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※ 君と僕との出会いのキセキ 第二十八話 ~ 化粧の妙技 ~ ※

霧島祐也きりしまゆうや趣味は小説のWEB投稿。レオさんこと文月玲央奈ふづきれおなと出会い、彼の人生は変わった。キャンプも無事に(? ) 終わり、彼らは日常の生活に戻る。そんな中、玲央奈から予想外の言葉が投げかけられた。


” そろそろ仕上げるわよ ”


祐也に戦慄が走る……


※ 君と僕との出会いのキセキ 第二十八話 ~ 化粧の妙技 ~ ※



『じゃあ日曜日に来るのよ! いいわね』


玲央奈からのチャットを受け、僕は困惑していた。いつものように日記更新からのチャットのお誘いが来ていた。そして、話の流れから土曜日に玲央奈様イベントのお誘いがあったものの、バイトがあると伝えた瞬間、玲央奈の口調が変わった。


『アンタ、まだあのチビに関わってんのね! 』


その言葉から和やかな雰囲気はぶち壊された。

僕のアルバイト先は、かつてホワイトデーのクッキーの原材料費を手に入れるために、兄貴の協力を経て始めたファミレスの仕事だ。その時に知り合った先輩が莉奈りなさんである。その後、莉奈さんからの強いリクエストにより、僕は土曜日に四時間シフトを入れている。休憩時間も入れた分のシフト時間だが、その時間帯に彼女もいる。その事をうっかり教えた僕にも責任があるんだけど……なんで僕の共通の女の子の知り合いは皆仲が悪いんだろうね。


「考えても始まらないや。でも、玲央奈の言ってた” 仕上げ ”ってなんだろうか」


不可解な思いと共に、僕は小説の続きを書き始めた。



 次の日、若干疲れを残しつつも学校に通う僕……。クラスが変わって最近やっと慣れた気がする。その中で何かとあの蝙蝠男こうもりおとここと岩田光雄いわたみつおがクラス内の空気をまとめあげていた。珍しいことだ。そう思っていると、岩田は事あるごとに僕を持ち上げる。それに合わせて他の皆も何故か持ち上げていた。……何か先生も若干目が虚ろながらも僕に気を使っている。どういうことだ……


「ふぅ……今日も苦痛の学園生活を終わらせた……」


僕は溜息とともにそう呟きながらトボトボ帰宅の途に就く。すると、いつの間にか僕の横にはひよこの権化こと藤島玲子ふじしまれいこがいた。辛そうにする僕を心配するように見つめている。


……黙っていると可愛いんだけどなこの赤色ひよこは……


「ん? 祐也お疲れだね。最近岩田って奴がアンタを持ち上げてるみたいだけどさ……やっぱり、アイツが犯人か……」

「犯人? どういう事だ? 」


僕は不思議に思ってひよこに問い詰める。すると顔を真っ赤にしてひよこは驚いた。


「ちょっ! ちょっとアンタ近いよっ! 」

「あ、ご、ごめん……」


ひよこの赤面顔に若干吹き出す笑いをこらえながら僕は顔を背けた。笑いを堪えるために背けたんだが、ひよこは少し勘違いをしているようだ。


「べ、別にわ、私の顔が可愛いからって……そんなにマジマジ見ないでよ……恥ずかしいじゃん……」


「…………ッッ! 」


ごめん、そのセリフがトドメになったみたい。僕は咳をする振りをして笑い出した。そして、咳で笑い出したようにゲホゲホ言って誤魔化すと……更にひよこが勘違い始めたようだ……


「ま、まぁ私のような超絶美少女にそんなセリフ言われるなんて、感謝しなさいよねっ! 」


ゆ、許してください。あまりのおかしさに一人で肋骨骨折起こしそうです。勘違いも甚だしくてそれだけで腹筋鍛えられそうよ。しばらく死にそうなぐらいに笑いと咳を出しつつ、やっと落ち着いた頃には……


” あ~あ……次の日、腹が筋肉痛になりそう…… ”


悲痛なお釣りをお返しされることとなった。トホホ……

 


気を取り直して、改めて岩田の事を聞くと、玲子は含み笑いをしつつ答えてくれた。その内容は、あの裏の掲示板で、僕の最初の信者と名乗る男? と思われる書き込みがあり、彼を中心に信者を集めるということらしい。その行動が岩田とリンクしているという事だ。だが、証拠はなく、無駄に尋ねるような浅はかな事をしないようにと玲子に釘を刺される。


「ま、まぁ、別にアンタが心配だから調べてるわけじゃなくて……偶然、そう偶然なんだからねっ! 」


最近のひよこのブームはツンツン話すことらしい。そういう時は素直にお礼を言ってやると効果があると、とある情報雑誌に記載があった。やってみるか。


「そっか。心配してくれてありがとな」


「!! ば、バカじゃないの!? か、勘違いしないでよね!! 」


そう言うと玲子はひよこのように” ヨチヨチ ”しながらもぎこちなく走っていった。器用な奴だな……と言うか、効果なんて本当にあったのか? 僕はとある雑誌の記事に不信を抱いたのだった。


