※ 君と僕との出会いのキセキ 第二十一話 ~ ホワイトデー ~ ※
霧島祐也趣味は小説のWEB投稿。レオさんこと文月玲央奈と出会い、彼の人生は変わった。大量のチョコレートをきたるホワイトデーでお返しするため、費用がない祐也はアルバイトを始めた。沢山の人達に助けてもらいながらも、徐々に祐也は小説以外の楽しみを見つけ出す。祐也はただ、がむしゃらに今の青春を謳歌する。
※ 君と僕との出会いのキセキ ~ ホワイトデー ~ ※
僕はいつものように登校をする。しかし、サンタのように大きな袋を持って……は、恥ずかしい……好奇の目線を受けつつ、僕は教室に入った。すると、周りの女子たちが一斉に僕に視線を向けた。チョッ……チョット皆の目がギラギラしているような気がするのは気のせい?
「ヨッ! モテ男! 」
皮肉としか思えないような満面の笑みで岩田光央が話しかけてきた。お前の笑顔がとてもイラつくのは何でだろうね。まぁそれよりもホームルームの前にやらないといけないよね。僕は女子たちの目線を気にしつつも勇気を出して、教壇にたった。
「あ、あの……皆さん、バレンタインの時には心のこもったチョコレートありがとうございます。まだ少し残ってるけど、大切に食べさせて貰っています。……とても美味しかったです」
僕は皆が見ている中、頭を下げた。あまりの低姿勢に皆キョトンとしている。そして、袋から兄貴の隼人が包んだ包を取り出して、皆に渡した。中にはお返しを貰うことなど考えてもいない子もいたようで、皆笑顔になっていた。やっぱり、皆のために頑張るのって楽しいかも……
配られたクッキーと飴は出来がとてもよく、皆驚いていた。口々に僕が作ったのかどうか聞いて来て、自分が作ったと伝えるとやはり驚いていた。
「クッキー美味しい……」「何この標本みたいな出来の飴……」「この飴も本格的ね」
食べている子達も皆大好評だった。とりあえず、女子だけじゃなくて男子の分も作っていたお人好しの僕は、岩田を皮切りに他の男子にも渡した。一部から変な目で見られたが、女子だけに渡してブーイングを受けるのだけは避けたかったんだよ。……分かってね。
ホームルームが終わり、いつもの授業、昼が過ぎ、放課後になる。この日は皆雰囲気が明るく、皆に手作りのお菓子をあげたことを自己満足だけど気分がよかった。玲央奈にも渡そうとしたんだけど、何か避けているみたいで、渡せなかった。僕が袋を開いたら皆で外出ちゃったんだよね。タイミング合わなかった。
この後、僕は学校を後にし、ホワイトデーの準備の時に、お世話になったバイト先のファミレスへと向かった。
「どうもですー」
僕が店の扉を開いて挨拶をすると、まだピーク前で人がまばらだった。直ぐに僕に気がついて来てくれたのが、早坂莉奈さんだった。
「あっ! やっと来たっ! 」
「え? 」
僕は莉奈さんのテンションの高さにチョット驚いた。直ぐに僕を従業員室に連れて行く。そして、部屋に行くと莉奈さんと僕の二人きり。な、何だかクッキーあげるだけなのに……な、何だか変に緊張してきたぞ……。
もたもたしつつも、彼女にお返しを渡す。すると、莉奈さんは「はぁ……」とため息をついた。不思議そうに思うと、莉奈さんはテンションを落としつつ、ロッカーをゴソゴソし始めた。すると兄の隼人が渡したと思われる物。僕が渡したものと同じ物が出てきた。
「……あ、兄貴の渡したやつ? 」
「……なんだけどさ……黎苑君も同じの渡してきたのよね……嬉しいんだけどさ……義理って分かっててもこんだけ来ると……ねぇ」
莉奈さんがとても落ち込んでいる。まぁ、期待してた結果が同じブツというのもやっぱり悲しいよね。しかも飴も全部同じ。テンション落ちる要素満載だ。とりあえず僕は袋から別の飴が入った袋を渡した。それを見ると莉奈さんは驚いていた。
「え? 他にも別の飴とかあるの? 」
「うん、こっちのレモン飴とかおすすめですよ。ちょっとだけハチミツ入れて美味しいんだ」
「ちょ、チョットほかの種類あるの? 見せてよ! 」
そう言うと、彼女は袋の中を覗き込んだ。何となく莉奈さんの目が輝いているのは気のせいだろうか。しばらく漁っていると、飴玉の違うやつを見ては喜んでいる。あれやこれや持っていこうとするが、流石に沢山持っていかれるとほかに渡す人たちに渡せなくなる。
「あ、そんなに持っていったらダメだよ! 他にもあげる人いるんだから」
「……ジーッ」
莉奈さんはそう言われると頬を膨らませて拗ねた。可愛いんだけど、甘い顔なんて出来るわけがない。あ、そう言えば……僕はひと袋取り出すと、莉奈さんに渡した。
「あ、あの妹の悠舞ちゃんにもあげてください。最近会ってないからちょっと寂しいねってお伝えください」
「……やだ」
まだ拗ねている。仕方ないと思った僕は作った飴の全種類を袋から出してまとめて莉奈さんに渡した。すると目を大きく見開いて僕を見つめる。ちょっと頬が赤い気がするけど……そんなに僕の飴欲しかったのかな?
