※ 君と僕との出会いのキセキ 第十九話 ~ 裏切りと贖罪の狭間で ~ ※
霧島祐也趣味は小説のWEB投稿。レオさんこと文月玲央奈と出会い、彼の人生は変わった。バレンタインデーの当日、玲央奈は友達と仲違いをした。彼女は今まで友人達を裏切り続けていた。それと同時に祐也に対する贖罪の気持ち。両方の板挟みになってしまう。そして……
※ 君と僕との出会いのキセキ ~ 裏切りと贖罪の狭間で ~ ※
「……とうとうバレちゃった……」
私は目に涙をためながら呟いた。祐也とは学校で関わらないことにした。それにより、いつも周りにいた彼女達には何事もなく静かに時が流れていたはずだった。それが、祐也が予想以上に見た目が良くなってしまった。それにより、今まで自分がしてきた努力は” ふたりの関係の露見 ”という最悪の形で友達に伝わってしまった。自分の頬を撫でると鈍い痛みが走った。
「イッツ……」
鏡でみると薄っすらと痣ができている。自分を庇った祐也を守るように自分も覆いかぶさると彼女達の蹴りが偶然自分の頬に当たったのだった。彼女達はその場の怒りでこぶしを振るっており、それが大惨事になるとは思ってもいなかったのだろう。二人が傷ついた姿を見て、彼女達は居たたまれなくなり慌てる様にその場を立ち去っていった。
「皆……私のこと裏切り者って言ってたな……」
確かに私は裏切っている。もう関わらないようにしようと自分で周りに提案した癖に、隠れて祐也と関わっていた。秘密にできるならいつまでもしていようと、浅はかな自分はそう思い続けていた。その報いか……。一人で考えてもどうしようもない。そう考えた私は祐也にチャットをした。
『あ、どうしたの? 』
祐也は直ぐにチャットに出てくれた。それがすごく嬉しい。自分は一人じゃないと、そう思えるから。祐也に早速自分が今置かれている状況を伝える。さすがに恥ずかしかったけど、祐也以外に頼れる人がいない。その中で言葉を選びながらチャットをしていく。
まずは、自分が彼女たちに祐也には二度と関わらないと約束させていたこと。そして、その約束をしていた中、自分だけが祐也と関わり続けていたこと。祐也が変身した姿で彼女たちがアプローチをしようとしてきたため、注意をしたら結局自分と祐也の関係がバレてしまったということを伝えた。
祐也はしばらく静かになっていたけど、自分の思ったことを素直に書いてきた。
『そうだね。友達に隠し事をしていたというのは、やっぱり裏切られたって思うんじゃないかな……僕は良く分からないけど。でも、僕だったら素直に謝って皆に自分が思っていたことを全部洗いざらい話すと思う』
『あ、洗いざらい? 』
『うん、誠意を見せるには、隠したままじゃダメだと思うんだ。だからさ、一度腹を割って話すべきだと思う。玲央奈の真摯な態度が分かったら彼女たちもきっと分かってくれるよ』
確かにそう思う。でも、また皆の前に出るのが怖い……皆鬼の形相で私を見ていた。どうしてこうなったんだろう……確か、皆とよくつるんでて、皆が決定権を私に譲っていた。そのせいか、私があのグループのリーダーになっていた。それが当たり前になっていた。でも皆は初めは遠慮していただけだったのね。それが当たり前になっていたのは、私だけか……
『でも、ちょっと怖い……』
『そう、だよね。僕も怖いよ。だけど、君にとったらかけがえの無い友達なんだろ? 』
かけがえの無い友達……本当にそうなのかな? そう思っちゃう。だってあんなに敵意を向けて怒ってきたから。しばらくチャットを止めていた私、その時祐也はまた書き込みをしてきた。
『怖いなら一人ずつ会って行ったらどう? 』
『うん……そうしてみる』
そう言ったが、やはり怖かった。
その後、チャット中に、黎苑が私の部屋に勝手に入ってきた。慌てて顔を隠しながら何とか撃退したのだった。
日曜日、私は友人四人の家に行った。すると全員何で来たの? みたいな態度で接してきた。どんなに話しかけようとしても彼女達は聞いてくれない。やっぱり私が裏切っていたというのが大きいみたい。落ち込んで家に帰る。その時、門の前にアイツがいた。少しソワソワしながら。私に会いに来てくれたのだろう。とても嬉しかった。
「ゆ、祐也。 どうしたのこんなところで……」
分かっているのに言っちゃった。でも、祐也はニッコリと笑うと手を振った。
「ちょっとね。心配になったんだ。後、これ……僕が作ったクッキー食べて」
祐也が満面の笑みで私を迎えてくれる。涙が出そうになるのを堪える。頑張って祐也を家に迎え入れて、自分の部屋に待機させた。「ちょっと時間かかるから」と私は言った後、化粧室で泣いた。祐也の心遣いが身に染みる。私はこんなに優しい人をずっといじめていた。そう思えば思うほど涙が止まらない。友人を裏切った思いと、祐也への贖罪の気持ち、両方の板挟みになっている。
しばらくして私は気が落ち着いた。そして、慌てて目薬をして、化粧をして誤魔化す。
急いで、私は祐也が持ってきてくれたクッキーと共にお茶を入れて自分の部屋に戻った。
