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r5. Hyperlink

正直にいって、うちは他の家庭より裕福な方だ。

「宮野財閥」といえば、皆一度くらい聞いたことがあると思う。

それで、私は幼い頃から「見返り目当ての親切に気を付けろ」と言いつけられてきた。


意味がわからない訳じゃないけど、それでも皆の私への親切が見返り目当てだなんて、思いたくなかった。

だから、私は人を信じることにした。


でも、それは間違いだったのかも知れない。


お父さんのスキャンダルが広がり始めた頃から、私の周りの人たちは離れていった。


お父さんがそんなことをしたなんて、信じたくなかった。

お父さんのウィキからその内容を消そうともしたけど、証拠があるからって誰も信じてくれなかった。

私に親切にしてくれた人たちは、私を無視し、いじめ始めた。

親戚たちも、自分は関係ないと言わんばかりに、私を遠ざけ始めた。


純粋な善意なんて、初めからないのかも知れない。


それでも…私は人を信じていたい。

そうでもしないと…壊れてしまいそうだから。


***

「宮野、佐倉先輩が呼んでたぞ」


「う、うん…ありがとう…」



「ったく…3万持ってこいつったよな?殴られたりねぇの?」


「…すみません」


「あんたの親父の汚い金、まだ残ってんだろ?あんたは金づるくらいでしか価値がねぇんだから、ちゃんとしろよ…」


「…」


「宮野」


その時、後ろからどこかで聞いたような、男の人の声が聞こえた。


三島さん…?!


「えっ?なんで…?!」


「ちょっとこいつ借りるぞ」


「えっ、ちょっと…」


三島さんは、私の手首を掴んで引っ張った。


「ちょ、ちょっと!!あんた誰?!今話してるとこなんですけど?勝手なことしないでもらえる?!」


「…クソガキが」


そう言い捨てては、三島さんは私を引っ張って行った。


「…何あの人…宮野の彼氏か何か…?高校生…?」


「なんか…目ヤバかった…」


「あの…三島さん…ですよね?どうして…」


「とりあえず黙ってついてこい」


「はっ、はい!」


「あの…どこに…」


「俺の家」


「えっ?!」


***

「どうぞ」


「は、はいっ…お邪魔します…」


「コーヒーでいいか?」


「は、はい。ありがとうございます…」


「あっ、あの…どうして私の居場所を…」


「制服」


「あっ、」


確かに…あのとき制服のままだったけど…この人は…あんな状況でそんなことまで把握してたってこと…?


「一応言っとくけど…あれは夢なんかじゃない。まあ…泣いても笑っても俺たちは運命共同体なんだ。お互い、死なないように頑張らないとな…」


「あの…どういうことなんですか…?あの時確か、その…三島さんは死んだはずじゃ…」


「…ルールブックは読んでみたか?」


三島さんの説明によると、これはデスゲームはデスゲームでも、「登載」さえされていれば死なない…

しかも、あの時三島さんが書かせた文章…

「手を組んでいる」とかじゃなくて、過去形の「協力を約束した」…

「ウィキ」で一度公開した情報は、事実の変更がない限り取り消せない。

そして、「約束した」という事実は絶対に変わらない。

つまり、私たちはずっと繋がったまま…


「…そういうことなんだ…頭いい…」


「…そんなことはない。考え尽くしただけだ」


「…それでも、すごいです。私なんて怖くて動けもしなかったのに…情けなくてすみません…」


「…まあ…それが普通だろ。お前が悪いって訳じゃない。それに、状況も飲み込めずに狼狽えてた奴らよりずっとましだ」


「…ありがとうございます」


「事実を言っただけだ。無駄にネガティブ思考になってもらっても困る。思考が狭くなる」


「…本当に、すごいです。こんな状況でも落ち着いて考えられるなんて…」


「…俺だって、怖いさ。怖いから、人を殺してでも生き延びようとしてるんだ」


「…!」


「だから…今日宮野を連れてきたのは、いつでも連絡が取れるようにするためと…これからの方針を決めるためだ」


「あっ、はい!連絡先…メアド、交換しましょう!」


「よし、できた」


「あの…本当にありがとうございます。あの時…三島さんが助けてくれなかったら私は…」


「私…やっぱり不安です…頼りなくてすみません…」


「これは…俺から始めた関係だ。責任は取る。宮野は死なせない。まあ、宮野が死んだら俺も困るからでもあるけどな」


…!


この人は…私を道具としてだけ見てる訳じゃないんだ…


ただ生きるためってだけで、そこに善意なんてないのかも知れない。


それでも…その「打算」に、私は少しだけ救われた。


この人を…信じてみたい。


「あの…三島さん、一つだけ…わがままを言ってもいいですか…?」


「生存に関わることじゃないなら、何でも」


「…ありがとうございます」


「宮野さん」「宮野ちゃん」「宮野」


皆が見てたのは、宮野家としての私だけ。


皆、「陽葵」は見てくれようとしなかった。


そこに悪意はないかも知れないけど…私はそれが苦手だった。


「よかったら…下の名前で…『陽葵』って呼んでくれませんか?」


「…ああ、そんなことなら。じゃあ…俺も『準』でいい」


「…!ありがとうございます!準さん!!」


デーヴァ選抜プロジェクト


5. 脱落

脱落の条件は、三つ存在する。

1. ペダント文書に登載されなくなった場合。

2. 実際に死亡した場合。

3. 失格に値する重大なルール違反を犯した場合。²


5.1. 脱落者の処遇

1、3の場合、脱落者は他ペダントの記憶以外の全ての記録上にて削除される。

2の場合、脱落者はオムウィキ上の、ペダント以上の権限を持つ者のみアクセスできる全ての記録上にて削除される。


²: デーヴァ選抜プロジェクトを外部へ口外する試みを働いた場合など。

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