「わ、分かったわよぅ……この飴お駄賃で悠舞にもあげるから……」
「あ、ありがとうございます」
やっと機嫌が治った莉奈さんと話をしているとピーク前の出勤に来たクルーの皆様。店長も休憩に入り、僕のクッキーと飴を皆にプレゼントしていく。皆コーヒーをおともに喜んでくれた。
「そろそろ皆ピーク対応だから帰ります。お疲れ様です」
僕は席を立つ。皆がにこやかな笑顔で挨拶を返してくれた。店を出ると、丁度莉奈先輩も仕事が終わっていたらしく、僕に話しかけてきた。何だかチョット莉奈さんの表情が緊張しているような気がする。
「あ、ちょ、チョット待って。一緒に帰ろう……」
快活な莉奈さんにしては少ししおらしい気がする。莉奈さんは僕から目をそらしつつも話をした。
「あ、あのさ。も、もうここに働きに来てくれないの……かな? 」
「いや、終わる時に言ったけど。人が足りない時とかさ、兄貴が頼んできたらやりますよ」
そう言うと、莉奈さんの顔が明らかにションボリとした感じになる。
「そっか……私じゃ、来てくれないのかな……」
「え? どしたの? 」
莉奈さんの独り言が小さくて聞き返すと「な、何でもない」と複雑な表情で返してきた。しばらく歩くと、駅が見えた。駅に入って、電車を待つとき、莉奈さんが言った。
「……じゃ、私反対だから、き、気が向いたらさ、隼人君の要請だけじゃなくてさ……たまには来てね」
「そうですね。気が向いたら……行きます」
「…………ブゥッ」
莉奈さんはニッコリと笑っているのに頬を膨らませるという珍顔をして立ち去った。彼女の名前は早坂莉奈。合コンの時に出会った早坂悠舞ちゃんのお姉さん。姿かたちよく似ている。でも、性格は正反対。ツインテールの彼女は彼女らしく、元気に家に帰っていったのだった。
「あ、しまった! 」
僕は莉奈さんが電車に乗った姿を見たあと、お返しを玲央奈に渡すのを忘れたのに気がつき、慌てて駅を出た。渡す人が多すぎて、玲央奈のことを忘れる僕は酷い奴だ。少し早足で僕は玲央奈邸に着いた。呼び鈴を鳴らして待つ。応答があるまでの時間が何故かとても長く感じる。しばらくすると玲央奈の声がした。
「……はい。文月です」
「あ、祐也です。渡したいものがあるから、玄関まで来ていいかな? 」
「……ど、どうぞ……」
やや遠慮がちに玲央奈は言った。まだ、やっぱり気にしてるのかな。あの時のこと。まぁ、まずは会わないことには何も始まらない。僕は玲央奈の家の広すぎる庭を歩いていく。相変わらずこの家は立派すぎる。そう思っていると玄関に着いた。ドアの横にある呼び鈴を再び鳴らすと、ゆっくり扉が開いた。ドアの隙間から不安そうな玲央奈の姿が見える。
「あ、ご、ごめんねこんな遅くに……」
「う、うん……」
玲央奈は伏し目がちに答える。そんな彼女に僕はクッキーと飴全種類が入った大きな包を見せた。
「はい、バレンタインデーのお返し。いつも、ありがと」
「え? えええええ!? 」
玲央奈は不安そうな顔から一気に顔を真っ赤にして驚いた。状況がよく分かっていないらしい。扉を一気に全開にして狼狽えていた。正直、結構可愛い……
「はい、どうぞ」
「あ、ああ、ありがと……」
僕が玲央奈の手のひらに包を渡すと、彼女は上目遣いで僕を見上げた。その姿がとても可愛くてドキッとする。しばらく二人で何故か見つめ合ってしまった。すると……
「何だよ玲央奈。全然アイツ嫌ってないじゃん」
「そうだそうだ~」「反対にもっと仲良くなってるし」