土曜日仕事を終えて、小説を書く。そして、少し寝不足だったが、体にムチを打って日曜日、早朝に玲央奈の指定した駅前の噴水に行く。


駅の出口付近から見ると、直ぐに玲央奈が分かった。彼女らしく相変わらずのオシャレで全体を白に統一しているようだ。彼女の白い肌が更に際立ってエロ……いや、女性らしさを強調している。

いつも自信満々のはずの彼女だが、今違っている。オシャレも完璧で、そのまま下々の者を見下すように立っている印象があるんだけど。今日は何か異様にソワソワしているし。何だろうとても不安そうな顔をしている。珍しいね。


「お、おはよう」


さっきの彼女の事は見なかったことにして、僕は玲央奈に挨拶をした。すると、不安そうな表情から一転して、とても嬉しそうな溢れるような笑顔を見せる玲央奈。アレ? と、とても可愛いぞ……ドキドキしてきた。


「あ、祐也! お、おはよう……」


少し嬉しそうな顔をしすぎたのか、ハッとなった玲央奈は顔を真っ赤にして挨拶を返した。そして、僕たちはお互いに目線を下に置きながら無言で立ちすくんだ。この雰囲気は、初めてだった。


「あ、ご、ごめんなさい。タクシーを待たせてるから……い、行くわよ」

「あ、う、うん」


僕が返事すると、玲央奈は僕の腕を手繰り寄せ、自分の腕を絡ませる。そして、強引にタクシーに連れて行った。な、何だ? 腕に柔らかい感触が……僕は朝っぱらから意識が朦朧としてしまった。車に乗ってからもボーッとしていると、玲央奈から急かされた。慌ててタクシーを出ると、見慣れた店が見えた。


” バッロ・ディ・アンジェリ ”


この店は僕が初めて玲央奈から服をプレゼントして貰った場所だ。値段は……怖くて聞けない……


「お待ちしておりました。お嬢様! 」


店の中に入ると、待っていたであろう店長とその店員達が玲央奈と僕を迎えてくれた。以前僕がこの店に来た時と同じ布陣のような気がする。少し気圧されそうになるがこらえる。ニコニコと手もみをしていた店長は僕に気がついてオヤ? という表情をした。


「お嬢様……いつの間にお乗り換えになられまして? 」


「ちょっ! の、ののの乗り換えって!? 」


玲央奈は噴火山の如く顔を真っ赤にした。当然僕は意味が分からない。乗り換えって、ここの駅から僕の最寄駅は直通だからなぁ。どう言う意味かな……あ、ここに来る途中にタクシーだからそれで乗り換えだよねっ! 

 僕が一人考え事をしていると、玲央奈は店長に耳打ちをして何か話している。すると、店長は目を輝かせた。そして聞きなれない言葉を言う。すると、店員達も色めき立った。え? え? 僕だけ良く分からない!! 


「ちょ、ちょっと! 恥ずかしいから大声で言わないでよ!! 」


玲央奈は言葉の意味が分かっているのか赤面している。状況が分からない僕は、危険を察知し、慌てて店の外に行こうとしたのだが……


” はい……ちゃっかり捕縛されました…… ”


捕縛された僕は、店長を始め、他の店員全員にマジマジと観察をされる事に……何かどこかの研究所に連れて行かれたような雰囲気だよ。しばらく拷問のような観察を受けた後、玲央奈は店長にヒソヒソと耳打ちをまた始め、それに対して店長はとてもエロい顔をして喜んだ。そして、また聞きなれない言語を話すと店員達は黄色い声を上げた。どう見ても僕が得するような内容ではないと言うことはわかる。顔色が悪くなるのが自分でもわかった。脂汗がドッと出てくる。


「きゃあああああっ!! いやああああぁぁぁ!! 」


「ワォッ! ウタマロウタマロ~♪ 」


店員達は意味不明な歌声とともに僕の服を脱がす。そして、パンツ一枚になった僕を嬉しそうな目つきで皆が羽交い絞めにし、何をするのかと思うと、化粧品を取り出して、僕に何かサラサラと書き始めた。慌てる僕にジッとしなさいと真剣な顔で言われたので、静かにする。何か皆の表情が一気に真剣になり、雰囲気が張り詰める。正直、僕自身パンツ一丁でなければ、真剣な顔ができただろう……


「ねぇ、またウタマロって聞こえるんだけどどう言う意味ですの? 」

「……お気になさらないでください」


個室の外から玲央奈と店長の会話が聞こえる。うん、僕も気にしないことにするよ……嫌な予感しかしない。パンツ一丁の状態で何時間いたんだろうか。多分小一時間たったかもしれない。この羞恥プレイもそろそろ慣れてきた頃、店員達の表情が和らいだ。やっと終わったのかと安心する。が、今度は僕の貞操の危機が訪れようとしていた。また緩んだ羽交い絞めが始まる。声を上げる前に既にチョイスしていたのだろう服をあっという間に着せ替えた。


