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嫁が優秀な子供ほしさに義理の祖父と托卵を企てやがった! 俺は嫁一族と縁を切り、托卵された子供を育てる決意を固める。  作者: panpan


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池谷 大河⑤

大河視点です。


  最終的な打ち合わせを終えた俺と義父は……決戦の舞台である事務所の一室で待機した。

この場にはいないが、犬都さんを含めたほかの被害者達も……それぞれのパートナーと離婚に向けて話を進めるそうだ。

龍男は協力者ではあるものの……一応部外者という立場故に席を外した。


『しっかりな!』


 俺の背中を押す際に、龍男が言ったあいつなりのエールが妙にくすぐったい。


※※※


ガチャ……。


 しばらくすると……事務所の受付に案内された熊次郎と千鶴と蝶子さんの3人が部屋に入って来た。

千鶴には俺がラインで……蝶子と熊次郎には義父が訴状で……ここへ呼び出した。


「これは一体なんの真似だ? ワシをこんなもので呼び出しおって……」


 椅子に腰かけた瞬間……熊次郎は不機嫌そうな顔で懐から取り出した訴状をテーブルに叩きつけてきやがった。

叩きつけてきた訴状は1枚だけだったが……実際、熊次郎に送られた訴状は義父の分を含めて20枚以上ある。

熊次郎とは対称的に……奴の両隣で座っている蝶子さんと千鶴はオドオドした様子で沈黙を維持している。

熊次郎に一任しているのか……言葉が出てこないだけか……。

脂汗をかきながら震えている……。


「この訴状に記した通りです……。

道種熊次郎さん……。

あなたは私の妻である蝶子と池谷大河君の妻である池谷千鶴と不倫関係を持ちましたね?

その上、千鶴と音瑚が自分の子供だと認識しながら……私と大河君に子供を育てさせた……。

”この場”ではその件について話し合おうと……この場を設けました」


「何を言っている!?

ワシが蝶子と千鶴が不倫をしただと!?

馬鹿馬鹿しい!!

身内同士で不倫など……どこからそんなおぞましい想像が出てくるのだ?

証拠でもあるのか!?」


 おぞましいって……どの口が言ってるんだ?

そう思う反面……千鶴達との関係を”妊活”と本気で称しているあいつにとって、今の言葉は本心なんだろうなと、呆れている自分もいた。


「こちらを……」


 義父は激高する熊次郎に臆することなく、俺達が手にした証拠を3人の眼下に叩きつけた。

俺と音瑚のDNA鑑定結果……義父と千鶴のDNA鑑定結果……そして、俺と龍男がスマホに収めた蝶子さんの自白動画だ。


「なっ!!」


「なっなによこれ……盗撮じゃない!!

最低!!」


 自分のことを棚に上げて俺達を非難する蝶子さんに対し……義父が冷たく言い放つ。


「お義父さんと浮気して托卵まで企てたお前がどの口で言う?

そもそもここは私の家で……私が撮影を認可したんだ」


「!!!」


 さっきまで機械のように淡々と話していた義父が打って変わって、軽蔑を込めた視線と言葉で蝶子さんの非難を否定する。

その恐ろしい姿に、蝶子さんも蛇に睨まれた蛙のように縮こまり……何も言えなくなってしまった。


「DNA鑑定の結果からわかるように、私と千鶴……大河君と音瑚に血のつながりは認められませんでした。

つまり……蝶子と千鶴が不貞を犯したことは疑いようがありません。

そして蝶子のこの証言が真実なら……浮気相手は熊次郎さん、あなたと言うことになります」


「なっ何を言っている!?

そんな証言1つでワシを疑うつもりか!?

蝶子がパニックを起こして適当なことを言っただけかもしれんだろうが!!」


 まあ確かに……蝶子さんの証言だけでは決定打に欠けるかもしれない。

だからこそ……白黒はっきりつけるだけの証拠を熊次郎自身に出させる!


「そうですか……。

そうおっしゃるのであれば……熊次郎さん。

DNAに鑑定のご協力願います」


「でっDNA鑑定だと?」


「はい……。

千鶴と音瑚のDNAとあなたのDNAを照合します。」


「なっなぜワシがそんなものに協力しなくてはならんのだ!?

プライバシーの侵害だぞ!!」


「あなたの潔白だという主張を証明してほしいだけです。

それとも……鑑定できない理由でもあるんですか?」


「ふっふざけるな!!」


 ダンッ!!


