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ツンデレな彼とヤンデレな彼女

かくして私は貴方を手に入れた。

作者: さはら 鈴

ツンデレの彼女サイドです。

 私ね、大好きなものは独り占めしたいのよ。だってそうでしょう? 私がこんなに、こんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなに好きなのに相手が好いてくれないなんて間違っているわ。だからね、お父様もお母様も私のことが一番好きじゃなきゃいけないの。


 ねえ、お母様。その大事そうに抱えているものは何? 私の弟? 嬉しい? なんで。なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで! そんなに幸せそうにしているの? 跡取り? だからお母様が抱いているの? 私、五歳になるまでお母様とお父様に会えなかったわ。それから、しっかり勉強して天才だって褒められて、私が婿を取るっていう話だったでしょう? お父様、私なんで子供ができるか知っているのよ? 私が居るのに、私が一番なのにお母様と二人で愛し合っていたのね? 裏切りだわ。酷い。許さない、許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない!


 さっきは取り乱してしまったわ。でも、お母様とお父様は喜んでくださったの! 年相応に嫉妬して可愛らしいんですって。今までが完璧すぎたって。でも私、立派な貴族になるためにはこうしなさいって教わったわ。間違いを教えられたの? 私が愛されることの邪魔をした? ああ、私がお母様とお父様を好きだから嫉妬したのね。私も弟を排除したいと思っているもの、分かるわ。だったら先生、私が愛してあげる。捕まえて、貴方の世界を私だけにしてあげるわ。ねえ、嬉しいでしょう?




 私、お父様に初めてお願いしたの。王都の別邸が欲しいって。少し大きなお願いだったけど、私の我が侭を珍しがったお父様は快く下さったわ。これで、増えてしまった私のモノをしまう場所に困らないわ。だけどこれ以上は増やせないかしら。先生達が失踪したと勘違いしているお母様は、私が優秀すぎて先生が逃げてしまうと思っているの。確かに、もうお父様より家のことを把握しているわ。でも、私だけを愛してくれるモノが増えることが嬉しくてたまらないの。だから、募集をやめてしまうなんて残念だわ。でもこれで、お母様とお父様を私のモノにできるのよ。


 お母様もお父様も、別邸に様子を見に来てくれて地下室を気に入ってくれたみたいだわ。そうよね、弟の居る本邸よりこっちがいいに決まっているもの。あのお母様が泣き叫んでいるの。私だけしか見たことのない表情だわ。お父様が、必死に話しかけてくれるの。ほら、こんなに私のことを考えてくれるなんて素敵だわ。これで二人とも私だけのモノよ。




 最近、お母様とお父様以外のモノたちがつまらないの。何を言っても反応してくれなくて。最初のころは、私を好きだとか愛してるとか言ってくれていたのに、どうして今はそんなに虚ろな目をしているの? その目に私が映らないのは許せないわ。だって、私は貴方達が大好きなんですもの。だから、貴方達は私のことだけを見て、愛してくれないといけないわ。どうしたらこっちを見てくれるの? たくさん痛い思いをすれば、私のことを考えるかしら。たくさん痕が残れば、私のモノだという証になるかしら。ねえ、もっと泣いて? 私だけにしか見せない顔をもっとたくさん見せて? もっと、もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと……!


 あら? どうして動かないのかしら。ねえ、今日もたくさん叫んでよ? 冷たい……? あは、あははははははははははははははははははは! これは玩具だわ。そうよ、私のお気に入りの玩具達。だから、壊してもいいの。なんて綺麗なんでしょう! 私のつけた痕に、私がさせた格好のままずっとここにいてくれるのね、素敵だわ。どうして今まで気付かなかったんでしょう。私、昔からお気に入りのぬいぐるみ達をビリビリにしてお母様を心配させてたわ。楽しかったけどお母様が嫌がるから二度としていなかったの。でもそれは、こんなに私が好きになってしまうことを心配していたのね。大丈夫よお母様、気付いたのよ。壊して楽しいということは、玩具なのよ。だから、動かなくなっても何も問題ないわ。だって変わらずにずっと好きだもの。




 弟が別邸に来たわ。お母様とお父様が帰ってこないのを心配したんですって。なによそれ。貴方のところに帰るのが普通だとでも言うのかしら? お父様の代わりに仕事をこなしている私に暇はないのよ。ああでも、弟のことをお父様は心配していたわね。でも、お父様の世界に私以外は要らないのよ。だから貴方のこと、壊してあげる。私の玩具になって? そうすれば、お父様も諦めてくださるわ。だって私のモノになるんですもの。


