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※ 君と僕との出会いのキセキ 第二十七話 ~ 玲央奈の憂鬱 ~ ※

霧島祐也きりしまゆうや趣味は小説のWEB投稿。レオさんこと文月玲央奈ふづきれおなと出会い、彼の人生は変わった。GWが始まり、玲央奈は黎苑れおんの誘いの元、キャンプ場へ向かうことに。しかし、黎苑の車はキャンプ場に直接向かわなかった。向かった先は何と、先日三つ巴でバトルを展開した早坂姉妹だった。早速玲央奈の機嫌が悪くなる……

※ 君と僕との出会いのキセキ ~ 玲央奈の憂鬱 ~ ※



「玲央奈~GW予定あるのか? 」

「ん~特にないけど、無いからお母さんのお仕事手伝おうかなって思ってるぐらいかしら」

「そうか、じゃあさ、俺たちとキャンプに行かないか? 無論祐也も来るぞっ! 」


不意に兄の黎苑から話しかけられた。祐也も来るのか。ならいいかも……そう思った私は少し浅はかだったかもしれない。そう、祐也も来るけど、他の人も来るということぐらいは聞いておくべきだった。


「……で、お兄様……お知り合いの方もご一緒なんですね? 」

「あ、ああ……知り合いだったのか? 」

「ええ……先日お知り合いになりましたわ」


我が宿敵としてね。と言いたかったけど、そこは何とか我慢する。そう、急に兄の黎苑は友人を同乗させると言い出して、見覚えのある女の子を連れてきたのだ。


「……アンタか、よろしくね」

「よ、よそしく……お願いしまふっ! 」


同じ姿なのに対照的な姉妹だ。悠舞ゆまの事は前から知ってたけど、莉奈りなという輩は少し私と相性が悪いと思う。快活な分一言二言多そうだからだ。多分口喧嘩したら際限なく激化していくでしょうね。


「ええ、よろしくお願いいたします」


私はそう挨拶すると、彼女たちと同じ空間にしばらく一緒に居ないといけなくなった。それが更にイラつきをもたらしていく。


「キャンプ楽しみね~……アレがいなければ良かったけど」


「…………」


「ちょっちょっとお姉ちゃんっ! 」


莉奈は私を挑発してきて、それを慌てて悠舞が抑えるという感じだった。悠舞がいなかったら私はブチギレてるところね。アラ、少しはしたない言葉遣いね。気を付けないと。


「そ、そろそろ目的地だぞっ! 」


険悪な雰囲気に飲まれそうになりながらも黎苑は何とか話しかける。多分このセリフ祐也が言ったら「邪魔すんなっ! 」って一蹴されそうな雰囲気ね。まぁ私は迷わず言いそうだけど……

 黎苑がそう言ってしばらくすると、駐車場が見える。そして、車は徐行しつつ待合の駐車場に向かう。すると、窓の外から隼人はやとと祐也、そして見たこともない赤毛の女の子がいた。……また変な虫が付いたか、と私は歯噛みする。


「よっ、隼人、少し遅れたが来たぞ」

「お、黎苑すまんな」


二人は挨拶を交わしてご機嫌だ。私は何とか笑顔を作ろうとするものの、早坂姉妹、そして見たこともない” 虫 ”を目の当たりにしたため、やっぱり不機嫌顔になってしまう。少し祐也が不安そうに私を見ている。全員が集合したところで、私たちはキャンプに使うテントの資材をそれぞれ持って行く。そして、綺麗に刈り取られた広場に着くと、隼人が皆に話しかけた。


「よし、皆集まったな。じゃあまずはテントを作ろうか。その後は湖を散策して、夕飯の準備に取り掛かろう」


うまくまとめる人がいると結構楽だ。隼人はそう言う素質があるらしい。皆は返事をすると適当な場所を見つけてテントを作り出した。ウッ……祐也の隣取られたかっ!


「玲央奈、俺の隣はどうだ? 」

「全力でお断りしますっ! 」


黎苑は私の返答を聞いて肩をがっくり落とした。そして、ボソボソと何か呟きながらテントを作り出した。陰気な兄だよね。そう思っていると、何か祐也がものすごく不器用にテントを作っていて面白かった。祐也は悪戦苦闘していたが、私たちの視線に気がつくと口を尖らせた。


「な、何だよ……」

「下手くそ」


私の一言を皮切りに、他の女性陣からもヤジが飛ぶ。口をプクーッと膨らませて作ってる。ん~チョット可愛いかも……


「俺の分出来たから手伝うよ」

「あ、ありがとう」


隼人はもう既にテントができており、私を始め、他の子たちのテントも作っていた。兄弟でここまで段取りが違うのも……ねぇ。ま、ウチも同じようなものかな。と兄を見ると、まだブツブツ言いながらも作ってる。正直ウザかった。

 しばらくして、皆のテントが出来上がった。ん? 何か祐也のテントだけ祐也らしく頼りなく立っている気がする。そう言うところも結構好きになれた気がする。何だろう、今までなかったけど、こんな祐也を見ると愛おしく感じてしまうな。私がそう思う一方、他の皆は祐也のテントを見て笑っていた。隼人が手伝おうかと言うと頑なに断ってたっけ。隼人だけすごい苦笑いであのテントを見つめている。


