1-1 忘れてはいけないこと
―あれ、なんだっけ。
「大きくなったら一緒に…になろうね!」
何の話だろう。
「約束だよ、ぜーったいぜったい!」
思い出せない。
私は誰と何を約束したの?
いつ、一体…
忘れてはいけない、忘れてはダメなこと。
手を伸ばしかけた時、突然いつもの光景に変わった。
ここは―寮の部屋?
私はベッドの上にいた。
そして、私の上にはモルが眠っていた。
「モル、起きてもう朝だよ」
体を揺すっても、なかなか起きない。
「むにゃ...?あぁ、ラナ…?おはよう〜」
眠そうに目を開けるモルに
「うん、おはようモル」
とラナは微笑みながらモルの毛並みを整える。
こうして日常が訪れる。
ラナは手をカーテンの方へ軽く一振りした。
ただ手を動かすだけで、朝の光が自然に部屋いっぱいに流れ込む。
ラナの綺麗な金髪が太陽に照らされ、輝いていた。
「おいラナ!魔術師?から手紙が来てんぞ!」
モルが一通の手紙を持ちラナへと渡す。
そう、この世界では魔術というものが存在する。
魔術―それは生まれ持った血筋と才能によってのみ使うことを許される、限られた者の力である。
誰もが少しばかりの魔力を持ってはいるが、強力な魔術や使い魔との契約を扱えるのはごく一握りの才能ある者だけだ。
基本、人間が魔術を使う時は詠唱と杖が必要となる。
魔術には属性があり、
【氷、水、火、風、光、土】の6つ。
そして、この国にはトップの魔術師である
〈深淵の導師〉、〈紅蓮の魔王〉、〈疾風の射手〉、〈大地の守護神〉、〈光舞う聖女〉、〈氷華の姫〉
の6人がいる。
ラナがモルから貰った手紙の表紙を見ると
「〈氷華の姫〉ラナ・グローリアへ」
と書かれていた。
―そう、ラナはこの国のトップの魔術師である〈氷華の姫〉なのだ。
そんなラナはそっと封を開けて読みはじめる。
「よぅ!〈氷華の姫〉ラナ・グローリア!
元気してるか?にしても久しぶりすぎるな!!
ラナお前、最近ゼフィラン魔術学園に入学したんだって?!
知ってたか?
実は俺そこの3年なんだぜ!
これからここでもお前の先輩だぞ!!
お前、中々魔術師会議出てねぇからどうしたものかと思ってたらまさか同じ学園に入学とはな!
噂によれば〈氷華の姫〉であること隠してんだろ?
トップの魔術師様は大変だよな!
安心しろ!俺は誰にもお前の正体は口が裂けても言わんぞ!
俺は別に隠してないから、学園内では俺とあまり関わることを勧めないぜ!
とりあえずこれからもよろしくな!!
それ言いたかっただけだ!!
―〈疾風の射手〉レオン・ブリーズより」
疾風の射手―名はレオン・ブリーズ。
この国トップの魔術師6人のうちの1人であり
風属性の魔術師だ。
手紙を読み終えたラナは
「え、嘘でしょ?!
まさかレオンさんがこの学園にいるとは…」
と嘆いた。
そう、レオンがいることを知らなかったのだ。
「別にいいんじゃねぇか?
仕事仲間が同じ学園にいて、心強くねぇの?」
とモルがラナに尋ねた。
その通りだ。普通は頼もしいはず。
「たしかに、心強いかも。
でもよりによってレオンさん!
あの人おしゃべりだし絶対いつか口滑らすと思うの!」
ラナは困った顔でつぶやいた。
そう、レオン・ブリーズはラナと同じトップの魔術師で実力は申し分ない。
だが、喋りすぎるし口が軽い性格のゆえ、レオンは口を滑らせてうっかりラナの正体を言ってしまうのではと心配になっているのだ。
「ありゃま、そりゃ大変だな、俺のご主人様は」
どこか他人事のようにモルは呟いた。
こうして、朝から始まる学園生活。
これからどんな日々が待っているのだろう―
【モル】
ラナ・グローリアの使い魔。
普段モモンガの見た目をしている。
【トップの魔術師】
この国のトップの実力を持つ魔術師6人。
その中の一人はラナ・グローリア
もう1人はレオン・ブリーズ
どちらもゼフィラン魔術学園に通っている。




