r2. Pedant
準は、普通を装っているが、実際、普通とはかけ離れた存在である。
彼は、他人の感情に共感することが出来ない。
そして、人並み以上の適応能力を持っている。
まだ幼い頃、妹を事故で亡くし、家族がバラバラになったときでさえ、彼は悲しむよりどうやって生き延びるかを考えていた。
彼自身も、それを自覚しており、巧みに他人を欺いている。
***
ー[それでは、ルールの説明は以上となります。
間もなく、チュートリアルを開始いたします。]
数秒後、俺は知らない町に立っていた。
ここは…住宅街か?
[チュートリアルが開始されました。タイムリミットは2時間です。時間内に一名の生存者が決められない場合、全員脱落となります。]
…落ち着いて、まずは状況を整理しよう。
「オムウィキ」から脱退しようと思ったら、管理者からメッセージが届いた。
そしたら…いきなり殺し合いをしろと。
…とにかく、今は逆らえない。2時間以内に一人だけ残るまで殺し合わなければ全員脱落…そして、脱落は死を意味する。
身体は…どこか違和感はあるけど、問題なく動かせる。
むしろ身体が軽くなったみたいだ。
…やるしかない。
あのホログラムは…意識で目の前に表示できるようだ。
『マップ』
地図上には、10個の赤い点が表示されていた。
まずは、一番近い点に向かう。
「ああ、人がいた…!すみません…!これは一体…」
目の前の男はまだ状況が把握できていないのか、刀を持って狼狽えていた。
あれがMAか…
さっきの説明によれば、MAは、各「ペダント」に一つずつ支給される専用の武器。
破壊できず、譲渡できない。
俺は、道端の石を持ち上げ、男に向かって投げつけた。
「うわあっ!何を…」
俺は石を顔にぶつけられ、痛みに苦しんでいる男に一気に近づき、手に持った刀を蹴飛ばした。
「うおおおおっ!!!」
男を地面に倒し、その上にのし掛かる。
「かっ…!やっ、やめっ…!」
頭を持ち上げ、何度も地面に打ち付ける。
徐々に男の瞳からは明かりが消え、地面には血みどろが広がっていった。
「はあっ…はあっ…」
背筋が凍り、意識が遠くなる…
幽体離脱するような解離感。
これが…人を殺す感覚…
…生きるためだ。やらないとどうせ死ぬ。
「ひっ、人殺し…!」
その声の元には、弓を持った女が驚愕した顔でこっちを見ていた。
「ちっ…近寄らないで!!」
女は、俺に向かって弓を構え始めた。
…射たれる前に終わらせる…!
「うあああっ!!!」
女は闇雲に矢を放ち出したが、慌てているせいか、俺には当たらなかった。
「えっ、AA発動!!!」
矢は光を放ち始め、物凄い速さで俺に向かって真っ直ぐ向かってきた。
これがAA…MAを媒介にして発動できる特殊な技。
ゲームでいうアクティブスキルってところか。
「…AA発動」
「きっ、消えた…?あっ、」
俺は女の後ろに現れ、後頭部に石を刺し込んだ。
女は直に倒れ、動かなくなった。
殺した…二人も。
もう戻れない。
しかし…今は一つだけ問題がある。
俺のMAは…どうやら出現していないらしい。
AAは使用できたんだ。MAなしでなんておかしい…これは一体…
「うああああっ!!!」
その瞬間、遠くから悲鳴と、銃声のような音が聞こえた。
「マップ!!」
動いている一つの赤い点。
その経路にある点は順次に消えている。
「…くそっ…!」
マップを見ると、その点から離れたところに、動いていない一つの点が見えた。
こいつは…まさか。
俺はその点に向かって走り出した。
デーヴァ選抜プロジェクト
1. 概要
デーヴァを選抜するための特別プロジェクト。参加者である「ペダント」同士の殺し合いを内容とする。
2. ルール
ペダントは、それぞれに帰属されたMA(Main Arm)を持つ。
MAは、他人に譲渡できず、破壊・損傷できない。
ゲーム中、MAを媒介にAA(Arm Ability)を使用できる。
AAの使用回数や持続時間には制限がある。




