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(七話)貴族のお菓子に突撃だ





 わたしはミミを抱えて駆け出した。


「好きさーおかしの街ー♪」


 口の中で小さく口ずさみながら、子どもたちが集まっているお店に向かってトテトテと、風のように走った。


 そこには子どもたちの列ができていた。子どもたちは、胸や腰にハギレを一枚か二枚縫い付けているだけで、仮装はしていない。

 大通りでは、何人か騎士の鎧や豪華なドレスを着た子を見かけたけど、ここには並んでないようだ。あの子たちはお菓子に興味がないのかなぁ。


 そばに駆け寄って見てみると、子どもたちはみんな笑顔で、順序よく並んでる。


「わーいっぱい並んでいるわね。きっと美味しいおかし屋さんに違いないわ!」


 抱えてるミミが呆れたように念話を飛ばしてきた。


『ここ、お肉屋さんだよ。お肉屋さんがお菓子を配っているだけ』


「え! お肉のおかし! 楽しみ!」


『…………』


 ワクワクしながらわたしは列の最後尾に並んだ。だが、子どもたちがわたしを見て一瞬固まる。


『「肉のおかし!」なんて言うから変に思われたんじゃない?だから念話でって……』


 ミミがそこまで言ったところで、前に並んでる子がわたしに声をかけてきた。


「ど、どうぞ……お先に……」


「え?ありがと!」


 なぜか順番を譲られたけど、まあいいか。目的はお菓子だもの。

 そんな感じで次々に譲られ、いつのまにか列の先頭になっていた。


 配っていたのは、お肉屋さんのおじさん。腕は太くて顔はこわいけど、目はやさしかった。

 配っていたお菓子は――小さな飴玉が三つ。


「……え?これだけ?」


「なんか言ったかい、お嬢ちゃん?」


「ううんっ!ありがとう、おじさん!」


 一瞬出たわたしの“え?顔”を見逃さなかったらしい。おじさんは困ったように笑って言った。


「上級魔導師の仮装をしているお嬢ちゃんは不思議に思うかもしらんが、ここいらじゃな、飴玉三つでも贅沢なんだ。子どもたちはみんな、もらったら家族で分けるんだよ」


「へぇ……」


「貴族街に行けばもっといいお菓子がもらえるのは知ってるが、行く者はいない。“母さまの日は子どもは平等”って建前があってもな……庶民が貴族街に行っちゃいけねぇって暗黙のルールがあるんだ」


 わたしは首をかしげた。


「でも、平等なんでしょ?なら――行けばいいじゃない!」


 おじさんが「は?」って顔をする。後ろの子どもたちもぽかんとした。


 わたしはくるりと振り返って言い放った。


「わたしと一緒に貴族街でお菓子をもらおう! “母さまの日”は、子どもはみんな平等なんでしょ? なら問題ないわ!」


 年上の子たちは困ったように笑う。

「無理だよ……追い返されるに決まってる……」


 でも、小さい子がぽろぽろ泣きながら言った。

「……でも、いいお菓子……ほしい……」


 その涙に、年上の子たちが顔を見合わせる。

「……一応、行ってみる?」


「よし、決まりね!」

 わたしは胸を張った。


 タダでお菓子がもらえる日に、お菓子をもらえない子がいて良いわけがない。おいしいは正義!


『目立つなって言っても無駄そうだね……』

 静かに首を振るミミを抱え、おじさんが止める声を背に、わたしは子どもたちを引き連れて歩き出した。

 漆黒のマントをひるがえし、庶民街を抜けて――目指すは、きらびやかな貴族街!


 お菓子のためなら、どんなルールも突破してみせるわ!


 石畳の路地を抜け、わたしたちは行進した。――わたしと、庶民の子どもたち十数人。

 うしろを歩く子どもたちは、ちょっとドキドキ、ちょっとワクワク。


 そしてわたしはというと……もちろんワクワクしかなかった!


