリガは呆れた声で言う。
「どうします?」
尋ねたのはリーファだ。
返答の為にオリガはトランシーバーを取り上げて口を開く。
「100特務部隊は撤退プランB。悪いけどレジスタンスの事までは面倒見れないわ」
そう言うとオリガは来客用のバッジをゴミ箱に投げ捨てる。
リーファは既にバッジを窓から外に向かって投げ捨てていた。
「こっちだ! いたぞ!」
気付けば敵の怒号と銃声で辺りが賑やかになってきている。
施設内に警報音が鳴り響く中、オリガとリーファは他の職員や警備兵を避ける様に逃げ出した。
「ミルスキー少佐!」
2人は物資不足から商品が補充されずに停止した自動販売機の影に隠れた時だ。
背後から声をかけられる。
レジスタンスの1人であるデロームだ。
困惑した表情を浮かべ、その胸には盗聴器付きの来客用バッジを能天気に付けている。
「素人が……!」
オリガは苛立った表情を浮かべると、デロームの胸からバッジを引き千切るように外す。
そして、外したそれを床に叩き付けてから踏みつけた。
「あっ……!」
踏みつけられたバッジから小さな機械が顔を覗かせて、デロームはそれが何であるかを悟る。
「良い? 私達はアーニア市の市民じゃないから調べられるとすぐにバレる。だから一時的に身を隠すわ。貴方達レジスタンスは顔が割れてなければ市街地へ戻って今後に備えてちょうだい」
オリガはまくしたてる様に言った。
デロームはオリガ達が自分達を助けてくれないのかという不満を持ちつつも、彼女のプレッシャーに気圧されて「分かった」と短く答える。
「ン……、他の部隊ね」
外で爆発が起きる。
おそらく、オリガの部下が仕掛けた爆弾が爆発したのだろう。
これが発電施設の重要な場所であれば、敵に発見されたとはいえ作戦は成功となる。
「オリガさん、私達も……」
「やってちょうだい」
リーファはオリガに呼び掛けると、手に持ったリモコンのスイッチを押す。
同時にもう一度爆発が起きる。
それはオリガ達が機械室に仕掛けた爆弾によるものだ。
「とにかく、今は逃げるわよ」
オリガとリーファは立ち上がる。
デロームはそんな2人を不安そうに見つめていた。
「行けます!」
出入口前には誰もいない。
オリガとリーファはデロームを無視して走り出した。
後の事など知るものかと、デロームやレジスタンスを置いてきぼりにする。
その途中で敵兵に遭う事は無かった。
それはオリガの部下である100特務部隊のほとんどがそうであった。
現在、施設にやってきた敵と銃撃戦を行っているのはレジスタンスである。
「あの素人達、やたらめったらに敵と戦闘をしているわね」
「おかけで良い目眩ましになりますよ」
敵部隊はレジスタンスとの戦闘に夢中になっている。
その為に100部隊の隊員達は、誰一人見つかる事無く発電所から撤退したのであった。




