※ 君と僕との出会いのキセキ 第三十話 ~ ダイエットの成果 ~ ※
霧島祐也小説投稿が趣味の本編の主人公。内向的な彼を外界に引きずり出したのが、彼の小説ファンのレオさんこと、文月玲央奈だった。彼女は祐也を磨き上げた。それにより、祐也は人前に出ても恥ずかしくないぐらいのイケメンに。
一方、玲央奈は祐也を磨き上げることに喜びを見出した。だが、その反面祐也に虫(女)がまとわりつきだした。そんな状況に焦りつつも、祐也の磨き上げとまとわりつく虫を排除することに精を出していた。そんな中
” 僕のダイエットが中盤に差し掛かった ”
※ 君と僕との出会いのキセキ ~ ダイエットの成果 ~ ※
時期は丁度六月に差し掛かった辺りだろうか、世の中ジューンブライドとか言いながら皆この時期に結婚式を始めるらしい。でも、一説によると、これはヨーロッパの時期で六月がいいよ。ってだけの話で、日本の季節に合わせたらそりゃ、梅雨真っ只中ですよね。と言う訳で学校の外は雨が降っている所だったり……
「フゥ。雨が降ってるとアンニュイな気分になるよ……」
ふと独り言が漏れる。すると目の前には岩田光雄が目の前でニコニコしながら僕を見つめていた。気持ち悪い……
「何かお困りでしょうか? 私めがお話を聞いて差し上げますよ」
岩田は片膝をついて話した。視線は一気に岩田と僕に注がれる。僕は今日に至るまで、夢の世界で岩田と同衾しているトラウマで顔色が悪くなる。最後の最後は夢の世界で守りきった。だが、こんな夢を見た後、こいつと普通に絡む気になれない。
「いらない。変な夢を見て気分を害してるんだ。放っといてくれ」
「フムッそうですか……」
放っといてくれと言ったはずだが、岩田は顎に手を置いてしばらく考え事をしていた。その後、思い出したかのように僕に話しかけた。
「おお、そう言えば、夢といえば、俺化粧した夢を見たんだよ」
「!! 」
恐れおののく僕、まさか、コイツも見ていたのか?
「んでさ、俺の化粧された姿がとても……キレイ……でな」
オエッ!!
「何かさ、いつもの自分と違うんだよな。色々と心が解放されるっていう気分で。感動してたら目の前にさ、微笑んでる超絶美少女がいたんだ。身長は……お前ぐらいだったかな。すごい清楚な感じで、俺のハートに響いたのよっ! 」
こ、こいつまさか……僕と同じ夢でも見ていたんじゃ……僕の頬に一筋の汗が滴る。い、いや、まだ違うはず……そんな僕の想いを岩田は無残にも打ち砕いた。
「自己紹介したらさ、” 霧島悠里 ”ちゃんて言うんだよ。な、なぁ……お前、妹いた? いたら紹介してくれよっ! 」
「いないっ! 」
完全に顔色が悪くなる僕、今日は早退したい気分だ。五月中旬に中間考査終わったし……帰りたいなぁ。というかコイツなんでそんな事知ってるんだよ。コイツ自身が神じゃないの? 一日中悠里ちゃんについて語ってきたこの男。絶対に僕に嫌がらせをしてるよね……これが素だったら殴り倒してる所だよ。
” 後日、素だったことが判明した。この事は僕にとって衝撃としか言い様がなかった…… 殴る気も失せたのは言うまでもない ”
苦痛の学校もようやく終わり、早々に帰ろうとした。すると、岩田からおぞましき言葉が聞こえた。
「なぁ、悠里ちゃんってお前に似てたけど。兄弟じゃなくてお前の女装した姿? 」
” ギクッ! ”
「し、知らないよじゃ、じゃあなっ! 」
僕は慌てるように逃げる。その時聞いてはいけない言葉が聞こえたきがする。「お前が悠里ちゃんでも俺はイケるぜっ! 」……僕はイケナイからやめてほしい。
