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※ 君と僕との出会いのキセキ 第二十話 ~ 初めてのアルバイト ~ ※

霧島祐也きりしまゆうや趣味は小説のWEB投稿。レオさんこと文月玲央奈ふづきれおなと出会い、彼の人生は変わった。バレンタインデーの当日、玲央奈は友達と仲違いをした。それは彼女が友人を今まで裏切り続けていた事に起因する。そんな中、祐也を犠牲にして彼女達は和解した。そして当の祐也はというと……


※ 君と僕との出会いのキセキ ~ 初めてのアルバイト ~ ※



「うーん……どうしよう……」


僕は悩んでいた。バレンタインが終わり、僕は痛む顔をさすりながら部屋に佇んでいる。そう、前日僕は玲央奈とその友達のいざこざに介入し、見事カウンターパンチをくらって意識を失っていた。そして起きたら、あら不思議。


” 屋上で一人気を失って倒れていた ”


そして、日は落ちて、学校の鍵はかかっていた。僕は岩田光雄いわたみつおにお前の部屋に泊まっていることにしてくれと、裏工作で電話をするも――


《お前、最近調子に乗ってるだろ》


「な、何でだよ! 」


《分かった分かった。じゃあ彼女に宜しくなっ! ……飽きたら譲ってくれっ》


「……そう言う事情じゃないから安心しろ」


完全に誤解されてる。岩田は


《へえぃへえぃ分かった。そういうことにしておいてやる》


と言うと、僕の裏工作を了解してくれた。そして、僕は学校で一夜を過ごした……なんとか、親に連絡をしたものの、ガタガタ震えながら夜を過ごし、僕は朝を迎えた。完全なる寝不足と不調である。そんな中、岩田からは散々茶化されるし。玲央奈は気にしてるものの、メールのみでの謝罪。あまりにも報われなかった僕。ちょっとぐらい拗ねてもいいよね?

 とまあ、そんな感じで少し玲央奈とは距離を置いてるんだけど、それ以外にこの目の前のチョコレート。今更ながら大袋に入れてさながら季節外れのサンタのように家に持って帰ったというわけ。んで、” ホワイトディ ”というのがあるため、それを考えて、作ろうとしていたんだけど。


「……材料費が……高い」


そう、この沢山のチョコレートを律儀に返そうとすると、クッキー作るだけでも費用がバカにならない。なので、悩んでいるというわけだ。今まで貰えなくて悩んでたけど、貰った方が色んな意味で悩むことがよく分かった。


「さて、どうやって材料費捻出しようかなぁ……。やっぱりバイトするしかないかな」


そう思っていると、扉がノックされた。反応すると、部屋に入ってきたのは兄の隼人はやとだった。用事を聞くと、僕と同じで大量のチョコのお返しで悩んでいるみたい。なので、僕たちは共同戦線を張った。


「よし、クッキーとかの製造は任せた。費用も半分出す。んで、お前も金必要だろ? だから俺のよくやってたバイト先を斡旋してやろう」

「え? 本当に? 」


僕は隼人の条件を受け入れ、早速バイトを始めたのだった。丁度土日だけで六日働ける。そこに平日二日分入れれば、一二日働けられる。そこに三時間、バイト代で八百五十円が学生で-五十円だとして、八百円。合計で三六時間の二万八千八百円となる。それに兄貴が半分出してくれるなら十分小遣いになるかな。



「じゃあ日程は一ヶ月で、この日にちに出勤してくださいね」

「はい、ありがとうございます」


僕は面接そっちのけでシフト表の帳尻合わせの面会をした。面接自体は兄貴の名前を出しただけで免除となった。どれだけ顔がきくんだよ。僕はビクつきながらも店長さん(女性)の方と日程調整をした。仕事は明日からになる。ドキドキしながらも僕のバイトは始まった。


