1-3 〈化け物の姫〉
「これから一限の授業を始めます。」
教室は静まり返り、一限目の座学が始まった。
窓の外の小さな光が机の上の教科書を照らす。
エレオ先生の声が響く。
「さて、今日の授業はこの国の魔術師の歴史についてです。」
黒板に文字が書かれ、クラスメイトたちは真剣な眼差しでノートを取る。
ラナも静かにペンを握りながら聞き入った。
ふとした話題が飛び出す。
「先生!この国トップの魔術師って何人いるんですか!」
クラスの1人が手を挙げた。
「はぁ、そんなこともわからないのかー?
〈深淵の導師〉、〈紅蓮の魔王〉、〈大地の守護神〉、〈光舞う聖女〉、〈氷華の姫〉。
そしてこの学園に通っている3年生、〈疾風の射手〉の6人だ。
よく覚えてくように!!」
エレオ先生は少し早口で説明をした。
この学園に〈疾風の射手〉がいることは周知の事実なので、皆驚いてはいない。
「あ、そういえば先生!
このトップの魔術師たちのフルネームってなんですか?」
とクラスメイトが興味津々に質問する。
「ちっちー、トップの魔術師様たちは基本フルネームを公開していないんだ。
確か下の名前だけだったかな?
数人フルネーム公開している方もいるけど。
確か、お前たちの先輩の〈疾風の射手〉は公開してるな。
レオン・ブリーズだったっけか?」
とエレオ先生は答えた。
その時、カイル・フォルスが手を挙げて早口で言った。
「そして、皆知っていますか?
〈氷華の姫〉様はなんとラナという名前だそうです!」
―カイル・フォルス。
同じクラスで〈氷華の姫〉の大ファンであり貴族。
つまり、ラナの大、大、大ファンである…
「えー!そうなの?ラナ同じ名前じゃん!!」
とリリィが少し興奮気味に話しかけてくる。
ラナ・グローリアと同じ名前…
ラナは心臓がバクバクと早鐘のように打つ。
「偶然ね…」
と冷静を装い言葉を返すしかなかった。
「はいはい、皆さん私語は慎んで。
〈氷華の姫〉はラナとは関係ないことがわかるだろう。」
エレオ先生が自然にラナを庇ったおかげで、ラナは少し安心した。
そしてその言葉にクラスメイトたちが頷いた。
「先程話が上がった〈氷華の姫〉なんだが、
皆知ってると思うが…で魔術が使えるんだぞ」
エレオ先生はそうハキハキと言った。
クラスメイトたちがキラキラ目を輝かせながら聞く。
魔術を人間が使用する時は基本的に、
詠唱と杖が必須となる。
だがその常識を覆したのが〈氷華の姫〉、
別名〈化け物の姫〉である。
「そう、この詠唱と杖が必須という常識を覆したのが〈氷華の姫〉様なんだ!
世界でこの魔術師のみ、詠唱と杖を使わずに魔術ができてしまう天才なんです!!」
カイルが興奮気味に説明した。
そう、〈氷華の姫〉は人類初、
詠唱と杖を使わずとも魔術ができてしまうのだ。
それは歴史的の快挙であり教科書にも大きく載るほど。
その載っている張本人がラナだということは誰も思わず―
ラナはずっと心臓をバクバクにさせていた。
(やばいどうしよう、エレオ先生が庇ってくれたからよかったけど勘づかれてそう…)
いつも基本冷静なラナが珍しく焦っていた。
その後も授業は進み、魔術師の歴史や偉人たちの功績が黒板に映されていく。
ラナはノートに筆を走らせながらも、心の中で微かな不安を感じていた。
誰も、私がその氷華の姫と同じラナだとは思うまい―
エレオ・セレンディアはラナ・グローリアが〈氷華の姫〉であることを知っている学園関係者の1人です。




