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※ 君と僕との出会いのキセキ 第七話 ~早坂悠舞(はやさかゆま)~  ※

あらすじ:霧島祐也きりしまゆうやは目立たない高校生。趣味は小説のWEB投稿。文月玲央奈ふづきれおなからのいじめを受けており、小説を読んでくれるファンであるレオさんに相談することにした。しかし、そのレオさんが実は文月玲央奈だった。彼の小説を中止させようとしたが、彼女は思い止まる。そして二人は、チャットをし合う仲に。そんなある日、岩田から誘われた合コンを経て、祐也はお洒落が人の印象を変えることが分かった。そして……


『君と僕との出会いのキセキ』



※ 君と僕との出会いのキセキ ~早坂悠舞はやさかゆま~  ※



久し振りに玲央奈から誘われ、いつもの駅前噴水にいた。そして、いつものように、目の前では腕を組んで不機嫌な玲央奈がいた。またお洒落が……


「あのさぁ。前の時に私言ったよね? 」

「え? 何を……? 」


「…………」


玲央奈は頭を抱えていた。そう、僕は玲央奈が会いたい(レオさんが言うには、小説ばかり書いて家にこもってるから、気晴らしさせてあげる)という事で、来たのだ。髪も伸びたので、散髪屋で適当に髪を切ってきたんだが、それが気に入らないらしい。


「その、適当って言うのがダメだって言うのっ! 前に私、タクシーの中でアンタの髪の毛刈ってやるって言ったじゃないの」

「え? 僕の首を刈るんじゃないの? 」

「……じゃあ遠慮なくやらしてもらおうかしら……」


つい本音が出た。玲央奈の目がマジです。慌ててごめんなさいと謝ると、玲央奈も大きなため息をついてうなだれた。


「はぁ……もういいわ。じゃあ行きましょうか……ってちょっと! 」


ん? まだ何かあったのかな? 僕は慌てて服装を見る。玲央奈が選んでくれた一点ものだ。自分の髪は既に指摘されたからもうそれはない……まさか、靴下が違うのか? 慌てて見るものの、そもそも靴に隠れて見えないから関係ないか……


「……なに挙動不審なことしてんのよ。ちょっとここで起立しなさい」


玲央奈に言われ、起立した。すると、彼女は麻薬探知犬のように鼻をフンフンさせながら僕の体臭を嗅ぐ……彼女も十分挙動不審だ。周りの人の目が痛い。そんな中、玲央奈は完全に憤怒の巨人顔で僕を睨んだ。


「私が渡した香水つけてる? 」

「……あ、ああ……」


” 忘れてました。ごめんなさい…… ”


”  え”~  ”という低い声と共に、玲央奈の目が完全に切れる寸前の状態になる。こめかみに青筋どころじゃない。そんなに怒ると肌が荒れるぞ。


「うるさいっバカ! いちいちデリカシーに欠けるのよ! 事前に準備してよかったわ」


そう言うと、玲央奈は臭いものにファブリースのような勢いで僕に香水を吹きかけた。すると僕は甘い香りのするイケメンになったような気がする。


「あースッキリした。もう、忘れんなよ……」


玲央奈お嬢様と言い難いような恐ろしいセリフと共に彼女は気持ちを切り替えてくれた。本当に昔に比べると彼女は態度が丸くなった気がする。そんなに僕の小説は彼女にとって大きな比重なんだろうか。さて、今回も服屋と雑貨屋を回った。前回はとてもお高いものだったので、安い値段で、でもお洒落と耐久性のあるものを玲央奈は選んでくれた。意外としっかりしてるな。