 激高した熊次郎がテーブルを力任せに叩いて立ち上がった。


「これ以上付き合ってられるか!!

ワシは帰る!!」


「熊次郎さん、まだ話は……」


「うるさい!!」


 そしてあろうことか……熊次郎は義父の制止を振り切り、逃げるように出入口のドアノブに手を掛けた。


 パシッ!


 俺はすばやく席から立ち上がり……熊次郎の手首を掴んで卑劣な逃亡を阻止した。


「きっ貴様……手を放せ!!」


 熊次郎は俺の手を振り払おうとするが……これでも体育教師をしている俺だ。

いくらなんでも60歳を超えた爺さんに力負けすることはない。


「うぐっ!」


 握った手にほんの少し力を入れただけで、熊次郎は苦虫を噛み潰したような顔で頬を釣り上げていた。

力では俺に敵わないことに悔しさがにじみ出ているんだろうが……悔しいのは俺だ。

日本のためとかなんとか俺に言って自分達の行為を正当化していたくせに……いざ目の前に証拠を付きつけたら……あっさりと手のひらを返して否定する……。

その挙句……DNA鑑定で事実を証明しようとしたら……1人でさっさと逃げようとする。

常識を逸脱しているとはいえ……自分なりの”義”を持っていたくせに……それが公になろうとしていることを恐れて逃走しようとした……。

こんな卑劣な野郎を……俺は教師として尊敬していたんだ。

こんな腰抜け野郎に……俺は愛していた嫁を寝取られ、托卵までされたんだ。

自分が情けない……自分が哀れで笑いすらこみ上げてきそうだ。


「DNA鑑定に協力してください」


「きっ貴様……ワシから受けた恩を忘れたのか!?

お前のような高卒で救いようのないバカを我が学園に......名高い道種家に迎え入れてやったんだぞ!!

それを貴様......」


「忘れていませんよ……。

俺みたいなどうしようもないバカに教師をさせてくれて......千鶴の結婚まで認めてくれたあなたには心から感謝してます。

仕事でもプライベートでも、色々と良くしてくれました」


 俺の”過去”については、熊次郎にも千鶴にも全員に話している。

それでも熊次郎は俺と千鶴の結婚を許してくれた……なんて心が広い人なんだと……心から熊次郎を尊敬した。

だからこそ……恩を感じていたからこそ……許せないんだ!!


「だけど……それとこれとは話が別です。

生徒の手本となるべき教師なら……日本の未来を真剣に憂いでいる優秀な人間なら……自分の行いに責任は取ってください!」


「わっ若造が知った風な口を……。

今すぐに手を放せ!!

さもないと貴様を暴行罪で訴えてやる!!」


「訴えたいのならどこへでも訴えてくださいよ。

俺はあんたのように逃げたりしない!」


「きっ貴様ぁ……」


「ご協力いただけますか?」


「わっわかった......。

後日、ワシの知り合いが勤めている大学病院に鑑定を依頼する。

それで良いだろう?」


「いいえ、今ここでサンプルを提供してください。

鑑定はこちらで依頼します」


 鑑定を熊次郎の息がかかった人間に任せたりしたら......結果を改ざんされる恐れがある。

あいつの権力と金を使えばそれくらいはできるだろう。

そうはさせるか!


「なっなんだと!?」


「これ以上ゴチャゴチャ言う気なら……俺があなたの口の中に綿棒を突っ込んであげましょうか?

暴行罪で訴えても構いませんが……その代わりにサンプルはもらいます」


「うぐっ!」


「さあどうします?

俺はどっちでも構いませんよ?」


 しばらく考え込んだ後……熊次郎は渋々この場でサンプルを提供することを承諾した。

サンプルは隣の部屋で待機してもらっている医師に取ってもらうことにした。

素人がやるよりも専門家の方が良いだろうし......正直、あんな汚い口に触りたくないから助かった。

ちなみにこの医師も俺達同様……熊次郎に妻を寝取られて托卵された被害者だったりする。

熊次郎を心から憎む気持ちがある彼なら……金や権力で手なずけられることはない。

そう信じられるからこそ......俺達のこれからを決めるこのサンプル接種を任せることができるんだ。


※※※


「これで満足だろう!? 帰られせもらう!!


