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※ 君と僕との出会いのキセキ 第二十六話 ~ GWの騒乱 ~ ※

霧島祐也きりしまゆうや趣味は小説のWEB投稿。レオさんこと文月玲央奈ふづきれおなと出会い、彼の人生は変わった。祐也の従兄妹の玲子れいことひと悶着あり、戸惑う祐也に兄隼人はやとはゴールデンウィークでの遠出によるキャンプに誘う。そして集まったメンツはなんと……


” 騒乱は出かける前から始まった ”

※ 君と僕との出会いのキセキ ~ GWの騒乱 ~ ※



「よっ” ひよこっ ”! 」

「だっ、誰が” ひよこ ”よ! 」


僕は見まごうことなき、ひよこの権化、赤髪の玲子れいこを見つけ、声を掛けた。学校が終わり、放課後のことである。そろそろ、皆は新学期に慣れ、グループも固まってきた。僕は……言うまでもなく、はじかれた子の部類だ。


「ひよこ……可愛いじゃん」

「…………もうひよこでいい……」


玲子は顔を赤くし、観念したかのように答えた。つい先日グーパンチしてきた輩の姿ではない。あまりのしつこさに観念したか……クププッ


「……ま、また笑ってる……」


玲子は力なく呟いた。若干ため息も出ているらしい。でもかつてのように突っかかることがなかった。ん~どうしたんだろう。


「もぅいい。あ、そうだ。アンタ聞いてる? 隼人GWに旅行行くらしいよ」

「へぇそうなんだ」

「え? アンタ誘われてないの? 」

「うん、そんなに興味ないしね」

「……そっか」


僕の反応に、玲子は寂しそうに呟いた。何でそんなに寂しそうなんだろ……不思議だね。


「じゃ、じゃあ私用事あるからさ……またね」

「あ、うんじゃあね」


玲子はそそくさと立ち去る。用事かぁ……でも態度がよそよそしかったのは気のせいかな。

 僕はまぁいいかと気にせず家に帰る。すると、玄関の前にはまた兄貴が立っている。若干ニヤニヤしているような気もする。


「よっお帰り~」

「あ、うん……なんか用? 」


僕がそう言うと隼人はおっ気がついたか。という表情をした。まぁ露骨だから分からないことはないんだけど。訝しげな顔をする僕を気にする風もなく、隼人は手っ取り早く話をした。


「GW暇なら、俺たちとキャンプに行かないか? 知り合いとか連れて行くぞ。黎苑れおん玲央奈れおなも来ることになってるんだ」

「へぇ。そう言えば玲子が兄貴達が旅行に行くって言ってたな」

「ほぅ……なら手っ取り早いな。じゃあ行くぞ」


隼人は僕の意向関係なしに参加決定と決めた。今週の土曜日、兄貴の要請で店のアルバイトはなかった。そのかわり、僕は隼人達のキャンプに行くこととなった。

人が結構多いかもということで、黎苑さんと隼人二人はバンを借りて資材とともに参加する人達を回収した。そして、目的地で全員集合ということだ。兄貴は事前に集めた資材と玲子、僕を運んで出発する。


というか、玲子お前も参加してたのか……


「な、何だ……あ、アンタも参加するんだ」

「……お前白々しいだろ。さすがの僕もわかるぞ」

「ど、どういう事よ! 」

「どうせお前電話で兄貴に頼んだんだろ? 」


「…………」


玲子は顔を真っ赤にして俯いた。というか、何で玲子は僕を誘ったんだろうね。そんな姿を隼人はニヤニヤしながら運転していた。

 小一時間ぐらい進むと、綺麗な森に着いた。キャンプする所はしっかりとした場所で、キャンプするところと、炊事場、湖では魚釣りをする場所など、結構大きな施設だった。ほぅ、アスレチック施設もあるのか。


「さて、着いたぞ~ん~いい空気だ」


運転で疲れた体を一気に深呼吸でスッキリさせる隼人。僕みたいに猫背でボーッとしてる姿と比べると、とても絵になる。

玲子はそんな隼人にお疲れ様。と言いつつ、水筒に入ったお茶を渡している。ほぅ、結構兄貴とは相性いいんだねぇ。


「……はい」


兄貴が飲み終えた後、玲子は無愛想に僕に水筒を渡した。ありがとうと僕が言うと、相変わらず顔を赤くしつつもフンッと鼻を鳴らして答えた。うん、やっぱりひよこだ。

 しばらく車の前で雑談していると、黎苑さんの運転する車が到着した。出てきたのは、黎苑さんと玲央奈、そして莉奈りなさんと悠舞ゆまちゃんの四人だった。

ん~皆女の子だね……。若干玲央奈が不機嫌モードのような気がするのは気のせいかな。


「よし、皆集まったな。じゃあまずはテントを作ろうか。その後は湖を散策して、夕飯の準備に取り掛かろう」


隼人の声に合わせて全員が答えている。そして、キャンプ場のテントを張る場所を決めると、皆たどたどしいながらテントを作り始める。け、結構難しいね。皆が四苦八苦している中、隼人だけは鼻歌を歌いながら順調に作っていく。その姿を見て、全員はポカーンと見ていた。


