※ 君と僕との出会いのキセキ 第十三話 ~ 一足遅い誕生日 ~ ※
霧島祐也は目立たない少年。趣味は小説のWEB投稿。レオさんこと文月玲央奈と出会い、彼の人生は変わった。
玲央奈の誕生日当日玲央奈に会えなかった祐也は、彼女の家に行く。そして彼女と無事再会した。そして……
※ 君と僕との出会いのキセキ ~ 一足遅い誕生日 ~ ※
僕は黎苑さんに連れられ、玲央奈のいる寝室に来た。そして、黎苑さんが見守る中、僕は扉をノックして部屋に入った。部屋はとても広く、玲央奈はお嬢様だということを再認識させる程豪華な部屋だった。そして、クイーンサイズのベッドには玲央奈が寝ていた。僕はゆっくりと玲央奈の前に向かう。
「それじゃあ、俺は少し外にいる。終わったら、家まで送ってあげよう」
「あ、ありがとうございます」
僕は黎苑さんにそう言うと、彼は扉を閉めた。外の冷たい外気を彼女から守るための配慮だろう。
僕は改めて寝ている玲央奈の横に立った。近くに彼女の化粧台と椅子があったので、その椅子に座り、彼女を見つめる。寝ている玲央奈は本当に人形のように綺麗だった。栗色の髪が綺麗に整えられており、まるで白雪姫のごとく静かに寝息を立てている。きっと、僕が来るまでに風邪の山は超えたんだろう。
洗面器に水を汲み、そっと彼女の額にあるタオルを取る。そして、水分を含ませ、絞る。
「玲央奈……ごめんよ」
僕は、意識のない玲央奈にそう呟きながら、絞ったタオルを彼女の額に乗せ直した。すると、玲央奈は何事か呟いている。所々聞こえないが、何かを呟いてた。熱にうなされた時にでるうわ言というやつだろうか。僕はただ、玲央奈を見つめていた。
『ごめんなさい。ごめんなさい』
私は誰もいない暗い空間でひたすら謝り続けていた。どれくらいの時間が経ったのだろう。分からない。だけど、私は謝ることしかできなかった。一体何に、そう思う。疑問が疑問を呼ぶ。そして、謝り続ける。ふと、暗闇の中かからなにか声が聞こえた。その声も、謝っている。違う、そうじゃない、私が謝らないといけないんだ……
『違う、違うの……悪いのは私。だから謝らないで』
そう言うが、声はもう聞こえない。すると、急に訪れたのはものすごい孤独感だった。私は一人、誰もいない駅前の噴水にいた。そして、来ない人を待っている。ずっと、ずっと。
『何で、もう来ないの分かってて、私は待っているのかな……』
そう呟いた途端、心と体が急激に冷え込む。寒い寒い寒い……
『寒い……寒い……寒いよ……誰か、誰か……祐也……』
そう、私は祐也をここで待っていたんだ。噴水前でずっと、ずっと。そして、彼は来なかった。私は罰が当たったんだ。入学してからずっと荒んでいた私。ずっと不満を持っていた。たまたまそこにいたアイツ。何をされても抵抗しないから、だから私はいじめを始めた。そして、それが当たり前になっていた。全部偶然、そこにアナタがいたから。今までいじめていた罪。それが罰となって、今私に降り注ぐ。それが宿命なら、甘んじて受けます。だから……
『ごめんなさい。ごめんなさい』
やっと分かった。何で謝っていたのか。心の奥底で罪悪感があった。それが今、肥大化している。罪悪感の塊で押しつぶされてしまいそう。
『ごめんなさい。祐也、私が、私が悪かった。だから……』
” だから私を一人にしないでっ! ”
心の叫びが暗闇の空間に響き渡る。すると、私の手のひらに温もりを感じた。とても、とても暖かい。愛おしむかのように、柔らかい暖かい感触。私はそれを希望を込めて握り締めた。すると、もう片方の手も……嬉しさで涙がこみ上げる。私は一人じゃない。そう思える温かみだった。そして、私はこの暗闇から生還したのだった。
「え……ふぇ……ゆ、夢? 」
まだ頭がボーッとしてる。良く分からない。目が覚めた一瞬で、私は自分の部屋にいたことが認識される。そうか、私は結局祐也に会えなかったんだ……そう思うと惨めな自分に悔しさと悲しさを感じてしまう。
「ふ、ふぇ……ふええぇぇぇえん!! 」
急に心細くなった私は泣き出した。クリスマス、私の誕生日、一生の記念に。と思った私の心は無残にも切り裂かれた。意識がもどると同時に段々、その思いがはっきりとしてくる。泣けてくるどうしようもなく泣けてくる。自分自身がまるでピエロのようだ。感情の赴くまま泣き出した。その時、そっと私の肩に手が触れた。ハッとなって振り向くと、そこには――