「ウンウン、やっぱりあんたにはこういう服が良いわね」


玲央奈は機嫌よく服を品定めしていく。だが、僕の髪型を見ると目がクマのぬいぐるみのような素の姿になるのだけはご勘弁願いたい。そんなに気に入らないのだろうか。


「ん~いいんだけど。今のコイツの髪型だと合わないんだよなぁ……」


悔しそうに呟いている。本気で僕は余計な事をしたみたい。謝ろうとした時、ふと見覚えのある子がいた。そう、前回の合コンの時にいた子。早坂悠舞はやさかゆまだった。僕に気がつくと、嬉しそうにポテポテと走ってきた。そして、隣にいる玲央奈を見て、彼女は立ち止まった。


「あ……霧島……君? 」

「あ、早坂さんお久し振り。元気にしてた? 」

「あ、う、うん」


早坂さんはぎこちなく答える。あれ? 走ってきた時までは可憐な笑顔だったのに、今はとてつもなく緊張顔だ。どういうことだろう。


「……祐也行きましょう。まだ選んでるところよ」

「え? う、うん」


アレレ? 僕って玲央奈から名前で呼ばれるような間柄だったっけ……。確か、あいつ、こいつ、そいつ、ドイツ……


「あ、ご、ごめんなさい。じゃ、じゃあまた。さようなら! 」


早坂さんはそう言うと、慌てて逃げていく。周りが見えずに走っているのだろうか、電柱に” ゴチッ ”っと頭をぶつけて呻いていた。 


「あ、可哀想……」

「ほっときなさい。自業自得よ」


そう言うと、玲央奈は僕を早坂さんから遠ざけた。何か、玲央奈の雰囲気がものすごく怖かったきがする。



 玲央奈との買い物を済ませた僕は早速小説を書く。すると、スマホにメールが来た。早坂さんだ。彼女のメールを開けると。かなり動揺したまま書いてるようで、若干支離滅裂だった。内容をまとめると……


 街角で僕を見たときに、隣に綺麗な女性がいて、とても緊張した。そして、居たたまれなくなって、急に立ち去ってごめんなさい。という感じだった。そして最後に、あの人は彼女さんでしょうか? と書いてあった。


……彼女……いい響きだね。玲央奈とかぁ。正直ナイナイ! 僕の頭の中では玲央奈が僕をそんな目で見ているとは到底思えなかった。だってつい最近までこちらはいじめられてたんだ。そんな一瞬で玲央奈が僕に好意を持つはずがない。そう思った僕は早坂さんにメールを送る。


『彼女じゃないよ。あの人は。どちらかというと、僕の小説を好きでいてくれるお得意さん? みたいなものかな』


メールを送ると、しばらくしてメールが返ってきた。


『え? そうなんだ。ものすごい顔で睨まれたから、てっきり彼女だと思ってた。早とちりしちゃったね。でも、よかった』


ん、ん? 何がよかったんだろう。僕は頭をひねる。あ、玲央奈にもう睨まれるいわれがないからよかったということか……


『あ、彼女に服を選んでもらったんだ。ああ見えてオシャレだから、僕は助かってる』


そうメールすると、少し間があって返信が来た。


『すごいね、彼女本当にどこかのモデルさんみたい。私みたいな童顔は……羨ましいな』

『早坂さんはとても可愛いから、大丈夫だよ。僕が保証する』


僕はメールを送り返す。すると今度はマッハで返ってきた。


『え? ほ、本当に? 嘘じゃないよね? そんなこと言われたら本気にするよ? 』


ん? 何か変な方向に向かっている気がする……フォローしただけなんだけど。まぁいいか……


『うんうん。自信持っていいと思うよ。早坂さんなら告白された人がいたら皆付き合うんじゃないかな? 』


僕がそのメールをした後、彼女からの返信がなかった。まぁ、納得してくれたんだろう。そう思っていると、レオさんからチャットが……慌ててレオさんのコールをキャッチする。そしてチャットをしていると就寝時間になってしまった。


アレ……今日、僕小説書けなかった……


どうしてこうなったんだろうと首をかしげながらも、次の日学校のため、僕は床についた。



早坂悠舞END


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