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※ 君と僕との出会いのキセキ 第四話 ~モヤモヤ~ ※

あらすじ:霧島祐也きりしまゆうやは小説を書いてはWEB投稿する地味な少年。文月玲央奈ふづきれおなからのいじめに会っており、その件で自分の小説のファンであるレオさんに相談しようとしたことから彼の人生は変わった。

 なんとそのレオさんが文月玲央奈本人だったからだ。一度は連載を中止させようとしたが思い止まり、続けるように頼む。そして、玲央奈はその件以降、いじめを一切行わなくなった。そして、週一の投稿日、彼女とのチャットがいつものこととなりつつあった。そんな時……


※ 君と僕との出会いのキセキ ~モヤモヤ~ ※



「さて、これで今日の投稿終わりっと」


週に一回の投稿日、僕は小説の原稿をサイトにアップする。すると、待ってましたと言わんばかりにレオさんが入ってくる。


『今週もお疲れ様です。これからの展開がとても楽しみです。また来週も頑張って投稿しようっ』


このコメントを見て僕は苦笑いする。本当に学校にいる時の彼女とテンションが違う。学校にいるときは努めてお互い関わらないようにしている。目を合わせることもなくお互いが一定の距離を保っているような。とても不思議な状態だった。クラスの皆も玲央奈の不可思議な行動に疑問を持っていたようだが、しばらくするとそれも当たり前になってきた。


(本当に平和になったな……)


次の日僕は学校で、のんびりと今までの事を思いだした。いじめの毎日、気の休まる日がなかった。それに比べて今はとても穏やかな毎日が過ぎる。そのおかげで物語の展開とかじっくり考えられるようになった。そのせいか、小説の内容も段々面白くなってきた気がする。そして、レオさんのテンションも段々上がっている。……玲央奈は相変わらず普通だ。


「よっ霧島」

「……岩田か」


僕に話しかけてきた男は岩田光雄いわたみつお中学からの腐れ縁なのだが、僕がいじめられてからは何故か距離を置いていた。平和になった途端、僕の前に戻ってきた。……このコウモリめ。


「な、何だよ。そんなに睨むなって……お前だって俺がいじめられてたら絶対に俺と同じ態度とるだろ」


岩田に言われて思った。


「……だよな。僕には関係ない」

「だろ。俺たちにたもん同士だろ」


じゃあお前も玲央奈にボコられてたら良かったのに。と不謹慎なことを考えていると、岩田から意外なお誘いがあった。


「そういえばよ、俺の友達が合コンとかセッティングしたらしいんだわ。んで人が足りないってんで……」

「……僕に行けと」


僕がそう言うと岩田はウンウンと頷く。本当に調子がいいやつだ。


「でもさ、僕みたいにパッとしない奴がいていいの? 」

「そりゃ……いたほうがいいなっ」


何だか引っかかるようなことを言われた。そもそも合コンって男女の出会いの場。パッとしない人間が来るような場所じゃなくて、もっと派手なチャラチャラした奴が来るんじゃないのか? 訝しげに見ていると。岩田は苦笑いをしつつ話した。


「まぁまぁいいじゃねぇか。たまには二次元の世界から三次元にステップアップしろよ。そんなんだからキモいって皆に思われるんだぞ」

「……ほっとけ」


僕は地味にそのことを気にしていた。でも、仕方ない。元々性格がアウトドア派じゃなく、インドア派なのだ。今は小説書くのが何よりも楽しい。それに……

 僕はふと、玲央奈を見つめた。すると、彼女は直ぐに僕に気がついて目を合わせた。” ドキッ ”として慌てて視線をそらす。


(ちょっと見ただけなのになんで気がつくんだよ……)


僕はこの刺激に耐えれそうになかった。そして何故か玲央奈の視線が突き刺さっているような気もする。


「ま、まぁちょっと考えさせてよ。僕小説良い所なんだ」

「まぁた小説かよ。どうせお前のは面白くないんだから無駄な努力すんなって」


岩田の声が響く。玲央奈の視線が僕じゃなくて岩田に変わった。第六感というやつだろうか、玲央奈の視線から赤外線スコープのようなレーザーが見えてきた。そんなことお構いなしに岩田は話しかける。鈍いのか、心臓に毛が生えているのだろうか。


「じゃあ決まりだ。日曜日にお前来いよ。来なかったらどうなるか……」

「……分かったよ」


僕は押しに弱いのだろうか。正直嫌だったけど、断りきれなかった。そしたら、また僕に玲央奈レーザーが照射されたような気がする。でも僕は見えないんだ……と自己暗示をかけた。

 その日の夜、小説を書き続けていると。小説の更新日じゃないのに珍しくレオさんからコールがあった。小説を書きながらなので、あまり気にせずにコールをキャッチした。すると、通信開始,いの一番にコメントが来た。


『合コン行くの? 』


「ブフゥッ」


僕は口に含んだお茶を盛大に吹いた。何で知って……って岩田の大声誰でも聞こえるか。ってかどうしよう……


『ごめんなさい……行きたくなかったんだけど、岩田に強引に』

『まぁ、そんなところだと思った』


レオさんは呆れた感じでコメントしてきた。でも、この事、小説の投稿日じゃないのにすぐ話すようなことなのかな……


『どうしよう』

『仕方ないでしょ。行くしかないよ』


んーよく分からない。行くしかないって言うのに何で聞きに来たんだろう。まぁいいか。


『あの、僕服装中途半端なんだけど、どうしたらいい? 』

『……行きたくないんじゃなかったの? 』


いや、本当にわからない。レオさんは何が言いたいんだ。


『あ、いや、僕服装とかわからないから』

『ふぅん……ま、いいか。じゃ日曜日に合コンなんでしょ? 』

『え? うん』


曜日まで分かってたんだ。驚いていると、レオさんからコメントが送られてきた。


『じゃあさ土曜日に最寄りの駅前に来なよ。私が見てあげる』


え? 玲央奈が見てくれる? いや、嬉しいんだけど。でも、チャットでは打ち解けたけど。リアルはまだ鎮静剤いるぐらい怖いんだけど。怯えながらもPC上のレオさんはとても優しい。このレオさんの姿が本当の玲央奈だと思って、僕はお願いした。


『うん、分かった。よろしくお願いいたします』

『ウンウン素直でよろしい。じゃあ楽しみにしてるね』


そう言うとレオさんは退出した。なし崩し的に僕はまたお誘いを受けてしまった。本当に押しに弱いんだな。ため息をついて、改めてチャットの文章を見てみた。


” じゃあ楽しみにしてるね ”


……一瞬固まった。楽しみ? 僕は本当にPC上のレオさん、そして、中にいる文月玲央奈の真意が全く分からなかった。そして、僕はこの不可解なモヤモヤと共に床についた。



モヤモヤEND



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