玲央奈の後ろから口々に野次が飛んできた。中を見ると、玲央奈の取り巻き達が家にいた。玲央奈は顔を更に赤くしてあたふたしている。不思議そうに見つめていると、優子という彼女の取り巻きの一人が話した。
「いやさ、いつまで待っても霧島が来ないからさ。玲央奈が嫌われたかもって泣きついてきて……」
「ワーワーワー!! 」
優子の言葉を遮るように喚く玲央奈、これはまた珍しい。そんな姿を肴に皆笑っている。その姿を見て僕はホッとした。しばらくすると笑い声が止む。玲央奈は唇を尖らせて僕を睨んでいる。な、何で僕が睨まれるんだろう……
「……とりあえず、皆仲直り出来たんだね。よかった」
僕がそう言うと、皆笑い顔から視線を落として、暗くなった。まるで、何か言いたいけど言いにくい。そんな風にも取れる。僕には良く分からない。だけど、皆にとっては結構重要なことなのかもしれないな。
「あ、あのさ、殴ってごめん……頭に血が上ってて、収まりがつかなかったんだ」
優子の言葉を皮切りに他の女の子達も謝ってきた。僕はそんなこと気にしてない。玲央奈と仲直りできたならそれでいいと言うと、彼女達はホッとした顔で僕を見つめていた。何だか彼女達の頬が少し赤い気もする。当の玲央奈はというと、僕から目をそらして、更に顔がまっかっかだった。
「あ、皆さ、ホームルームの前に教室出てたから渡せなかったんだけど、ホワイトデーのやつね」
そう言うと僕は彼女たちにひとつづつ渡す。すると、彼女たちは黄色い声を上げた。やっぱり教室であげた子たちと同じ反応だ。若干後ろから玲央奈ビームが見えた気がするけど、見ないようにする……しばらく彼女たちは喜んでいると、優子は僕の前に来た。あの時のようにものすごい剣幕じゃなくて、とても優しい笑顔だった。
「あ、あのさ霧島、正直あたしたちアンタからこんなものもらえた義理じゃないんだけど……」
そう言うと、彼女はフッと僕に顔を近づける。すると、頬に柔らかい感触を感じた。それと同時に玲央奈の悲鳴がこだます。
「ちょっちょっとおおおおおお!! 私もやったことないのにっ!! 」
「へへっ! やっちゃった! 」
玲央奈はすごい剣幕で僕の襟首を掴んだ。すごい睨んでる。そして、歯を食いしばった。殴られるのかと思って目を瞑ると。
” またまた頬に柔らかい感触がした ”
玲央奈の甘い香り、そして頬に柔らかい感触、流石に二度目になると状況が理解できた。多分僕も顔が恐ろしい程真っ赤に違いない……。ボーゼンとしていると、優子はケラケラと笑いながら一言言った。
「全く、けしかけないと玲央奈は何にもしないからな。あたしからのお返しだよ」
「ちょっ、アナタまさか全部それ分かってて!! 」
玲央奈は優子に突っかかる。そんな姿を更にボーッと見ていると、取り巻きの女の子達も何故か僕の頬にキスしてきた。その姿を見て玲央奈は更に激昂する。僕は完全に腰が抜けて尻餅をついている。
「あ、ああああ、アンタたち!! 」
怒る玲央奈に対して、彼女たちはニッコリ笑って答えた。
「「「私たちを裏切った仕返しだよっ! 」」」
「!! 」
玲央奈はそう言われると、顔を真っ赤にしたまま、歯を食いしばりグッと耐えた。でも目は僕を睨んでる。こ、怖い……
変な雰囲気のままだったけど、彼女たちが僕の頬にキスしたのは、今までいじめてたことに対しての謝罪だったらしい……。別に言葉で謝ってくれたら良かったんだけど、反対に玲央奈から嫌われたような気もする。だけど、僕たちの関係はこうして、秘密の関係から、一歩ずつ進んでいるように思われた。
ホワイトデーEND