「おいおい、早くしないと時間が無くなるぞ」


隼人の声に皆我に返り、慌てて作業に移る。僕も焦りながらも作っていくけど、何かうまくいかない。そんな姿を玲子が何故かニヤニヤしながら見つめていた。というか、皆が見ていた。


「な、何だよ……」

「下手くそ」「うん、下手だね」「手際が悪い」


皆言いたい放題だ。多少むくれながらも僕は何とかテントを作る。横を見ると、兄貴はちょちょいと他の子達のテントを作ってる。ちゃっかりとした兄貴だよ……。


「よし、じゃあ皆湖に着いたら散開しよう。自由時間だけど、離れすぎて迷子にならないように」


黎苑さんはそう言うと、隼人と二人でサッサと湖に向かう。そして……


―― 僕と女性陣が残っていたけど、今までにないくらい緊張感に満ちていた ――


先に反応したのは玲央奈。


「じゃ、じゃあ行きましょうか」「一人で行けば? 」


莉奈さんがそう言う。それに合わせて玲央奈のこめかみに青筋が立つ。そして莉奈さんは僕の手を取ろうとして動くが……


” パアンッ ”


手を叩く音と共に、素早い動きで玲子が牽制をした。莉奈さんは驚いた表情で玲子を見つめる。そして玲子はさっと動くと僕に向かうが……


” ガッ ”


さりげない音と共に玲子は小さな悲鳴を上げて倒れ伏した。ん? 今のは誰かに足を引っ掛けられたような……この状況に一番無関心を装っているのは……悠舞ちゃんか……

僕は何故かこの緊張感に脂汗が出てきた。アレ、僕は実害ないはずなんだけど、精神的にダメージをけしかけられているような気がします。というか、怖い。

 そして、たっぷり三十分女性陣は静かな緊張とともに牽制をし合った。もう僕に目をくれない、彼女達だけの戦いだ。僕はこの恐怖の場所からさりげなく……さりげなく立ち去ったのだった。アッ! 草葉の陰で隼人と黎苑さんがニヤニヤ笑ってやがる。そのためにサッサと立ち去ったのかよ。僕は憤慨した。

 自由に気まま、僕は一人、湖を散策した。空気は綺麗で、湖も透明でとても良かった。木々も青々としていて、もう春なんだなと思った。

ふと、自分が書いている小説を思い出す。そして、あれこれ自然を見ていると、自分の小説の主人公、後他の登場人物たち、皆だったらどう動くのかなと想像を巡らせた。ん~何か色んなネタがこの自然にはあるようだ。結構いいかもしれない。

そう思っていると、僕の目の前には玲央奈がいた。彼女は柔かに僕を見つめて近づいてきた。


「祐也の思ってたこと当ててあげようか……。この自然を小説に例えたら、貴方の作ったキャラクターがどう動くのかなって思ってたでしょ」


玲央奈は僕の心を見透かすように言う。それがとても恥ずかしくて俯いてしまう。多分僕の顔はとても赤いと思う。


「うん。そう思ってた。何で分かったの? 」


僕がそう尋ねると、玲央奈はニッコリと笑って私もそう考えてたからと言った。玲央奈は僕の小説が本当に好きなんだなと思った。そう思うととても嬉しい。そして、それと同時に別の感情が僕の心を揺さぶる。……良く分からないけど、とても、とても心地が良い。自然と僕と玲央奈は笑いあった。

 僕と玲央奈はしばらく湖を見て、そして、貸しボートで湖を漂ったりなど思ったより楽しく過ごせた。そして、二人でキャンプ場に着くと、また殺伐とした世界が広がっていたのだった……。


「よし、炊事場に行くぞ」


例のごとく、隼人と黎苑はサッサと炊事場に向かった。そして、残った僕と女性陣。また牽制を始める。この雰囲気はエンドレスですか? 何かすごい疲れる……


「今日のカレーは私が作ります」「いいえ、私よ! 」「私が作ります! 」「えっ、えっとわ、私も……」 


口論から始まり、何故か僕の手を取ろうとすると叩いたり、足を引っ掛けたり、にらみ合う。どういうことだよ……。取り敢えず、また僕を置いて皆牽制に集中しだしたので彼女たちを置いてサッサと炊事場に行き、僕は手際よくカレーを作り出したのだった。