最近、気が休まることがなく、そして毎日が気だるい。何でだろう。前のホワイトデーの時は忙しかったけど、やりがいがあった。目的の伴わない努力ほど徒労に終わるものはないか。動機付け……ねぇ。
” いい加減にしないと玲央奈に嫌われるぞ ”
その言葉がふと思い出される。嫌われる……か。普段の玲央奈を見てたら僕のことそんなに好きじゃないような気もするんだけど……
そう思っていると、ふと、ホワイトデーの玲央奈とその友達にキスされたことを思い出す。顔が赤くなる僕、ま、まぁ嫌いだったら僕にキスなんかしないよね……
「祐也? どしたの? そんな顔赤くしてさ」
「!! 」
僕は不意の言葉に驚いた。声の主を見ると、ひよこの権化だった。雨も上がり、地面は雨の様相から太陽の光で乾いており、少しだけシミのように雨があったことを伝えている。赤色ひよこは太陽の光で更に赤くなっており、その色はとても鮮やかな高級ひよこを想像させる。最近コイツ俺と一緒に帰っている気がするぞ。ってかひよこの方がこっちに来てる気もするけど。
「な、何さ、大げさに飛び跳ねてさ。酷いんじゃない? 」
イヤ、急に話しかけるお前の方が酷いよ……と思っていると、この赤色ひよこはまた勘違いを始める。
「あ、そっか。こんなに超絶美少女な私がいたら……ねぇ」
といやらしい目つきをすると、体をクネクネして……僕を誘っているのだろうか。でもパッと見、甘い蜜じゃなくて、笑いの毒液を僕に飲まそうとしてるように見える。不意に吹き出しそうになり、また豪快に咳をして誤魔化した。それを見てひよこは作戦成功と判断した。
「え、エへへ……祐也に効果あった……かな」
うん、笑いの効果は抜群だぞ。あ、そう言えば岩田の事聞かないとな。岩田の件を思い出して、笑いが収まる。反対におぞましさは発生したけどな。
「あ、そうね。アイツまた掲示板に神の啓示を受けたとかカルトに段々染まってるよ」
「…………そうか。実はな……」
僕はひよこに今回あった件を伝える。するとひよこは立派な青色ひよこになった。そりゃドン引きするわな……
「ごめん、私その趣味ないわ」
「僕もないわ!! 」
反射的に答える。するとひよこは普段の赤色ひよこに戻り、ホッとした表情をした。ん? 何でコイツがホッとするんだ? 僕が男に襲われそうだってのにさ……
「ま、まぁ、アンタに興味がないならいいわ。また何かあったら教えてあげるよ。ゆ、祐也お、お兄ちゃん……」
「……え? 」
「な、何でもないわよ! じゃ、じゃあまた明日ねっ! 」
ひよこはそう言うと信じられない速さで最寄駅までダッシュしていった。コイツ、知らない間にアスリートばりの運動神経持ってたんだなぁ。最近のひよこ走りといい、一種の才能だよね。
その後、考えなしのひよこはというと、電車を待つまでの間、僕と一緒になっていた。当然のことだが、アイツだけ恥ずかしさなのだろうか、気まずい表情を浮かべていたのは言うまでもない。プククッ
「さて、定期検診よ。体重はいくらになった? 」
僕は土曜日のバイト帰り、玲央奈に拉致された。狡猾にも黎苑さんを使って、莉奈さんの注意を引いた隙に僕を車に連行した。このやり方はなんとなく、悪意を感じるのは気のせいだろうか。季節は六月終盤。間もなく七月になろうとしていた。ダイエットを始めて一ヶ月近くなるため、玲央奈からの召集があったというわけだ。
「えっと、多分六三・二キロぐらいかな」
「……へぇ。結構やるわね」
僕は玲央奈の意外そうな顔を見て少し安堵した。さすがに僕だけじゃ不安だから、隼人に頼んで一緒にジョギングをしてもらった。……だけど、運動初心者に隼人は容赦なく走り込んでいく。そのせいかよく分からない。毎日体がだるいのは隼人のシゴキがキツイからなんだけどね。