” とても心配そうな顔をしているアイツがいた ”
鳴き声と涙、感情全てが一気にフリーズする。何も考えられない。素の私を見られてしまった。恥ずかしさで死んでしまいたい。その時、祐也は悲しそうな顔をしつつ、でも驚く私を見ながらこう言った。
「遅くなってごめん。家まで押しかけちゃったよ」
そう言われて、私は「え? え? 」と言うしかない。もう来ないと思ってた私に、祐也がそんなことを言うなんて……
「ずっと、待っててくれたんだって? ありがとう……君の誕生日なのに、待たせちゃうなんて」
「…………」
祐也の済まなそうな顔がとても印象的だった。そして、祐也は私の両手をしっかりと握って話しかけた。
「言い訳はしないよ。遅れたという事実。僕は玲央奈の言う事を何でも聞くよ」
「…………」
私の頭は思考不能状態になった。何でも言う事を聞く。そんな夢のような言葉を聞けるとは思わなかった。だけど、何か言わないと……と思った私が「あ」と言ったとたん。空気の読めない私のお腹が大きな音を立てた。
” ぐううぅぅぅキュルキュルキュル…… ”
雰囲気もへったくれもない。ただただ恥ずかしさだけが私の心をそれ一色に塗る変えられる。もう、私死にたい……顔を真っ赤にして硬直していると、祐也はフッと笑った。
「な、ななな何よ! 」
怒りと恥ずかしさで打ち震える私は、力のない威嚇をした。でも、祐也はニコニコしている。クッ……元気だったらこんな失態しないのに……
「さて、じゃあ準備するか。ちょっと行ってくるね」
祐也はそう言うと、真っ赤になってる私に背を向けた。
「あ……ちょっ……」
すべてを言い終わる前に祐也は消えた。また一人になる。さっきまでの焦りの感情は全て消えた。すると、また孤独感に苛まれる。一人が怖い。また寒い中に放り込まれるような、そんな感じがする。両肩を自分の手で掴むと、ギュッと力を入れた。頑張って、頑張って耐えるけど、また、涙が出てくる。どれくらい時間が経ったのだろう。そんなに時間は経っていないはずだけど、私には永遠と思えるようなものすごい沈黙を感じた。ひたすら鳴く声と鼻をすする音。もう、プライドも何もない。
「ぐす、ぐすっ……うう」
泣き続けていると、ドアがノックされる。慌てて私は両腕で瞳の涙を振り払い、努めて平静に声を出したつもりだった。
「ど、どう”ぞ……」
嘘っ! と自分でも思うぐらい情けないしゃがれ声だった。また恥ずかしさがこみ上げてくる。すると、そんな私を知らずか、祐也はお盆に一人用の土鍋を持って部屋に入ってきた。そして、横にある台にそれを置くと、話しかけた。
「じゃあちょっと待っててねー。蓋をとってと」
祐也はそう言うと、土鍋の蓋を開ける。すると、中にあるものはとても美味しそうな雑炊? だった。いい感じでほぐれたお米に美味しそうな黄金色のスープ。人参とネギが散りばめられており、なんと真ん中にはフワフワの溶き卵があった。見ているだけで、よ、よだれが出そう……
「お腹、大丈夫? ご飯作ってあげたよ」
「え? ご、はん? 」
私は驚いた。祐也がご飯作った? それだけで驚いてしまう自分がいた。というか、祐也の料理って美味しいのかどうか……と思うが、料理と聞いただけで、またお腹が鳴ってしまいそう……そんな私を知ってか知らずか、祐也はレンゲで雑炊をすくうと、フーフーッと息を吹きかける。その姿が何だか可愛くて胸が締め付けられそう……ドキドキしていると、祐也はそのレンゲを私に向けた。
「ほら、アーン……」
「あ、ア~ン」
釣られるように私は口を開けて声を出した。ちょっとはしたないことを考えてたせいで、声がとろけるような変な声……恥ずかしい。
そう思っていると、祐也の作ったご飯が私の口に入った。この雑炊、お粥のようにトロトロだけど、薄味の出汁が効いてて、すごく、美味しい。小さな人参の舌触りも素敵。何よりとてもいい匂い。あまりの美味しさに私は更にトロトロになる。祐也はまたフーフーッと息を吹きかけて、私に差し出す。もう二度目からは恥ずかしさなんて関係なかった。食欲に勝てない乙女なんて……元気な時だったら絶対にし、しないんだからねっ!
