(12話)うっそー! 運慶・快慶がモデルにしたらしい?
「次元が不安定です! もっと魔力を!」
「ルーナ! 魔力を送って!」
「ダメです! 共鳴が間に合いません! “母さま”の光を──知識を力に!」
わかった! わたしは叫ぶ。
「──トリック・オア・リード!」
部屋中の本を通して、白い光が降り注ぐ。
世界が揺れた。
ミミを抱きしめたわたしは、光に包まれた。
「マスター……この子らを導いて」
巫女さまの祈りの声が遠くで響いた。
・・・・
光が消えたあと、書庫には一冊の本が落ちていた。
《二つの世界を繋ぐもの――愛と約束》
巫女はその文字を見つめ、ふっと微笑む。
「母さまの日にふさわしい、いい物語ですね」
二つの太陽の下、子どもたちの歌が街に広がっていった。
・・・・
光がゆっくりと薄れていく。
わたしはまぶたを開ける。頬にあたる風がやさしい。草の香り、遠くで鳴く鳥の声。
その世界の空は――ひとつの太陽だった。
「……ミミ?」
「成功? 帰れた?」
いつも自信満々のミミが、少し不安そうに見えた。まだ少し震えているが、毛並みには白い光が残っている。
周囲を見渡すと、緑の丘の上に立っていた。彼方には森、道の先には古い石橋と川。
「お城の中じゃなさそうね……」
けれど見覚えがあった。
去年の年末に、父さまに連れて来てもらった場所に似ている。
……帰って来れた?
空には、見慣れた太陽が沈みかけていた。
まだ夜になっていない?
「うん。無事に帰って来れたね。これが次元門の守護者たる黒猫族の力さ」
もう、さっきまでの不安そうな顔はどこに置いて来たのさ。
ミミがしっぽを揺らした。
「ここは人間界だね。でも、なんか変な感じがするね。空気の質が少し違う」
「え? 人間界? 元のところに戻れるって言ってなかった?」
「転移の瞬間の揺らぎで、少し座標がズレたみたいだね。でも、ここなら普通に魔法は使えるから、いつでも戻れるよ」
いつでも戻れる。なぜだかわかんないけど、まだ夜になってない。時間はたっぷり。
ふふふふ。ハロウィン! お菓子!
「いつでも戻れる」――その言葉って最高!
まだ遊べるよって言う魔法の言葉ね。
「じゃあ、この人間界も楽しもう!」
「ちょ、ルーナ! お菓子はもう十分だろ! 一旦帰ろうよ。気になることもあるし」
「だって、最初はここに来るつもりだったのよ。ちょっと寄り道しちゃったけど、これからが本番よ」
『これからが本番って……。あれが寄り道だとしたら、すごくハードな内容だったよ』
ミミの念話は、諦めと疲労が混じった、「やれやれ」な感情が伝わってきた。
その場に座り込んで魔力を回復するミミを横目に、わたしは早速辺りを見回した。
「あ、あそこの橋の向こうが街ね」
うずくまって毛づくろいしているミミを、つかんでわたしは道を走り出した。
「まってておかし〜! ルーナが行くわよ〜」
・・・・
二人は夜の街へ駆けだした。
ルーナのマントがひらめき、ミミのしっぽが星を弾く。
月は高く、穏やかに照らしていた。
──その頃、お城では。
ルーナは知らなかった……。
ミミが開けた次元穴のそばで、ルーナの父さまと母さまが衛士たちと共に仁王立ちしていたことを。
──その頃、“母さま”の世界では
「あの子達は無事帰れましたか?」
「少し座標がずれたようですが、無事元の世界に」
「そうですか。まさかこんなかたちで……」
「異世界からの流入者とはいえ、気にかけすぎなのが気にはなっていましたが。何か理由が?」
「良いのです……無事でさえあれば……」
ルーナとミミのハロウィンの冒険はこれでおしまい。
・・・・
「うーひどい目にあった。父さまたちがこんなに早く帰って来てたなんて」
「ボクも長老から、当分次元魔法禁止って言い渡されちゃったよ」
「冬には使えるよね?」
「どうして?」
「クリスマスだっけ? 子どもがプレゼントをもらえる日があるんだって!」
「…………」
これでルーナとミミのハロウィンの冒険は終了です。
ハロウィンまでに終われてよかった♪
☆次回予告☆
『ルーナ、サンタクロースにケンカを売る!? “プレゼントは予約制なの!?”の巻』
え?
え??
えーーー!




