※ 君と僕との出会いのキセキ 第十五話 ~ 大晦日と元旦初め ~ ※
霧島祐也趣味は小説のWEB投稿。レオさんこと文月玲央奈と出会い、彼の人生は変わった。約束を破った祐也は改めて玲央奈の家に行き、彼女と対面、仲直りをした……はずだったのだが、それ以降の記憶がなく、祐也は彼女との距離を測りかねていた。そんな中、彼らは悶々としながらも大晦日出会うことになるのだった。
※ 君と僕との出会いのキセキ ~ 大晦日と元旦初め ~ ※
大晦日当日、僕は出かける準備をしていた。ん~どんな服装がいいんだろう。どうせ僕は隼人と黎苑さんの間にいるパセリみたいなものだからどうでもいいか。そのままいつもの服装を決め込む。すると、兄貴がドアをノックした。
「おい、祐也、そろそろ行くぞ~……って、なんて格好してるんだよ」
「え? こんなものでいいんじゃないか? 」
「バカ、お前はそうだからいつも女に相手にされないんだ」
頭だけ出していた隼人は扉を開けた。すると、彼の全身が出てきた。彼の服装は普段着ではなく、羽織袴だった。見るからに隼人に似合う服装だった。隼人は大急ぎで僕の袴を探すと、取り出して、僕の服を脱がしにかかる。
「わ、わわっ! ちょっ、ちょっと待てよ! じ、自分でやる。やるって! 」
「お前はこれの着付けの仕方知ってるのか? 」
「…………」
僕は黙った。だが言ったからにはやるしかない。
「ひ、ひとりでできるもんっ! 」
「…………」
珍しい僕のツンデレを見て隼人は口笛を吹いた。じゃあできるものならやってみろという目をしている。慌てて僕は服を兄貴の姿を見ながら着付ける。その姿を苦笑いしながら隼人は見つめていた。
「え、えいっクソッ」
何とか着付けた僕は胸を張って見せつける。しかし、隼人はため息をついていた。そして指を指す。隼人が指をさしたところを見ると丁度襟が交差しているところだ。隼人の交差しているところを見ると……
「あ……反対だ……」
僕は顔が赤くなった。その姿をニヤニヤしながら隼人は見ている。
「しょうがねぇな~少しそのままでいろ」
そう言うと、隼人は手早く僕の服を直した。こういうところは僕と違ってとても器用だ。少し隼人の手玉に取られた感じがして、ふてくされながらも僕は素直に従った。
「よし、準備は出来た。寒くないように羽織していけよ」
隼人の言うように羽織を付けて、僕は黎苑が待つ車に行った。車の前には黎苑が立っており、隼人は助手席に、僕は後部座席に押し込まれた。座席に座ると、人の気配があり、振り向くと、目の前に――
” 玲央奈が艶やかな振袖姿で座っていた ”
僕と玲央奈はお互いに固まった。玲央奈は僕の意外な姿に、僕は、玲央奈のとても綺麗な姿に驚いていた。その姿を二人の兄はニヤニヤと見ていた。
「あ、こ、こんばんわ……」
「あ……うん……こん……ばんわ……」
僕の言葉に玲央奈が反応する形になったが、どことなくよそよそしかった。僕は良くない雰囲気に彼女の緊張が伝わった。僕も何故かガチガチになってしまう。兄貴達は分かっているようで、クスクス笑っていた。
僕たちは、近くの大きな寺に行った。大晦日らしく、寺の入口には夜店が沢山あり、多くの人で賑わっていた。僕たちはまず寺の境内に向かった。境内では、ふた組でお願いをしているようで、兄貴達が鈴を鳴らす。手をパンパンと叩くと、何か願い事をしている。願い事が終わると、お互いに顔を見て笑っていた。はて、何だろう……
「あ、次は僕たちか……」
「あ……! 」
僕と玲央奈はふた組、鈴を鳴らすらしい。玲央奈と僕は鈴のあるしめ縄を掴んだ。その時にお互いの手が触れ合う。
「「ア……」」
不意に、手が離れそうになるが、強引に玲央奈は僕の手を掴んで強引に振り回した。その時の玲央奈は顔が赤かった。そして、すぐに手を離すと、何か必死にお願い事をしてるようにも見える。僕は願った。
” 来年は僕と家族、そして玲央奈、みんなが元気で暮らせますように…… ”
ふと、横を見ると、玲央奈と目が合う、すると彼女は驚くような目をして、顔を背ける。アレ、僕の顔に何かあったのかな……?
