※ 君と僕との出会いのキセキ 第二十九話 ~ 来る夏に向けて ~ ※
霧島祐也趣味は小説のWEB投稿。レオさんこと文月玲央奈と出会い、彼の人生は変わった。とうとう化粧と女装も覚えてしまい、益々迷走する祐也。兄からは軽蔑の眼差しをしばし受けることに。そんな中、玲央奈からちゃんとした化粧の仕方を覚え、今度からちゃんと実践するように言われる。そして次の段階へと向かったのだった。
※ 君と僕との出会いのキセキ ~ 来る夏に向けて ~ ※
玲央奈の部屋で化粧を受けた僕、しばらくして化粧が終わり、玲央奈から手鏡を受け取る。
「よし、化粧は大体こんなものよ」
「……今度はちゃんとしてる……」
玲央奈の言葉に僕は溜息をつきつつ安堵の声を上げた。すると僕が図らずも女装したことを思い出したようで、玲央奈は笑い出した。正直心が傷つく。ふてくされた顔をする僕を見て玲央奈は頬を染めながら呟いた。
「うん……これで、イイカナ……ウフフ」
「ん? 」
「な、何でもないわよっ! 」
何かを取り繕うように両手を振ってごまかす玲央奈。さすがの僕も分かるぞ。絶対に不埒なこと考えてただろ! この腐○子めっ!
玲央奈は照れ笑いをしながらも必死にごまかしていた。ジト目をしていた僕に急に真剣な顔を向ける。そして、しばらく僕を見つめた後、頬に手を当てて考え事を始めた。さっきのふざけた雰囲気が無くなったから、僕への改善スイッチが玲央奈に入ったんだろうね。しばらく彼女の好きにさせる。しばらく考え事をした玲央奈は何かに気がついたようにハッとする。僕は何も分からずボケーッと見てたけどね。
「最後の仕上げがあったわね。さて、祐也。アンタに課題よ」
「え? 課題? 」
僕がそう言うと、玲央奈はウンウンと頭を上下に振る。得意そうな顔をする玲央奈。うん……絶対に僕は楽して生活を送れない状況になるだろうな。そう思っていると、予想通りのお言葉が来たのだった。
「夏に向けて、このたるんだ体を引き締めなさい! 」
「え!? 」
玲央奈はそう言うと、紙にダイエットに関する事柄を書き綴る。そして、一つ一つ、玲央奈は僕に質問をする。それに合わせて僕が答えるという感じだ。一種の問診表みたいなものかな?
「さて、アンタの今の感じは、身長一七〇センチ六五キロ……アンタちょっと太りすぎじゃない? 」
「いや、趣味インドア派だし、ご飯も不自由ないし……」
「ダメ!! 」
「デスヨネ……」
玲央奈の鋭い目線と言葉を受け、しゅんとする。その姿を厳しい目で見ながらも、ちょっと躊躇しているような……不思議な表情をしていた。最近の玲央奈ちょっとおかしいな。今まで見せなかったような表情を僕に見せるようになったきがするよ。かという僕も、玲央奈の前でも良く笑うようにはなった気がする。
「取り敢えず、BMI指数ってのがあってね。BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)になるの。BMIの値が、18.5~25となる体重が「標準」、18.5未満だと「痩せすぎ」、25.1以上だと「肥満傾向」となるのよ。アンタは22.5かな」
「じゃあ標準じゃ……」「ダメ!! 」
玲央奈はビシッと言う。エ~という顔をしている僕に、玲央奈は言う。
「標準だからって適当にしないで頂戴。アンタの理想の体重は六十三キロなの! だから絞って-五キロにしなさい! 」
「え? 理想体重より少な……」「ダメッ!! 」
僕の言葉は玲央奈のダメの一言で全て片付く。……なんで玲央奈はこんなに熱を入れてくるのか分からない。僕はこれで満足なんだけど……
「全く、そんなんじゃ私に釣り合わないっての……」
「え? 何? 」
「知らないっ! バカッ! 」
玲央奈はそう言うと、顔を真っ赤にして無理やり僕に念書を書かせた。……うん。信用されてないね僕。
玲央奈邸を後にした僕は、玲央奈の渡した紙にある通り、ダイエットをしなければならなくなった。当然この念書は二枚ある。僕が破棄しても、玲央奈自身が持っているという非情さ、この弱い精神がとても憎い……
「ん~何だろう。僕の体、体重の割にそんなに太ってるように見えないんだよな。むしろ痩せてるように見える」
不思議なものだ。でも、確かに体は引き締まってないんだよね。インドア派だし……と今までは納得してきたけど。玲央奈の監視がある以上それは避けて通れない。まず一つ目は体を鍛える方法か。それは隼人が知ってそうだな。
「……と言う訳で、玲央奈に体を鍛えて痩せるように言われたんだ」
事情を話すと、初めはしかめっ面をしつつ(過去の行いをまだ根に持っている)隼人は聞いてくれた。
「まぁ玲央奈がそう言うなら……仕方ねーな……協力してやるよ」
隼人は体の鍛え方を教えてくれた。一番いいのはジョギングらしい。腕立て、腹筋、背筋などそれぞれ効果があるが、あまりやり過ぎないようにと言われる。理由を聞くと、体を鍛えすぎると反対に、筋肉が膨張して、太くなってしまい、体重が落ちにくくなるからという。フムフム……
「後は、新陳代謝をよくすると、カロリー消費が良くなるから、いいぞ。後は水も定期的に飲めよ。体の循環器系を活発にするんだ」
ゲッ! 結構めんどくさいな……そう思っていると、隼人は人差し指を立てて言った。