「ごめん、遅くなっちゃったね……」
「うん、いいよ。気にしない」
彼の一言それがとても嬉しい。いつからだろう、祐也のことをかけがえの無い人に思えてきたのは。無意識に頬が赤くなる。祐也は相変わらずニコニコしている。その顔が私の暗い気持ちを晴らしてくれる。
「どう? このクッキー」
「うん、とても美味しい。これって祐也が焼いたの? 」
「うん、僕はこういうの得意だからさ。一度玲央奈に食べてもらいたかったんだ。あ……まだホワイトデーでも何でもないのに作っちゃったね」
祐也はしまったという顔をして笑っている。だけど、私には分かった。祐也はワザと私を笑わせようとしてくれている事に。
「あ、あの……ね。私、今日皆の所に行ったんだけど。門前払い食っちゃった……」
「そっか……」
祐也は優しい笑顔で私を見てくれる。すると、私の視界は段々とボヤけてきた。何でだろうと思っていると、大粒の涙がこぼれていた。
「も、もう……私た……ち終わ……りなの……かな……や、やだよ」
「うん、そうだね」
泣き出した私にハンカチを差し出す。そのハンカチを使って涙を吹く。その時、祐也は優しく私を抱きしめてくれた。とても暖かい。
「絶対に玲央奈の話聞かせてやろう。じゃないと玲央奈が悪者になるからね」
「違う、違うわ……私は悪者よ。全部全部私が悪いの! 」
私は泣きじゃくって、祐也の胸の中で騒いだ。そんな中、祐也は少し私を強く抱きしめて言った。
” そんなことはないよ。僕は玲央奈に救われたんだからさ、そんな玲央奈は悪者じゃないよ ”
私はもう、何も考えられなかった。何でこの人はこんなに私に優しいのだろう。私はもう祐也にすがるしかなかった。
「私、どうしたらいいの? 」
「うん。とにかく、言葉を整理して、素直な気持ちを言ってごらん。今度は皆集めて、皆集まって玲央奈の友達だろ? 」
「……うん……頑張る……」
祐也の気遣いを受けて私は元気になれた。
次の日、月曜日、私は改めて皆を呼んで屋上へと向かった。皆はふてくされた様な、面倒臭い様な顔をして突っ立っている。しつこいんだよと言いたげでもある。そんな中、私は皆の前で改めて話をする。
「皆来てくれてありがとう……」
「もーいいだろ? 裏切り者と話すことはないからさ」
「ちょっと待って! 」
私は立ち去ろうとする皆を呼び止めた。だけど皆無視して立ち去ろうとする。私はショックで膝立ちになってしまい、右手で虚空を掴むだけだった。その時――
「皆、話を聞いてやってくれ」
扉に控えていたと思われる祐也が、皆の前に出た。
「何だ? ヒョロイ奴のくせにあたしらの前に出んな! 」
「玲央奈の話を聞いてやってくれ。話を聞くまで俺はここから立ち去らない」
そう言うと祐也は扉の前に立つ。彼女達はそんな祐也を取り囲む。
「折角可愛くなったのにまた怪我したいのか? 」
「ああ、玲央奈のためだそれぐらい大丈夫だ」
大丈夫じゃない……私は泣きそうになる。既に彼女達は祐也を殴ろうとしている。彼女達の拳が祐也に当たり、扉に吹っ飛んだ。その瞬間、私は大声を上げた。
「やめて! 祐也にこれ以上手を出さないで! 」
その言葉で皆動きが止まる。それと同時に私の心の” タガ ”が外れた。
「私は皆に黙っていたわよ! 裏切ってた。だけど私は祐也を自分のものにするためにやってたんじゃない! 私は、祐也の小説が好きで、だから小説と同じように祐也を好きになろうとしたの! 」
皆黙って私の話を聞いている。私も今思いの丈を皆に伝える。
「でも、祐也はダメなのよ! 適当で、地味で、馬鹿で……どうしようもなくいい加減で……」
” でもとても優しいの!! だから私は祐也を好きになれた。今でも祐也をいじめてたこと、私はずっと悩んでるんだから!! ”
ハァハァと息遣いが聞こえる。私の息切れした声。それと同時に皆は押し黙った。皆もやっぱり祐也をいじめていたことを悔やんでいるようだ。その時、友人の一人、優子が聞いてきた。
「……あの、祐也の姿。アンタが仕上げたの? 」
「 うん、いい加減なアイツを私が磨き上げたの」
「そっか……スゲェなやっぱり」
そう言うと、彼女達は私に近寄って座った。皆ニコニコしてる。
「ごめんな。あたしたちずっと裏切られてるって思ってさ、疑心暗鬼になってたんだよ」
「……ごめんなさい」
「いいって、それよりあの時顔蹴っちゃったな……こっちこそごめん」
私たちは互いにごめんと言い合うと、笑い出した。久し振りに気分が晴れた気がする。そして、私たちはいつものように一緒に帰った。家の門に着いた時に何か忘れているような気がしたが、よく分からず部屋に戻った。そして、PCを起動してチャットを見たときにやっと気がついた。
「あ……ああああ!! 祐也っ祐也!! 」
殴られて吹っ飛んだ祐也は、チャットにログインすらしていなかった。あのまま気を失っていたんだろうな……ううう……ごめん。
メールで謝罪をしておいたが、祐也はしばらくふてくされて私の話を聞いてくれなかった……さすがに……ごめんなさい。
裏切りと贖罪の狭間でEND