 サンプル接種後、熊次郎はそそくさと弁護士事務所を後にしていった。

もちろんこうなることは想定済みだったので……逃亡を図らないよう、龍男に尾行してもらっている。

龍男の他にも被害者達の何人かが人を雇って見張らせているのできっと大丈夫だろう。

本音を言えば、鑑定結果が出るまで捕まる覚悟で縛り上げてやりたいところだが……音瑚のことを考えれば、そんなリスクを犯すわけにはいかない。

それに龍男も……。


『絶対に逃がさねぇよ』


 と言ってくれていた……。

今はあいつを信じよう……。


※※※


 熊次郎が去った後……部屋に取り残された蝶子さんと千鶴に、義父は再び感情を抑えて話を再開した。


「相手については”今の所”不明ではありますが……お2人の不貞そのものはこのDNA鑑定で証明されています。

つきましては……あなた方にはそれぞれ慰謝料を請求し、離婚に応じて頂きます」


 義父の話に合わせながら……俺は記入済みの離婚届と慰謝料300万を千鶴に突き付けた。

義父も蝶子さんに対して、離婚届と慰謝料800万を突き付けた。

俺と義父では結婚や育児に費やした労力がまるで違うため……この慰謝料の差については納得している。

だが……浮気して托卵までした2人に対する罰がこの程度の額だなんて……あんまりスッキリしないな……。


「お願い待って! 私はあなたと離婚する気なんてないわ!

父とのことはただの妊活であって、私が愛しているのはあなただけよ!

どうしてわかってくれないの!?」


「考え直してよ! 私とおじいちゃんはただ妊活していただけで、私の夫は大河だけよ!