「もぐもぐ……はぁ……幸せぇ……」
無意識に出た言葉。祐也は「そっか。作った甲斐があったよ」と喜ぶ。何だか私すごい恥ずかしい。何でこんなに恥ずかしいの? 顔が一気に赤くなる。食欲が満たされたら、考えるエネルギーが満ちてくる。ああ……もう私萌え死んじゃう。
食事が終わり、改めて祐也は謝罪をした。今度は理由をきっちりと話した。携帯を落として連絡が取れなかったことも。あの時の響いた音はその時の衝撃の音らしい。全部話を聞いて、私はホッとした。それは、私が嫌いになって来なくなったわけじゃなかったから。反対に、わざわざ家まで来て、こんなに美味しいご飯まで作ってくれて、愛を感じる……いや、愛じゃなくてっ! 混乱する私に、祐也はにっこりと笑いかける。その顔がとても愛おしく見える。急に私は黙り込んでしまった。こんな経験初めてだったから。すると、祐也は思い出したかのようにポケットをまさぐる。そして、包装された箱を私に渡した。
「あ、誕生日おめでとう。これ、プレゼント」
「え、ええ! 嘘っ! 」
私は嬉しさで涙が滲む。神様は最後の最後に私にほほ笑みかけてくれた。今日は最高の日かもしれない。私は喜び勇んで、包を解いて、中身を見た。その瞬間固まった。
「ん? どうしたの? 」
「うん……できたらさ……」
” 出来たら、風邪ひく前にこれほしかったよね…… ”
私の震える手と共に、祐也が買ったと思われるパワーストーン。確かに気持ちがあればプライスレスって思うけどさ……何でここで……
” 何でここで無病息災健康運上昇なのよっ!! ”
祐也は「え? 」と言った後、慌てて取り繕ったように言い訳をした。
「あ、ほら、さ。今病気したから。これから上がるんだよ。無病息災っ! 」
「誕生日に無病息災なんて贈るバカがどこにいんのよっ! 」
怒りに任せて私は強烈なビンタを祐也にした。祐也はキリモミ回転をしながら扉に激突した。その衝撃に慌てて黎苑が食べかけのリゾットを片手に扉を開けた。
「お、オイッどうした! 」
「何でもないわよっ! このゴミどっかに捨てなさいよ! 」
そう言うと、元気になった私は黎苑共々部屋から追い出し、一人になった。手元には祐也が買った無病息災健康運上昇と書かれたパワーストーン……若干こめかみが引きつるが、これが祐也なのだろうと改めて思った。
「今回は、いっか……プレゼントはプレゼントだもんね」
そう言うと私は、祐也から貰ったパワーストーンのブレスレットを身につけた。これが祐也からの初めてのプレゼント。そう思うだけで私は幸せになれそうだった。
私が、そんなことを思っている最中、祐也は私の寝言を全部聞いていた。そんな事を全く知らず私は一人夢心地になっていたのだった。
” あ、祐也殴りつけちゃった…… ”
最後にやらかした私は、頭を抱えて、数日を過ごすのだった。
一足遅い誕生日END