 ほらお父様、私の弟よ。大丈夫、本邸には事故に遭ったって伝えてあるわ。お母様とお父様もね。だから私、この家を継いだのよ? もう何も心配することはないわ。だから、お父様は私のことだけを考えてくれればいいの。ねえ、どうして何も言ってくれないの? あら、心が先に壊れてしまったのかしら。残念だわ。これからたくさん私を刻みつけようと思っていたのに、これじゃあ意味がないわ。でも、お母様がいるわね。お母様、先に壊れてしまったお父様の分までたくさん愛して刻んで痕をつけて壊してあげるわ。大好きよ。




 ああ、誰も動かなくなってしまったわ。だけど私は満足してる。全員私のことだけを愛して壊れてくれたんですもの。今は、気に入ったお人形をボロボロにしているけれど、やっぱり人間じゃないと駄目ね。今の玩具たちは最初から私のことが大好きだったのだし、今度は私のことが嫌いな玩具を手に入れようかしら。それがいいわ! そんな玩具に愛されたら、きっと素敵だもの。


 下調べは苦じゃないわ。私と玩具の幸せのためですもの。だから、親兄弟が居なくて結婚もしていない玩具じゃないとね。公爵家の力を使えばもみ消すのは簡単よ? だけど、最初から孤独な玩具のほうが簡単よね。他人を愛すのは初めてだもの、最初はいい条件で探してもいいでしょう?




 見つけたわ。彼がいい。兄弟は居なくて、両親と死別している真面目な人間。王都の門を守る門番。人付き合いが悪くてきっと私のモノになってもごまかせる。さあ、早く私のモノになって……!




 驚いたわ。確かに粗末な服を着て行ったけれど貴族だとは分かるはず、なのに酷く敵意の篭った態度。貴族にそんな発言をしたら殺されても文句を言えないわよ? ああ、両親は税を払えずに見せしめに殺されているのね。なかなか振り向かせるのは難しそうだわ。本当は無理矢理連れて行って閉じ込めてしまおうと思っていたけれど、やめたわ。絶対私を好きになってもらうんだから。


 差し入れくらい受け取って欲しかったけど、まあいいわ。私のことを邪魔だと言いつつ話し相手になってくれるんだもの、可愛い。こういうのは初めてだわ。今までの玩具は簡単に私のことを好きだって言うんだもの。そのくせ、私のことは見ていないんだわ。彼は、私を見て酷いことを言うの。でも本心から嫌われているわけではなさそうだわ。


 私の風邪を心配してくれているのね? 顔に出ているわ。ねえ、貴方はなんて素敵なんでしょう。どうしてくれるの? こんな感情、知らないわ。お母様やお父様を愛しているのとは違うのよ。私が好きで、貴方が私だけを見ているだけで良かったはずなのに、貴方の全部が欲しいの。全部よ。ぐちゃぐちゃにしてやりたいのに、隣で笑ってくれたら素敵だなんて考えてるの。


 やっと受け取ってくれたのね。そのお菓子、貴方の故郷のものなのね。取り寄せるのは簡単だったけど、最近サボっていた書類仕事を一日で片付けてきたのよ? 寂しかった? いつも怒ったような顔をしているのね。泣き叫んだらどんなに素敵なんでしょう? 笑ってみて欲しいというのもあるのだけど、きっと貴方は人前で涙なんか見せたことがないわよね? だったらやっぱりそっちを私のモノにしたいわ。




 私のこと、気にしてくれているのね? 許婚なんて居ないわよ? そういう噂を流させただけなのに、可愛いわ。真っ赤になって。ねえ、不思議よね? 私、好きなモノを前にすると酷く飢餓感があるはずなのよ。壊したくて泣かせたくて私だけのモノにしたくなる。だけど、貴方のことが好きだって思うとなんだか心がポカポカするのよ。貴方を私の玩具にしたいのは変わらないけれど、壊して動かなくなるのはもったいない気がしているの。ああ、自分が分からないわ。全部貴方のせいよ。うふふ、大嫌いだなんて可愛いわ。でも、もういいでしょう? この気持ち、泣かせてみれば分かるかしら?




うふふふふ。

捕まえたわ、また明日。

彼サイドからは見えない彼女の狂気を。


続く、かも?


感想等お待ちしております。

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― 新着の感想 ―
[一言] 怖いです……。 ツンデレの彼氏サイドだけ見てたら微笑ましかったのに…。
2013/06/17 15:03 退会済み
管理
[一言] 狂氣 それも 命がけなのですよ
感想一覧
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