「よし、じゃあ皆湖に着いたら散開しよう。自由時間だけど、離れすぎて迷子にならないように」


黎苑がそう言うと、隼人と二人でサッサとこの場を後にした。アイツ等の意図は分かる。私たちを笑いものにしようとしてるのね。そうはいかないんだから! 私は構わず祐也に話しかける。


「じゃ、じゃあ行きましょうか」「一人で行けば? 」


莉奈の言葉で私はピキッとこめかみに引きつりを感じる。完全に私を敵視しているのが分かる。ムカッとしていると莉奈は祐也の手を取ろうとする。慌てて動こうとするが、間に合わない。しかし――


” パアンッ ”


玲子が牽制の一発を莉奈にかました。ケッざまぁ! ハッ! ま、また口が悪くなっちゃった……テヘッ。

玲子の一撃で私は上機嫌になる。そのまま玲子は祐也の元に、チッ、コイツもそっち側か……


「キャッ! 」


祐也の手を握ろうと突き出した手は宙を掴み、そのまま倒れ伏した。私は見た。悠舞がさりげなく足を出して、玲子の足を引っ掛けた。こ、コイツ無関心を装ってる。予想外のダークホースか……私たちは祐也を囲むように円陣を組み、等間隔で牽制を開始した。祐也の顔色がみるみるうちに悪くなる。ん~祐也には申し訳ないけど、女のプライドがあるから引けないのよね。そのまま寿命縮んでも私は容赦しない!

 

 そろそろ三十分ぐらい牽制したぐらいだろうか、私たちは段々と目的と手段が入れ替わっていた。陣取りゲームの如く、相手の動きだけを見るようになり、祐也の姿がいなくなっていることに気がつくのはそれから数分後だった。


「「「「アッ! クソッ! 逃げられたっ! 」」」」


私たちは思わず同じセリフを発してしまった。……うん、今日の私はとても柄が悪いわね。慌てて私を含めた四人は散開し、祐也の行方を探す。皆が見当違いに炊事場へ向かったのを見計らい、私は湖に向かった。


私の予想通りアイツはいた。物憂げな顔で湖、木々を見つめている。この小説バカは小説の主人公、キャラクターがこの自然でどう動くのかとか考えてるんだろうなと分かった。でも、私も小説の中のアイツはどう動くんだろうと思い込んだ。そう思うととても楽しくなる。そうか、アイツはいつも周りの景色を見てこんな風に考え事してたんだな。いつもボーッとして気持ち悪い奴って思ってたけど。この気分味わったら私もボーッとしちゃいそうね。


「ちっ、違う違う! そういう事じゃなくて」


我に返った私は慌ててボーッとしながら離れていく祐也を追いかける。そして、祐也の小説であったように私は計算しつつさりげなく祐也の前に出た。祐也は驚いた表情で私を見つめる。ちょっとだけ、ドラマのワンシーンみたいで胸が” キュン ”となる。そして私は祐也に言った。


「祐也の思ってたこと当ててあげようか……。この自然を小説に例えたら、貴方の作ったキャラクターがどう動くのかなって思ってたでしょ」


そう言うと祐也は顔を赤くして俯く。チョッチョット可愛い……私まで恥ずかしくて赤くなっちゃいそう……


「うん。そう思ってた。何で分かったの? 」

「私もそう考えてたから」


そう言うと、祐也は私の目を見つめてきた。少し、潤んだような瞳。嬉しい思いが溢れそうなぐらいに素直な目が私を見つめてくる。すごく、すごく私の心が揺れ動いていく。するとお互い、自然に笑い合うことが出来た。この時間がとても貴重に思える。

私と祐也はのんびりと湖を見つめ、つがいのアヒルや大きな白鳥を見たりした。すごいゆったりとした心地いい時間、久しぶりに祐也とゆっくりできることが嬉しかった。ずっとここに来た事に残念な思いや後悔が渦巻いていたけど、それが一気に無くなった。ボートで漂っている時なんて、本当に二人だけの時間が顕著に感じられて、常時私と祐也は初な恋人の様に楽しく過ごせた。けれど……


「よし、炊事場に行くぞ」


例のごとく、隼人と黎苑はサッサと炊事場に向かった。今度は見る気はないようね。ん~私も少しお腹すいたし、早く作るかな。


「今日のカレーは私が作ります」「いいえ、私よ! 」「あたしが作ります! 」「えっ、えっとわ、私も……」


私の言葉を皮切りにまたバトルが始まる。どうしていつも私の思い通りにならないのよっ! 憤慨する私はバトルに没頭してしまい、また祐也は勝手に行動してしまった。お互いに祐也と笑いながら料理をすることを考えていた女性陣。祐也が戻った瞬間に溜まりに溜まっていた不満が破裂した。


「「「「このバカ! 何勝手に作ってんのよ! 」」」」


完全に皆ブチギレて言葉を発した。その勢いに祐也は涙目だった。ただでさえお腹が空いていた中、勝手な行動をした祐也に怒りをぶちまけていたけれども……


” グググウウウウゥゥゥゥッッッ…… ”


