(二話)夕やけだんだん。
美味しいお菓子を求めて、魔界を抜け出したルーナとミミ。
いよいよお菓子の山に突撃だ!
でもなんだかミミの様子がおかしいぞ⁇
「着いたの? ここはどこ?」
「にゃー」
え⁈
「ミミどうしたの? にゃーじゃ分からないわ。おしゃべり忘れた?」
魔界を抜けてハロウィンの世界に来たらミミが喋らなくなっちゃった! どうしよう。知らない世界だし、ミミの案内が無いと、お菓子を楽しむ事も出来ないわ。
それにこのままじゃ魔界への帰り方も分からない。
それより、それより、ミミとお喋り出来ないのがいちばん嫌!
「ねぇ! ミミ! なにかしゃべってよ! わがまま言わないし、ギュって強く抱いたりもしない! お魚のサンマの塩焼きも、苦いお腹のとこだけじゃなく背中のおいしいところもあげるから! ねぇ!ねぇ! お願いなにかしゃべって!」
「にゃぁ」
ん?
「ミミ」
「にゃっ」
ミミの顔が全然焦ってない。それにシッポも先っちょを少し曲げてフリフリしてる。
も、もしかして、わたしをからかってる?
「ミミっ‼︎ しゃべれないふりして、わたしをだましたわね‼︎ 」
「にゃ!にゃーにゃ」
「え? おしゃべりできないのはホント?」
「にゃ」
えー。じゃなぜミミは慌てて無いんだろ。ちょっと嬉しそうだったのはサンマの事?
「じゃ、ハイの時はうなずいて“にゃ”ね。イイエは横にふって“にゃー”ね。わかった?」
「にゃ」
わたしの言うことはわかるみたいね。うーん。どうして喋れないんだろ。
「しゃべらないようにしてる?」
「にゃー」
違うかー。
「あわててないみたいだけど、どうして?」
「にゃにゃにゃー。にゃ」
聞き方が悪かったのね。難しいなぁ……。
ミミが自分の頭を触ってる。
「頭を叩けって事?」
「にゃー!にゃー!」
あ、違うか。
「頭、それで、なげる。……違うのね。頭、わたし、ごっちんこする。それでもない。ミミ、わたし、頭、……つなぐ?」
ミミとわたしの頭を繋ぐ? ヒモとかで結ぶのじゃないだろうし……。
あ、念話ね! でもわたし念話は、まだ習って無いよ。念話ならミミが出来るよね。
その後、少し時間は掛かったけど、わたしの魔力をミミに分ければ、喋れるし、次元門も開けるって事みたい。
魔力を渡すって魔力譲渡の魔法よね。念話以上に出来る気がしないわよ。
でもやらない限りなにも出来ない。
まずは念話からよね。最強最恐の始祖の吸血鬼『月夜魅姫』直系のわたしに出来ないことはない……はず。
すっごく気合いを入れてためしてみたら……、すぐ出来ちゃった。
『ねぇミミ。サンマの話し、アレはなしね』
『えー酷くない? 淑女たる者一度出した言葉は守らなきゃだよ!』
「わたち5しゃい。しゅくじょぢゃありまちぇん」
『念話の方じゃ。“よしここで5歳って特権を使わずして、いつ使う!”って言うのが漏れてたよ』
『さぁ、お菓子もらいに行きましょう』
『魔力譲渡の魔法は?』
『そんなのあとよ。わたしの魔導書に不可能の文字は無い! そんなのはあとでパパッて覚えちゃうよ。魔法は待ってくれるけど。お菓子は待ってくれないよ』
『ボクの今の状態が気になったりしない? 結構大事だったりするよ』
『それも、あとでいいよー』
この土臭いところから出て、お菓子の街に突撃だ。
あきれ顔のミミを引っ張って、少し赤みがかった光が射す出口へと向かう。
そこには、オレンジ色の夕陽に彩られた気持ちの良い夕方の景色が広がっていた。
生えている木々も草木も魔界と違って鮮やかな緑だ。
『ここはどこ? キレイなところだね』
『…………ちょっと軽く考え過ぎてたなぁ……』
『ん? ミミ、どうしたの』
ミミのシッポが小刻みにパタパタしてる。なにか困りごと? 不安?
『ねぇ、ルーナ。ちょっとマズイかも。あの夕陽を見てごらん』
なによ。夕陽を見ろって。わたしにクシャミでもさせるつもり?
そう言われて見た夕日はとても綺麗だった。お日さまが一番キレイなのはやっぱり夕陽よね。
特に驚いていないわたしの顔を見上げたミミが、シッポでテシテシとわたしの足を叩きながら言った。
『夕陽の右斜め上を見てごらん』
右斜め上?
見上げてみると――
「ええー!」
そこには、もう一つ小さな太陽が輝いていた……。
「ここはどこなのよーー!」
2話目です。
ハロウィンまで……まだ大丈夫。余裕は……ある……。
やばーい。お話し広げ過ぎた(滝汗