「ふぅん……隼人が協力したのか。じゃあ当然の結果か」
「え? どういうこと? 」
僕が不思議そうに尋ねると、玲央奈はフフッと微笑んだ。その顔を見て” ドキッ ”とする。最近の玲央奈可愛いな。今までキツイ顔しか見てなかったけど、正直美人の部類に入ると思う。顔も彫りが深く、よく見るとやっぱり純日本人じゃない気がしてならない。
「隼人はちゃんとモデルの仕事してたわけでしょ。帰国してからはしてないから、セミだけど” プロ ”なのよ。やってることは一般人の比じゃないわ。丁度いい先生がいてよかったね」
「え。う、うん……」
僕は赤面して俯いた。最近玲央奈にドキドキするようになってきた。隼人の言葉も影響してきてるのかもしれない。僕自身分からなかった気持ちを気づかせるきっかけになったから。
「じゃあこのままこのペースを維持してね。達成したらご褒美あげよう」
「え? 」
僕は顔が更に赤くなった。ご、ご褒美……ど、どどどどんなご褒美ですか? 玲央奈様っ! 期待して見つめると、玲央奈は急に顔が真っ赤になった。
「チョッ! チョット! ご、ご褒美って言っても、あ、あああ怪しいものじゃないんだからねっ! へ、変なこと考えないでよ!! 」
あ、いつもの玲央奈だ。ま、まぁ、いつも通りの玲央奈の方が僕は気楽でいいんだけどね。
しばらく僕たちは話をして、その後、黎苑さんの車で自分の家に帰った。家に帰ると丁度隼人がいた。隼人にちょっと気になったことを聞いてみた。すると、隼人は複雑な表情をして僕に言った。
「あ、あ~その話か……絶対に玲央奈に言うなよ。アレ、アイツにとって禁句なんだわ」
「え? どういうこと? 」
僕の言葉に困った表情をしつつ、目線をそらした。しばらく考えた後、七月中旬に黎苑と隼人、二人の久し振りの仕事があるそうで、その仕事に僕を連れて行くこととなった。
「あ、それとな、この話、玲央奈にするなよ。したらこの話はなかったことになるからな。それだけ大変な事なんだよ」
「そ、そうなんだ。……ありがと。兄貴……」
僕の言葉に隼人は少し驚いた顔をしたものの、ニコッと笑うと、僕の頭を撫でて「どういたしまして」と言った。こういう何気ない仕草が決まる兄貴って理不尽な気がする。絶対に僕には真似できないや……
その後、僕はいつものように食事の準備、そして、兄貴と一緒に川原の周辺をジョギングした。軽くストレッチをしたりして、怪我をしないようにする。初めは曲がらなかった僕の体も隼人の言うように、風呂上りでストレッチをして行くと曲がるようになってきた。少しづつ少しづつ、僕は玲央奈のいう、目標に近づいてきた。それが段々楽しく感じられてくる。
「あ、あのよ。少し相談があるんだが……」
川原を並走しながら隼人が僕にいう。何だろうと思って聞いてみた。
「うん。俺はお前のダイエットに付き合う気がないからよ。食事に肉入れてくれね? うまいんだけど、物足りねーんだわ」
「知らん! 」
僕は渋る兄貴を足蹴にして、放置した。兄貴からは悲痛の声が聞こえる。「ひもじぃよおぉぉ」……仕方がない。
後日、僕は豆腐でハンバーグを作ってやった。すると、隼人はそれが豆腐だと分からずに喜んで食べていた。
……バカな奴だ……
兄貴の嬉しそうな顔を見た僕はその後、定期的に” もどき料理 ”を混ぜて作ってやった。当然兄貴は満足して食べていた。
「毎日こんな料理だったらいいよなっ! 」
さすがにそう言う兄貴を見て、可哀想に思ったのは言うまでもない……
~ ダイエットの成果 ~END