私たちはお互いにお腹が地を這うような音を発するのを聞いた。そう、隼人と黎苑が祐也の作ったカレーを食べ始め、一口ごとに「美味い美味い」という。そして、カレーの美味しそうな匂い。無理でしょ……思わず私たちはお互いを見るけど、目の前には祐也がポカーンと見つめている。” アイツに聞かれた ”という思いが羞恥を誘発し、思わず全員がカウンター気味に祐也に鉄拳制裁をしてしまった。


” 当然祐也は一言も発することなく、死んだように気を失った ”


お互いがヤバイという雰囲気になったが、ひと皿食べ終えた隼人と黎苑は冷静に祐也を彼のテントに放り込むと、カレーをまた食べだした。すると、女性陣は余程お腹が空いていたのか、がっつくようにカレーを食べだした。


「「「「お、美味しい……」」」」


噛み締めるようにカレーを味わったのだった。そして、気がついたら、カレーは綺麗はなくなっていました。全部私たちのお腹に収められて……ヤダ、太っちゃうじゃない! 

 祐也がいなくなった為、私たちは一時休戦という事で、炊事場でコーヒーを淹れて皆で談話した。お互いにどういう経緯で祐也と知り合ったのか話したのだった。ん~皆複雑な表情ね……まぁ、私が一番複雑なんだけど。

 しばらくして皆は就寝の時間になり、寝袋に入った。普段と違う不思議な空間に眠れず。祐也を心配していることもあり、テントを出て彼のテントに向かった。だけど、祐也は居なかった。よく見ると明かりがある方に祐也はいた。そして、何か見つめている。私は別の方向から光に向かった。少し窪地になっているところがあり、私はそこに潜んで覗き込む。すると、隼人と玲子という赤毛の少女だった。結構近いこともあり、彼らの話が聞こえる。


「ウーッどういう事よ。何で祐也にあんな沢山ライバルいるわけ? 」

「あ、イヤ……俺に言われても」


隼人は困惑している。まぁ困惑しないほうがおかしいかな。でも隼人が困ってる姿は久しぶりに見るかも。しばらく問答していると、玲子はため息をついた。そして気落ちした様相で隼人に話しかける。


「ねぇ、いつになったら祐也。私の事認めてくれるのかな? こんなに頑張って祐也の学校に来て、読者モデルも始めて、皆からも羨ましがられて……それでも足らないの? 」


「…………」


隼人は無言だ。無論私が隼人と同じ立場でも何も言えない。


「まるで私がバカみたいじゃない。まるっきりピエロじゃない。せっかく自信持てたのに。祐也を追い越したって思ったのに。何でアイツも格好良くなってるの? どうして私の心をかき乱すの? あんなに、あんなにアイツを好きな女が沢山いるのよ」


そう言うと、玲子は泣き出して、隼人に優しく抱擁されていた。その姿を見たとき、私は胸が締め付けられるような思いがした。よく事情が分からないけど、祐也に認められたかったってことか。だとしたら私、余計なことしたのかも。そう思っていると玲子はボソッと言った。


「祐也のこと好きなのは、私が一番最初なんだから。絶対に諦めない……」


その言葉を聞いて、私は玲子という子の事を少し理解した。プライドが高くて、努力家、そして、自分が思ったことを曲げない信念。まるで自分のようだ……と。


翌日、私達は前日と打って変わって、祐也に気を使うように皆で楽しく過ごした。おかげで祐也も気が楽になったようで素直に楽しんでくれた。楽しい時間はすぐに過ぎていった。そして、帰る時間になってしまう。帰る間際、私は、車に乗ろうとする玲子に話しかけた。


「玲子さん。ちょっといいかしら? 」

「……え、あ、はい……」


少し緊張した面持ちで玲子は私についてくる。私は玲子に言った。


「貴女、祐也のこと好きなんでしょ」

「え、え? ええええ! そ、そんなわけ無いでしょ! 」


彼女の取り乱し方がとても楽しかった。でも、盗み聞きしてしまったとは言え、彼女の本心を知っている私は少しだけ罪悪感を感じていた。だから戦いはフェアに行きたかった。


「大丈夫よ。分かってるから」

「…………」


玲子は顔を真っ赤にして俯く。そんな彼女に自分が祐也を磨き上げたことを告白する。そして、自分の思いを彼女に話した。すると、玲子は驚いていたけど、ニヤリと笑った。


「玲央奈さん。いえ、先輩。ありがとうございます。もっとあたし努力しないといけませんね……。先輩のような素敵な人がいたら、私心くじけちゃいそうだけど……」


” 新しい目標ができました。あたし、絶対に玲央奈先輩に負けませんから! ”


そう言うと、玲子は元気良く隼人の車に乗った。私も黎苑の車に乗る。帰りの間、色々考える。努力の権化としか思えない玲子。私もある程度努力してる自負があったけど。


「私もまだまだね。……私も諦めないんだからっ! 」


私も、玲子と同じく新しい目標ができたのだった。



~ 玲央奈の憂鬱 ~END


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