アレ? 男の服にしては色んなモノがあるような気がする。そう思っているとカーテンが開いた。店内の明るい光が僕に降り注ぐ。それと同時に驚く店長と紅茶の器に口をつけたまま固まる玲央奈がいた。


「え? え? ええ!? 」


若干紅茶を吹き出した玲央奈はその後信じられないものを見たような表情で声を上げた。こんな玲央奈は珍しい。店員達はドッキリ成功と言うように笑い声を上げた。僕も不意に笑顔になる。何だか良く分からないけど玲央奈を驚かせることができたらしい。僕も玲央奈のレア顔見れてちょっと嬉しかったんだけど……


「はいどうぞ」

「あ、はい……」


僕は店員さんから手鏡を渡された。そして僕の顔を見ると――


” そこには見たこともない超絶美少女がいた…… ”


うん、僕惚れそうになったね。僕自身じゃなかったら……ってぐらいに清楚な顔だったもので始末に負えなかった。ってえええええええ!! 今度は僕が大声を上げて驚いた。よく状況が理解できない。すると、全身鏡に僕を連れて行くと、とてもスタイリッシュな美少女が立っていた。僕の背が高いからどちらかというと少しモデルっぽい感じがする。でも、僕なんだよね……


「さて、行きましょうか」


玲央奈がニヤニヤ笑いながらそう言いだした。慌てる僕だが、抵抗むなしくそのまま店から追い出される。そして、公開処刑が始まった。



「エへへ~楽しかったね♪ 」

「……楽しく……ないよ……」


今公開処刑が終了した。そして、僕たちは喫茶キャッツアイにいる。玲央奈は相変わらずパフェか。僕の前にも何故かパフェがある。この店は女性にはパフェがつくのか? しばらく硬直していると、玲央奈は頬を赤く染めながら僕を見つめる。


「こんなに似合うとは思わなかったな。私惚れちゃいそう……」


濡れた瞳で見つめる玲央奈。正直気持ち悪……いや、正気の沙汰じゃない。僕はコーヒーを飲んで気分を落ち着ける。


そんな中、店の扉が開いた。中に入ったのは隼人はやと黎苑れおんさんだった。二人は僕たちに気がつくと会釈をして同じ席に座る。玲央奈の隣が黎苑さん、僕の隣が隼人だ。隼人は僕と玲央奈を見て意外そうな顔をして話した。


「アレ? こんな美少女と一緒なんて珍しいね。この子新しい子? 」

「あ、うん。この子新人さんでね。次のモデルを頼もうと思っているの」


へぇ、この子すごいんだな。素人でもモデルになれるんだ。


「ねぇ。そこの可愛い子ちゃん。名前何ていうの? 」

「え? ぼ、僕? 」


狼狽える僕、その姿に隼人は「へぇ、ボクっ娘ちゃんなんだ~」と普段では考えられないような気持ち悪い爽やか声を出す。取り敢えず全身に寒気が走る。玲央奈はニヤニヤしながら言う。


「この子は悠里ゆうりちゃんって言うのよ」

「へぇ~悠里ちゃんか、よろしくね」


そう言うと、僕が言う前にそっと手をとってニッコリと爽やかスマイル。……オエッッ


「あ、ああ、初対面で慣れ慣れしすぎたねごめん」


そう言うと、隼人は珍しく狼狽え、慌てて目の前のパフェを食べた。


「あ」

「あ」


僕と隼人は同時に声を上げた。……それは僕のパフェなんだが。隼人は顔を真っ赤にして僕を見つめる……オエッッ


「ご、ごめん。お、俺どうかしてたみたいだ。れ、黎苑……い、行こうか」

「お、おいっ! まだ俺何も……」


隼人と黎苑は早々に立ち去った。取り残されたのは僕と玲央奈。玲央奈は笑いを堪えている。体がガタガタ震えているのがよくわかる。不満一杯の僕の表情に気がついて大笑いをはじめる。


「アハハハハ! ごめんごめん! あんなに取り乱した隼人初めて見たよ。アイツあんたに惚れたね」


「……え!? 」


僕は凍りついた。その後、キャッツアイにいた記憶は曖昧で覚えていない。そのまま僕は家に帰った。

 うん、間違ってたね。化粧って落とさないといけないよね。そのまま帰宅したらさ、兄貴にバッタリ会ったんだよ。その後、兄貴に男の純情返せとクドクドと絞られました。僕悪くないんだが……


「チッ……最悪の気分だ……これやるよ。このクレンジングオイル使って化粧落とせ。その顔見たくねぇよ」


顔を真っ青にした兄貴はフラフラと家を出て行った。余程ショックだったんだな。スマン兄貴よっ! 

僕は兄貴に貰ったクレンジング剤で化粧を落として小説を書き、キリのいい所で床についた。


化粧の力って怖いな……


夢の中で、僕は化粧をした岩田光雄に襲われる夢を見たのだった……オエッッ!



~ 化粧の妙技 ~END


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