「玲央奈から何度も言われてるだろうが、キレイになる、格好良くなるには必ず” もうひと手間を惜しむな ”だ。それをするかしないかで変わるんだ。いい加減にしないと玲央奈に嫌われるぞ」
「…………」
僕は黙った。何故黙ったかは分からない。でも、心の奥が何故かチクチクしたんだ。これってまさか……
「ん? これは玲央奈のメモ書きか。次は食事管理か……カロリーを抑えつつ、タンパク質とビタミンの効率のいい食事を考えろ……だって。相変わらず料理に関してはからっきしな奴だな」
「……玲央奈って料理ダメなの? 」
隼人の言葉に反応した僕はふと尋ねてみる。すると隼人はニヤニヤ笑いながら言った。
「うん。アイツは色んなことをそつなくこなせる癖になぁ。料理だけは何故かダメなんだ」
へぇ……完璧に見える玲央奈も欠点があるんだね。と思っていると隼人はニヤついて僕を見つめている。
「な、なんだよ」
「いや、お前、玲央奈が好きなの? 」
「な、な、なな!? 」
僕は思考停止した。今まで考えたこともなかった。その時、なんとなく、ついさっきの兄貴の何気ない言葉で、自分が反応した事に気がついた気がする。
「好き……かもしれない。僕にはまだ、分からない……」
「何だよ……そのかなりグレーゾーン的な白発言は……」
だって分からないんだもん。でも、玲央奈に嫌われるのは嫌だなという感覚だけは分かった。それが恋愛かどうか僕には分からない。
「そう言えば、料理って言えば、玲子は結構な腕前だぞ。かなり練習したらしいけど」
「へぇ、アイツの料理食べたことあるの? 」
僕の言葉に隼人は頷く。その時、ふとあのキャンプの時のことを思い出し聞いてみた。
「そう言えば、兄貴って玲子と付き合ってんの? 」
「いや、俺とアイツは関係ない」
「でも、キャンプの時に……」
「……見てたのかよ……まぁ、今は関係ない。以前は人の見方によっては……付き合ってるようには見えたけどな」
隼人は微妙な表情で僕の質問に答えた。そして、僕の頭を軽くコツンと叩くと、「盗み見は良くないぞ」と言われた。まぁそうなんだけど。
取り敢えず隼人の話によると、二年前、男と付き合ったことがないから付き合うときにどうすればいいのか聞いてきたらしい。それで、色々と教えていたようだ。その一環として料理について言ったようだ。その時に僕の料理している姿を盗撮(犯罪)をしつつ玲子に見せたらしい。それを見て彼女は情熱を燃やして努力をしたというのだ。……ってかお前も十分盗み見してるじゃねーかとツッコミたかったがそこは我慢する。
「で、まぁ、俺がイタリアに留学することになって、それ以来疎遠になったって感じかな。最後に俺がモデルの仕事イタリアでやるって言ったら、アイツもやりたいって、叔父さんに許可貰って読者モデル始めたみたいだぞ」
へぇ……ひよこはそんな経緯があってあんな状態になってたんだなぁ。そう思っていると隼人は僕の顔を真剣に見つめる。何だろうと不思議に思って見つめ返すと意外な言葉を僕に言った。
「玲子な。アイツ可愛くなったか? 」
「え? ……ん~どうだろう。ひよこは黙ってたら可愛いかな。後ろからチョロチョロ付いてくるのは変わらなくていいと思うよ」
「……ん。もういい」
隼人は頭を抱えて僕の話を止めた。「アイツが不憫だ……」と呟いていたが僕にはてんでわからない。
その後、しばらく玲央奈のメモ&念書を元に話をして、大体の計画ができた。それに合わせて動く。やっぱり料理の献立考える方が僕には似合ってるや……運動なんてわからんちん……全部隼人に丸投げした。でも隼人は文句言わず教えてくれる。最近隼人と僕の関係も変わったかもしれない。いや、僕が変わったからかもしれない。元々隼人は面倒見がいいんだ。僕が周りとの接触を避けてたから、隼人は遠慮していたのかもしれない……
「さて、これで何とかなるかな……」
と言ったのも束の間……体を鍛えて、バイトして、学校行きつつ勉強……どうやって小説書くんだ? という問題を忘れていた。一気に顔色が青ざめる。
「ど、どうすればいいんだ……」
悩んでいると、パソコンにはレオさんからのメールがある。昨日今日のことなのに結果は出たか? と言うありがたくも迷惑なお言葉が綴られている。んなわけねーだろっ! そう思いつつもそんな事はムリです。と返信する。するとマッハで痩せろ!! と一言返信が来た。……どうしろと……
『冗談よ。毎日そう言わないとアンタのことだから怠けそうな気がしたのよ』
念入りに念書まで書かせてどこまで用心深いんだ……
『あ、そうそう色々とやることあるからって小説の更新止めないでよ。止めたらブッ殺す! 』
「…………」
うん、僕は絶句した。玲央奈絶対僕を殺すつもりだ……肉体的ないじめがなくなった代わりに僕の精神はとてつもないプレッシャーに押しつぶされそうだ……僕は超人じゃない。ただの一般人だ。そんな神のような一週間を切り抜けるなんてできない。平穏な時間が惜しい。
「今日は……もう、ダメだ。明日から頑張ろう……」
僕は凡人によくありがちなセリフと共に、床についた。
そして、今日も岩田光雄にひたすら拝まれるという夢を見た……僕は睡眠時間も心休まる時がないようだ……
~ 来る夏に向けて ~END