何度言えばわかってくれるの!?」


 義父が離婚と慰謝料について話をする中……蝶子さんと千鶴は断固として離婚を受け入れず、聞き飽きたフレーズをベラベラと大声で並べ立て続けた。

言い訳まで似ているとは……さすがは親子だな……。

だが俺と義父はもちろん、そんな言葉は右から左へと流した。


※※※


「では……次の話は鑑定結果が出た後ということで……細かい日程とかはおと……弁護士を通してください」


 離婚の意思表示と慰謝料請求という今回の目的を終えた俺は席を立った。

前半はここまで……後半は鑑定結果が出た後だ。

決戦と言っといてなんだけど……これ以上、千鶴と顔を合わせて話すのはつらい。

正直、吐きそうだ……。

ちなみに義父は弁護士としてほかの被害者男性に雇われている身だからまだまだやることが残っている。


「大河、待って!」


 部屋を出ようとする俺の腕を……千鶴のやつが掴んだ。


「!!!」


 俺は反射的に千鶴の手を振り払った。

もう俺の意識とは無関係に……本能的に俺の体は千鶴を拒絶しているんだ。

触られた部分がムズムズとして気持ち悪い……。


「たっ大河?……」


「触るな……」


「……」


 俺は強めの怒気を含めた言葉で黙らせると……千鶴に背を向けて部屋を出た。

これ以上しつこく付きまとってきたら多少乱暴に引き剥がしてやろうと思っていたが……千鶴は声を上げることもなく呆然と立ち尽くしていた。

どういう心境だったのかは知らないが……無駄に争わずに立ち去れそうで良かった。


『お願いよあなた! 捨てないで!!』


 背後から蝶子さんの悲痛な叫びが聞こえてきたが……義父を裏切っておいてよく言うよ……。


-------------------------------------


 10日後……DNA鑑定の結果が弁護士事務所に届いた。

義父が中身を開くと内容は思った通り……千鶴と音瑚の父親が熊次郎であることが詳細に記されていた。


「バカ野郎が……」


 俺自身はそうだろうなと軽く流せたが……義父は少し辛そうだった。

きっと心のどこかで……蝶子さんへの信頼がわずかながら残っていたんだろう……。

励ましたい気持ちはあったが……言葉が見つからなかった。

ちなみにほかの被害者達にも熊次郎のDNA情報が行き渡っており……托卵の子供達全員が熊次郎の子供であることが判明した。

これでもう……熊次郎達は逃げられない。


-------------------------------------


 俺と義父は2度目の話し合いに向けて動いた。

その間、俺はまた千鶴に突されないよう……学校を休んだ。

休暇申請は出しているものの……かなりの無茶ぶりなので、ぶっちゃけ無断欠勤に近いな。

学校をクビになるかもしれないが……元々この一件が終わればやめるつもりだったので、どうでもいい。

あの学園には千鶴との思い出がたくさんあるし……熊次郎みたいな最低野郎の下で教師を続けていたくはないからな……。

義父からは千鶴が許しを媚びているとたびたび連絡を受けたが、俺の気持ちを察した義父が聞き流してくれていた。

熊次郎の方は観念したのか胡坐をかいているのか……特段目立った行動はなかったらしい。

まあ個人的な意見を述べるのであれば……後者だろうな。


-------------------------------------


 それから3日後……。

俺と義父は……再び熊次郎と蝶子さんと千鶴を弁護士事務所に招いた。


「……」


「……」


 前回同様……蝶子さんと千鶴はうつむいたまま口を噤んでいる。

心なしか……体がブルブルと震えているように見える。

罪の意識……なのかな?


「またこんなところへワシを呼び出しおって……。

貴様らのような凡人と違って、ワシの時間は希少なんだぞ?

わかっているのか!?」


 それに引き換え……前回以上に荒れた言葉を吐く熊次郎……。

まだ自分のしでかしたことを理解できていないようだな。


「DNA鑑定の結果が届きました……こちらです」


 熊次郎の言葉を無視し……勤めて冷静に義父は鑑定結果をテーブルに並べた。


「見ての通り……。

千鶴と音瑚の父親があなたであることが証明されました」


 義父が出した鑑定結果に……蝶子さんと千鶴の顔はひどく青ざめた。

日本のためとかなんとかいってた割に……自分達の行いが不倫だと、ちゃんと自覚してるんじゃないか。


「また……あなたが千鶴と密会している所も写真に抑えています」


 義父が鑑定結果と一緒にテーブルへ展開した写真……それは龍男の調査で集まった証拠だ。

そこには千鶴と熊次郎が密会している様子がいくつも写されていた。


「何が密会だ……ワシがワシの孫に会って何が悪い!?」


「確かに……家族同士で会うこと自体は何もおかしなことはありません。

ただ……あなたが音瑚の父親であることが証明された今となっては……この写真には少し違う見方もできる」


「なっ何が言いたい?」


「あなたが自宅や理事長室に千鶴を招き入れ……不貞を犯した。

そういう見方もできるということです」


「ふっふざけたことを言うな!

証拠はあるのか!?」


 熊次郎は激高していたが……千鶴が義父の言葉に反応して肩をすくめていたのを俺は見逃さなかった。


「いえ……その点の証拠はありません。

ただ……そう見られても仕方がない状況だということです」


「だっ黙れっ!」


 ダンッ!


 威嚇するかのようにテーブルを力強く叩く熊次郎だったが……弁護士としていくつもの修羅場を潜り抜けてきた義父が臆することはなかった。

まあ俺もだけどな……。

だが往生際が悪い……ちょっと嫌味の1つでも言ってやるか。


「いい加減にしたらどうですか?

DNA鑑定って言う決定的な証拠がこうして揃っているんですよ?

素直に自分達の過ちを認めて……謝罪の1つでもしたらどうですか?

自分達の行為は社会奉仕なんかじゃなく……ただの不貞行為でしたって……そんなことも……」


「黙れと言っとるんだぁ!!」


 熊次郎の怒号が俺の嫌味を遮り……さらには周りが一瞬沈黙したことで、発言権が一時的に熊次郎に独占されてしまった。


「黙って聞いておれば……この非国民共がぁ!

ワシはこの日本の未来を救う救世主だぞ!

そのワシに向かって……舐めた口をたたきおって!!


「……」


「そもそもワシが蝶子と千鶴に種を注ぐことになったのは……お前達が無能なせいだ!

お前達がワシの目を引く優秀な人材であれば……ワシはお前達の血を道種家に入れるつもりだった。

だが蓋を開けてみれば、3流大学出身の弁護士と体力しか取り柄のない体育教師……そんな種にはなんの価値もない。

それでも娘達が選んだ男であればと……ワシは結婚を許し、さらには父親としての役割まで与えてやったんだ。

それを言うに事欠いて不貞だと?……托卵だと?

この恩知らず共が!」


 長々と聞くに堪えない演説が始まった。



また長引きそうなので区切ります。

次話も大河視点です。

今度こそ……ケリを付けたいと思います。

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