「さ、さあ行くわよっ! 本当にもうグズなんだからっ! 」
そう言うと、玲央奈は僕の手を握って列から離れた。彼女はどんなお願い事をしたんだろうね。
「玲央奈、お前って意外と行動派なんだな」
「え……!! ちょっアンタ何で私の手を握ってんのよっ! 」
隼人が興味津々に話しかけると、玲央奈は自分が握っていた手を振り払い、顔を真っ赤にして声を荒げた。え……いや、玲央奈が勝手に握ってきたんだけど……
「まぁ、そういうことにしてやろうか」
隼人は玲央奈を挑発するように” フフン ”と鼻で笑った。それに噛み付く玲央奈、二人の相性は悪いようだ。
「いつも兄貴と玲央奈ってあんな感じなんですか? 」
「う、うむ……俺は怖くてできんがな……」
若干ハラハラした顔で黎苑さんは頷く。彼は苦労性なのかもしれない。しばらく、ぎゃあぎゃあ言いながら四人は夜店を歩き、年越しそばを食べた。すると時間ももうすぐ〇時を示す。隼人の声で、皆寺の裏側にある山へと向かった。除夜の鐘が鳴り響く中、僕たちはその時間を待つ。そして、その時は訪れた。
” あけおめ~ことよろ~ ”
四人は声をハモらせながら声を上げた。すると、その声に合わせて、境内、そして寺付近にいる人が触発されたのか、一斉に声を上げた。
”” あけおめ~~ことよろ~~ ””
何か良く分からないけど、皆の心がひとつになり、今年はいい年になりそうな気がした。除夜の鐘は鳴り響く。その音は、煩悩を晴らしていくと同時に、新しい世界の幕開けのようにも思われた。
「ふぅ……スッキリした」
玲央奈はそう言うと、盛り上げた栗色の髪を風に揺らしながら、ホゥッとため息をつく。外は寒い、彼女の息が白かった。その時、僕は、改めて思った。
” 彼女は、とても、とても綺麗で、素敵だった ”
見とれていると、玲央奈は僕の視線に気がついて、顔を背ける。まだ僕たちは関係がギクシャクしてるみたい。若干兄貴達はため息をついていた。おもむろに黎苑さんは玲央奈に耳打ちをすると、玲央奈は顔を赤くした。隼人は僕にちょっと先に寺の境内にいるからお前はここにしばらく居ろと言い残し、黎苑さんと共に降りていった。僕たちは二人、とても静かだ。下では夜店やらなんやらでまだ所々行灯の明かりが見える。
「あ、ああ……さ、寒いわね……」
「え? う……うん」
玲央奈が急に話しかけて僕は狼狽える。しばらく、無言の世界。玲央奈は顔をしたに向けていたが、意を決したように言った。
「あ、あの、ありがとう」
「え? な、何? 」
僕は分からずに言い返す。すると、玲央奈は玲央奈らしくなく、モジモジしながらこちらを上目遣いで見つめる。す、すごく可愛い……
「か、看病……」
「あ、アレ……か。いいよ、僕が悪いんだから……」
「ううんありがとう。それと、誕生日プレゼントも……ね」
そう言うと、彼女はパワーストーンのブレスレットを見せた。グリーン色の鮮やかな爽やかさが、彼女の振袖にマッチしていた。さすが、彼女のセンスはいい。
「今年は、風邪なんか引かないから。祐也も、体に気をつけてね」
「あ、うん。ありがとう」
ふと気にかかったことがあるんだが……アレ? 自然に名前呼ばれている気がするな。まぁいいか……。と思っていると、玲央奈は僕の腕を取った。
「今年は、もっと……もっと……」
「ん? 」
玲央奈はとても顔を真っ赤にしていた。何か言いたそうだけど、喉の奥に詰まっているような感じで、言葉を吐き出そうとしている。僕はゆっくりと待つ。
「も……もっと……い、いい小説書きなさいよっ! 」
そう言うと、彼女は照れるように僕の手を振り払った。そして、少し悔しそうにしつつ、兄貴達に合流することを僕に伝える。ん~何かまだ言い足りないみたい。僕の答えを待つことなく、彼女は足早に兄貴達に会うと、すぐに家に帰る事を伝えた。何でだろうと思っていると、改めてまた朝に詣でに行くらしい……何て元気なんだろう。
僕たちは家に帰った。すると、玲央奈が車から出て、僕の前に来た。そして顔を赤くしながらこう言った。
” きょ……去年は、ありがとう。こ、今年も、よろしくね…… ”
ものすごい言いにくそうに玲央奈は言った。僕も「こちらこそ、去年はありがとう。今年も、よろしく」と言い返すと、玲央奈は耳まで真っ赤にしながら、小走りで車に入り込んだ。アレ……僕何か変な事言ったかな……。兄貴達も軽く挨拶をして別れた。
「さ、祐也寝るぞ。また迎えに来るそうだからな」
「あ……うん」
僕はとても不思議な感覚だった。今までなかったこんな元旦。もしかしたら、今年から僕は何かが変わるかもしれない。何故か自然にそう思えるのだった。
大晦日と元旦初めEND