「あ、今日から働く霧島……祐也くんだっけ? よろしくね」

「あ、はい。えっと、莉奈りなさんですか? よろしくお願いいたします」


僕は彼女の名札を見た。多分名前だけの表記だと思うけど。さすがに莉奈って苗字はないよね。そう思っていると彼女はニコリと笑って自己紹介をしてくれた。


「うん。私は莉奈。早坂莉奈だよん~よろしくね」

「あ、はい。……ハヤサカ? 」


僕はどこかで聞き覚えのある苗字に詰まった。何となく、彼女は誰かに似ている気がする。すると、彼女は含みのある笑顔をした。


「あ、祐也君高校一年だっけ。私も妹がいてね。同じ学年だよ。早坂悠舞はやさかゆまって言うんだ。どこかで会ってるかもね」

「え? 早坂悠舞さんのお姉さん!? 」


ここで意外な人物と出会った。彼女と話をするとやっぱり、あの時合コンで出会った彼女の姉だった。彼女も何故か僕の小説を知っており、彼女が悠舞ちゃんに教えたそうだ。これからは早坂さんだと混乱するので名前で言うと、莉奈さんは僕の兄貴、隼人と同級生で、なんと玲央奈の兄の黎苑れおんさんとも知り合いなんだそうだ。サークルも同じらしい。聞けば聞くほど世間は狭い。


「……と言う訳で、厨房はこんな感じね。出来たら接客と厨房両方できてくれると、う・れ・し・い・な」


莉奈さんはウインクするとニカッと笑った。悠舞ちゃんは控えめな娘だったけど、莉奈さんは見た目似てるけど快活な感じがする。今、僕はとあるファミレスのバイトをしている。今日は教育期間として勉強中。注文を受けたとき、機械で読み取って厨房に送るという作業と、机の配膳と後片付け、ふき出し、後は整理整頓など。覚えることは沢山ある。でも、楽しかった。


「こんな感じですか? 」

「そうそう、祐也君すぐ覚えてくれるからお姉さん楽チンだな」


僕は莉奈さんの言うことをメモし、素直に反復していく。今はピークじゃないので、仕事を覚えるのにはうってつけだ。そうしていると、人生初の夕食ピークが来たのだった。


「はい、お疲れ様! 」

「は、はぁい……」


僕は休憩室でソファーにもたれかかっている。ピークは大変だよと莉奈さんに言われていたけど。……本当に戦場みたいだった。キツイ。そんな中、クルーの皆さんは平然と笑ったり談笑している。僕の仕事が終わってもまだ閉店じゃないから、まだ仕事をしている人たちもいる。グデェ~としていると、莉奈さんが僕にジューサーからのコーヒーをくれた。


「一日一回、ここのジューサーで飲み物飲めるから。好きなの飲んでいいよ。今日は私がコーヒーにしちゃったけど。大丈夫? 」

「あ、はい。ありがとうございます」


僕は深々と頭を下げてコーヒーを頂く。ミルクのマイルドさと砂糖のほんのり甘い感じが疲れた体に潤いを与える。美味しい。ボーッとしていると莉奈さんが満面の笑みで僕に話しかけた。


「あのさ、ここの仕事祐也君はなんで始めたの? もしかして彼女にプレゼント? 」

「ブッ! ち、違います! まず僕は彼女いませんよ! 」

「え!? 嘘……信じらんない! 」


僕の反応に狼狽えた莉奈さん。そこまで驚かなくても……


「だってさ、隼人君みたいに格好いいじゃん。何で彼女いないんだろうね? 不思議だな」

「……いないものはいないんです……」


莉奈さんは” ん~ ”と唸っていると。質問を初めに戻した。僕は素直に理由を述べると、更に驚いた。


「り……律儀ねぇ。そんな勝手に贈られてきたものなら、返さなくてもいいんじゃない? むしろ受け取らなくてもいいんじゃ」

「う、うん。でも断りきれなくて……」

「……兄貴の爪の垢煎じて飲んだらいいんじゃないかな……」

「え? 」


莉奈さんの呟きを聞き取れなかった僕は反応するが、苦笑いをして「いや、何でもないよ」と言った。不思議そうにしていると莉奈さんはニヘッと笑って板チョコをひと切れ僕に渡した。