「「「「このバカ! 何勝手に作ってんのよ! 」」」」


女性陣がにらみ合っている中、出来上がったカレーを持って行くと開口一番僕は彼女達から非難の嵐を受けた。動揺する僕、机と椅子を用意した隼人と黎苑さんは僕から鍋を取り、夕食の準備に余念がない。女性陣全員から恐ろしいぐらいの殺気を受け、僕は涙目になる。腰を抜かしそうになった時、食事の準備が出来た二人はサッサと僕の作ったカレーを食べていた。


「おっ! これは美味い! 」


隼人と黎苑さんは食べるごとにそう呟く。適度な牽制と集中により、お腹が空いていただろう女性陣は漂うカレーの美味しそうな匂いに思わず――


” グググウウウウゥゥゥゥッッッ…… ”


地を這うような素晴らしい音が聞こえた。それに合わせて全員顔を真っ赤にしてお腹を抑え、お互いを見つめ合い、そして、僕を見る。その顔は全員羞恥に染まった顔で、以心伝心の握りこぶしからの鋭い鉄拳を、四方から僕に放つ。超いっ……

 

―― 僕は気を失った…… ――


どれくらい気を失っていただろうか。自分が作った頼りないテントの寝袋の中に僕はいた。起き上がると僕の大切なお顔がジンジンとしてて……超いてぇ! これ以上殴られたら僕の顔は段々歪んでいくぞ。整形に失敗したかのように歪んでいくはずだ。

少し痛みに涙目になりつつ、テントを抜け出す。辺りは静かだ。だけど、湖のほとりでは少しだけ明かりがある。誰かあそこで湖見てるのかなと思って近づく。すると、湖にいたのは隼人と玲子だった。思ったより真剣に話をしているようだ。玲子は悲しそうに何かを話し、隼人は慈愛に満ちた表情で聞いている。そして、しばらく話をしていると、玲子は涙を流し泣き出した。そして――


” 玲子は隼人の胸に顔を埋めて抱きついていた ”


隼人も優しく玲子の腰を抱き、彼女を抱擁している。その姿を見たとき、僕は、隼人と玲子の他人には見せてはいけない部分を覗き見してしまったような罪悪感を感じる。慌てて音を立てないようにテントに戻り、痛む顔とともに、出来るだけまぶたを閉じて僕は寝た。

 

 そして朝、腹の虫と共に目覚める。だけど、顔の痛みは引いていて気分が良かった。皆はまだ起きていないらしい。

炊事場に行って、水道で顔を洗う。冷たくて気持ちいい。炊事場の火を起こしてお湯を作り、手早くコーヒーを淹れる。ついでに一枚トーストを網で焼いてかぶりつく。折角カレー作ったのに僕は食べることが出来なかった。というか、鍋が綺麗に洗われて、何もない……夜ご飯食べれなかったからトースト一枚じゃ物足りないけど、ないよりましだった。

トーストをかじってコーヒーを飲み終えると、朝食を作り始める。皆が起き始めた頃、僕は机に朝食を用意していた。皆夜の騒動で僕に迷惑を掛けたことを謝り、改めて食事を始める。皆僕の作った朝食を美味しいと食べている。やっぱり作り手としては皆に美味しいと言ってもらえるのが幸せだ。


「さて、もうしばらくキャンプ場で自由行動したら帰るぞ」


隼人の言葉に皆は元気良く答える。さすがに自由行動とはいえ、皆は散開せず、全員で湖を歩いたり、ボートで競争など楽しく過ごした。初めからこうしてたら(主に僕が)酷いことになることなかったんじゃないかねぇ。

 殺伐とした雰囲気は全く時間が過ぎることはなく、まるで、ザ○ワールドの様な様相だったが、楽しい時間は直ぐに過ぎた。皆はにこやかに車に帰り、別れの挨拶をして、僕と隼人、玲子は同じ車に乗った。二人は昨日の夜のことはなかったかのように振舞っている。だけど、僕はあの姿が目に焼きついている。ふと思った。


” もしかしたら隼人と玲子は付き合ってる? ”


良く分からない。だけど、あの時の二人はただの従兄妹という関係じゃなかった。さすがに鈍い僕でもその雰囲気だけは感じられたのだった。



~ GWの騒乱 ~END

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