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(五話)猫にこんばんは

 まずはお菓子をもらいに行かないと。


 おじいさんと別れてから、ミミと一緒に教会に向かってテトテト歩いて行った。


 大通りから外れたところは、小さなお店がずらりと並んでいて、魔界のお買い物市場みたいだった。

 お店の前では、道を歩いてる人に、店員さんが親しそうに声をかけていたり、びっくりするくらい大きな旗をふりながら、大声でお客さんを呼んでる店もあった。

 どのお店もキレイに飾り付けられており、それらをミミと見て歩くだけでも楽しかった。


「おや、嬢ちゃん。それは上級魔導師の扮装かな。とっても素敵だね」


 いろいろな布きれを軒先に並べたお店から、おじさんが声をかけてきた。

 おじさんは、お店の商品なのか、さまざまなハギレを、ただ適当に縫いつけただけの変な服を着ていた。


『ルーナ。無視して行こう。絶対あれ怪しい人だよ』


「でもお店の人だよ。あやしい人なら路地裏とかにいるんじゃないの?」


『ルーナはまだ子供だから、大人の世界が分って無いんだよ。怪しい人は、いかにも怪しい場所に居るとは限らないのさ』


「じゃ、そういう人はあやしい格好もしないんじゃない?」


「猫ちゃんもこんばんは」

 おじさんがまた声をかけてきた。


 あ、しまった! ミミに向かってガッツリ話しかけてたわ。

 わたしの方が怪しいと思われたかも。ここは、秘技“あたち5ちゃい”を出すしか!


「嬢ちゃん、猫ちゃんと仲良しさんなんだね」


「うん。わたしが赤ちゃんのときから、ずーっといっしょにいるの」


 おじさん、わたしがミミとおしゃべりしてたの気にしてないのかな。


「ニャ〜〜ん!『だから念話を使えって言ったじゃないか』」


 わたしは、念話も同時に使いながら、ミミを抱き上げ言った。


「ミミ、わたしたちなかよしだよね『わかった。あしたからがんばる』」


「みゃぁ……『もう……ルーナはいつもそれなんだから。今みたいな感じで頑張りなよ』」


 おじさんはわたし達に、にこやかな顔を向けた。


「おやおや、ほんとに仲良しだね。嬢ちゃんの衣装、とっても素敵だね」


「おじさんのお服、とっても変だね」


 わたしがそう言うと、おじさんは大きな声で笑った。

 カラン、とお店の軒先に吊るしてあった鈴が、風に揺れて鳴る。


「ハハハ、嬢ちゃん、なかなか正直だねぇ。そうだよ、これは“お祭り限定の縫い子服”さ。見た目は変でも、祭りの日にしか着られない特別な服なんだよ」


「へえ、特別……? でもどうしてそんなに布をいっぱいつけてるの?」


「この街ではな、祭りの前に余った布を持ち寄って“母さま”に捧げる風習があってな。それを縫い合わせて服にすると“母さま”の加護が強くなるって言われてるんだよ。お嬢ちゃんのマントにも小さな布を縫い付けていけば、もっと良いことがあるかもしれないね」


 おじさんが目を細め、にやりと笑った。


『ルーナ、なんか嫌な感じがするよ。あれ、単に売りつけたいだけじゃない?』


『でも加護っていいことなんでしょ? それに“母さま”の加護なら安心じゃない?』


『この人、“母さま”の名前を出せば何でも売れると思ってるタイプかもよ。ボク、あんまり好きじゃないな』


 ミミのシッポが不安そうに小さく揺れている。


「おじさん、それっていくらなの?」


「いくらでも、嬢ちゃんの気持ちでいいよ。ほんの一枚縫い付けるだけでもいいんだ。母さまの日だからね」


 おじさんが差し出してきた布は、たしかに可愛い。小さな星柄や、花の刺繍が入った布もある。

 でも、なんだか……ほんの少しだけど、その布に違和感を感じた。


『ルーナ、やめよう。お菓子をくれたおじいさんの話を思い出して。あの人は“母さま”の話をしても、何も売らなかったよね? それにここのお金持って無いよ』


『……そうだね。あの人は、ただ“感謝を”って言ってただけだった』


 わたしは布をそっと押し返した。


「ごめんなさい、おじさん。わたし、今日は“母さま”に会いに行く日だから、まずは教会に行くの」


 おじさんは一瞬、何か言いたそうに口を開きかけたけど、すぐに笑顔に戻った。


「そうかいそうかい。偉いねぇ嬢ちゃん。母さまも喜ぶよ。じゃあこれはお礼だ」


 おじさんは、小さなリボンの付いた布切れを一枚、わたしに渡した。


「これは売りものじゃない。母さまに会うのならその子猫ちゃんの首に結んであげな。加護がつくかもしれないからね」


「ありがとう、おじさん!」


 それはおじさんが見せてくれた中でも、一番かわいい布だった。


『うーん、タダでもらうと逆に怪しい気がするけど……まぁ、ルーナが欲しいのならもらっても良いけど、ボクにはそんな怪しいものを絶対に結ばないでよ』


「ほら、ミミも喜んでるみたい『えー、かわいいじゃない。ピンクでフリフリも付いてるし』」


『だからイヤなの! 黒猫族の由緒あるフィリックス家の次期当主のボクがピンクのフリフリ? あり得ない。断固拒否!』


 プンスカしてるミミを抱き上げ、おじさんにしっかりお礼を言って、お店の前を離れる。

 

 少し離れたベンチにミミを押さえつけると(そう文字通り魔法で軽く押さえつけると)、布切れを片手にニヤリと微笑んだ。


 ふふふ。かわいいは正義なんだよ。


『ちょ! 何する気だよ!』


 ミミはわたしの魔法から抜け出そうとモガクけど、無理。わたしのが強い。しかもミミは魔法が上手く使えない。ふふふ。


 大事な事なので二度言う! かわいいは正義!


 わたしは、締めすぎないよう、そっとミミの首に結んでみた。


『ちょっと!結ばないでよ!』


 結んだ瞬間、ふわりと白い光が布から立ちのぼり、ミミの体に溶け込んでいった。


『しまった! だから言ったのに!』




 すみません。タイトルの形式変えました。


 書き出した当初、三、四話程で終わるかなっと思っていました。

 でも、書き始めたら、猫も幼女も勝手にあちこち覗くし寄り道するしで、だらだらお話が伸びております。


さすがに「最初のお話、続きのお話、続きの続きのお話、って感じで続けるのは無理、って言うかウザいので変えました。

 

 人生もお話も計画性大事!



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