「あ、ありがとうございます」

「うん、私にもお返し頂戴っ! 」


この人もかなり強引な人のようだった。

 その日から、僕は莉奈さんだけじゃなくて、周りの人から色々話を聞きながら仕事を覚えていく。学校の授業を受けて、バイトして、小説を書く。それに合わせて動くと暇な時間がなく、必然的に玲央奈と話をする機会が減ってきた。というか、僕はもう怒ってもいなかったけど、玲央奈自身が遠慮をしているようで、僕は僕で、目の前のことで精一杯だった。そして、バイトの最終日、結構仕事覚えたんだけど、予定があるので一時休業ということで終わった。


「お疲れ様。これバイト代ね。少しだけ色を付けてあげたわよ。私のポケットだけどね」


店長様からありがたいお言葉を頂きました。そして、僕が抜けた穴は隼人が戻って埋めるそうだ。丁度隼人も一ヶ月レポート提出で抜けないといけないこともあり、利害の一致というのが店との間であったらしい。僕は一つも二つも兄貴に利用されたってわけだ。でも、こっちも助かったからいいけどね。


「あ~祐也君いなくなっちゃうの? お姉さん寂しいんだけど……」


莉奈さんが拗ねたような顔で僕を見る。その姿がとても可愛い。顔が熱くなるけど、予定があるからそうそうここには行けない。


「莉奈さん。今までありがとうございました。また人が足らなかったらちょくちょくこさせていただきます。後、チョコレートのお返し渡しますから。またです」

「! う、うん期待してるっ! 」


莉奈さんはちょっと顔を赤くして頷いた。他の女の子達はナニナニ? という感じで詰め寄ってくる。その姿を莉奈さんは得意げに話をする。そうして――


” 何故か他のクルーの方々にもクッキーをプレゼントすることとなった ”


アレ……段々注文がかさんでいる気がするけど。まぁ、いいか。僕本来の適当な性格が適当な状態を招いてしまった。


「あ、黎苑もさ、クッキー欲しいんだってー」



「……え? 」


隼人が軽く安請け合いしたことにより、僕は残りの時間全部を費やしてクッキー制作をすることとなった。ちょっと趣向を凝らして前日にクッキー以外のものを作っていたりする。それを見て隼人は半ば呆れていた。


「……お前さ、この情熱をもっとお洒落に使えば、女の子にモテるんじゃね? 」

「え? 今それどころじゃないでしょ。兄貴も手伝ってよ! 」

「へぇいへぇい」


僕はクッキー以外にも飴を作っていた。キャンディーはさすがにキツいので軽く水飴と果物、あとは着色するためのアイテムなどを買い込んだ。果物をジャムのように煮詰めて、更にペースト状にして、水飴と混ぜて、着色料を混ぜ込む。そして、様々な色を作って、それに合わせて潰した果物に合わせて飴玉としてまたその果物に作り直した。ほとんど職人の様なこだわりで、パッと見がメニューサンプルの様な出来だった。


「スゲェな……にぃちゃんお前の旦那になるから、俺の嫁になって毎日旨い料理を作ってくれよっ! 」



「兄貴……気持ち悪いことを言わずに手伝ってよっ! 」

「へぇいへぇい」


気色の悪いことを言う兄貴を半ば無視しつつ僕は製造作業に没頭したのだった。そして、僕は出来上がったクッキーを冷ましたり、またオーブンに入れたりの繰り返し。兄貴は自分で買ったプレゼント用の包装袋を使って、クッキーと果物の形に作り直された飴玉を詰めていった。可愛い赤いリボンで包んでいる。さながらどこかの洋菓子店の様な出来栄えだ。しばらくすると、黎苑さんが家に来て、手伝ってくれた。黎苑さんはこの作品に驚きつつも、作業を終えると、少し多めに隼人と共に、僕に材料費を渡してくれた。


「はぁ……疲れた」


最近のハードワークと飴玉、クッキー製造に力を使い果たした僕は、しばらくリビングのソファーに倒れこみ、隼人が入れてくれた包が沢山入った袋を見つめた。


「何か、この一ヶ月とても忙しかったけど……ちょっと楽しかったな」


明日はホワイトデー。慌ただしく走り続けた僕の一ヶ月。小説を書き続ける毎日とはまた違って、とても充実した日々を感じていた。



初めてのアルバイトEND

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