「ねぇルーナちゃん、本当に大丈夫かな……」

「だいじょーぶ!だって今日はハロウィンよ?子どもはみんな平等!って、おじさんも言ってたじゃない!」

「それ、建前だよぉ〜……」


 うん、建前でも関係ないわ。

 建前は“お菓子をもらうためにあるもの”よ!


 教会のある広場の向こうは貴族街。


 「“母さま”。今は急ぎのご用があるので、ご挨拶は後ほど伺います」


 教会に軽く会釈をしながら通りすぎた。


 しばらく歩くと、街並みが変わってきた。

 街を隔てる壁などはないけれど、街角にちらほらと衛士さんが立っている。道はぴっかぴかで、建物はキラキラしている、そして門には“母さまの日”の飾りが競うように飾られている。


 これが……貴族街!


「すっごーい……」「お城みたい……」

 うしろの子どもたちの目がまんまるにった。


「みんな、おいしいおかしが待ってるわ! 子どもは平等、“母さまの日”は自由、そして全てのおかしはわたしたちの物よ!」


 ミミがため息をついた。

「ルーナ、それってただの強奪宣言みたいだよ……」


 ドラゴンと騎士が綺麗に彫られた大きなナンキンが玄関先に飾られている。


 よっし。まずあのお屋敷に突撃だ!


 カゴを手に、門の前に立つメイドさんが目を丸くした。


「とりっく・お・ありーど」


「はいどうぞ。“母さま”に感謝を」


 メイドさんはわたしにお菓子を手渡した。でもその後は、微笑んだままわたしを見つめるだけで、動こうとはしなかった。


「ねぇ。後ろの子どもたちにもおかしあげて」


 やっぱりか、って感じでちらっと後ろの子どもたちを見たあと、わたしに困った顔を向けた。


「え、えぇと……貴族街の子どもたちに配る予定でして……」


「今日は子どもは平等って決まりじゃなかったっけ!」


「平民の皆さんは、庶民街で配っていると思うので、そちらで貰っては如何でしょう」


「ルーナちゃん、もういいよ。あっちの街に戻ろ」「そうだよ。やっぱり無理だったんだよ」


 ぐぬぬぬ。“母さまの日”は自由、平等、博愛の日。たとえお天道様が許しても、この桜吹雪がゆるさねえぞ!


『何故ここで桜吹雪が出てくるのか知らないけど。無茶しないでよ。ここは知らない世界なんだから……』


 大丈夫という意味を込め、ミミをひと撫でした。


「へー。メイドのお姉さんはそんな事を言うんだ。じゃ…………ここのお屋敷の方たちは! 本日“母さまの日”は身分、性別、貧富の差なく子どもたちを平等に! と言う母さまの定めをご存知ないご様子! 世の中には、貴族という地位に胡座をかき! 普段から平民に無理難題を押し付ける、心ない貴族もおられるとか! このままでは、このお屋敷の御当主さまもそのような貴族と間違われるかもしれません! 本日が如何なる日かを、お屋敷詰めの皆さま方に、今一度、周知させる事をお勧め致しますわ!」


 叫び終える前に、男の人が武装した兵を連れ、大慌てで現れた。


「な! 門前で何を騒いでおる! どこの小娘かはしらんが、国王陛下より直々に子爵位を賜っておるポートリービツ家及びその御当主様を侮辱してただで済むとは思っておるまいな!」


 現れた男の人は鼻の下にたくわえた髭を逆立て、わたしを怒鳴りつけた。


 声と態度は大きいけれど、静かに怒るお母さまに比べたら全然怖くない。

 うしろを振り返り、泣いてる子や、顔が硬張っている子たちに微笑んだ。


「大丈夫よ」


 さーて、この子たちを泣かした償いもしてもらわないとね。










 わたし、お話しは全てスマホで書いています。


 便利な点、どこでも書ける。

 公園でも、ベッドでもそれこそ24時間いつでもどこでもです。


 不便な点、頻繁に入力をミスる。

 同じミスを何度も繰り返すと、イーってなってくる。


 音声入力、滑舌が悪いのか、さらにイーってなる。


空中に投影出来るバーチャルキーボード出ないかなぁ……。



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