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猫と、吸血鬼(ただし幼女)と、ハロウィンと  作者: 真野真名


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11/12

(11話)十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない──アーサー・C・クラーク




「え!?」『え!?』


「『えーーーー!』」



 わたしの声にミミの念話が重なった。


「わ、わたしはルーナ。五歳。えっと、今ちょっと迷子でして!」


 慌ててなにを言ってるのかよくわからない返事になったけど、気にする事なく巫女さまはにこっと微笑まれた。


「存じていますよ。迷子……この世界でも稀ではありますが次元の迷子は起こります。空間がねじれて、道が狂うのです」


「え、それって……“次元の穴”のこと!?」

 わたしが思わず身を乗り出すと、彼女の瞳が光った。


「ええ。この世界は今、魔素の流れが歪んでいます。原因は――“向こう側の世界”」


 ミミと目を見合わせる。これってお父様たちが忙しい原因、漏穴と同じだ。“向こう側の世界”ってわたしたちの世界のことかしら。

 

「あの、向こう側の世界ってどんなところなんですか?」

 わたしは恐る恐る聞いてみた。


「わかりません。こちらの世界から魔素が流れ出していく事はわかっています。それも随時マスターが対処しているので、今のところ大きな問題にはなっていません。貴女がたがこちらに現れたのは想定外のことで、マスターも驚いたようです」


「マスター?」


「“母さま”の事です。私達はそう呼んでいます」


「えっと、じゃあマスターはここにいますか?」


「“お母さま”でいいですよ。皆さまそうお呼びですので。マスターは今はここにおられません。ちょっと手が離せない用事で、他国の教会にいらっしゃいます。」


 そっか“お母さま”はいないのか。


『ミミ、どうしよう?』


『とりあえず、本を見せてもらおう。きっと役立つ情報があると思うから』

 

 ミミとも相談し、魔力譲渡方法が載っている魔法書か、魔力を一時的にでも増やす方法がわかればいいかなって。

 どうせ別の世界から来ちゃってることは知られてるんだし、もういろいろぶっちゃけちゃへってことに。


「元の世界に帰る方法を探してます。次元門を開けるのは、この猫 ーーミミって言うんですけどーー しか出来なくて、でも魔素が少なくて、魔法が使えないんです」


「……なるほど……マスターにも便宜を図るよう仰せつかっておりますので」


 巫女さまは少し考えて、奥の扉を開いた。


「こちらへ。この世界にまだ広めていない知識が眠る書庫です」


 出てきたのは、魔法の光で満たされた書庫。

 本棚が壁いっぱい、そして空中に浮いてる巻物まで!

 テンション爆上がり。


「うっわ! すごい!」


 たくさんありすぎて、どこを探したらいいのか検討がつかない。全く読めない文字の本がいっぱいだし。


「こちらへどうぞ。ミミさんもご一緒に」


 巫女さまは、部屋の中央にある円筒形のテーブルの前でわたし達を呼んだ。

 そのテーブルの中央には円形の切れ込みがあり、巫女さまが手をかざすと、その部分が裏返り、半円球の透明な石が現れた。


「どうぞこのスフィアに触れてください。ミミさんも」


「これは?」


「知識のインデックスです。書籍の目録と閲覧方法がわかるようになっています」


 わたしはミミを抱き上げ、テーブルに近づいた。そのスフィアと呼ばれる半円球の上半分が透明で、テーブルの中に埋め込まれているように見える部分を覗き込むと、そこには、星空があった。


『ボクが触れるから、ルーナは少し待ってて』


 ミミはそう言うとわたしの腕から抜け出し、テーブル載ってる上に飛び乗った。

 前足がスフィアにかかると、白乳色の渦が透明部分を包んだ。


「ミミ大丈夫?」


『大丈夫。特に問題は無さそうだけど、ボクだけだと本の扱いは難しそうだ。あと念話……まぁもういいか』


「じゃわたしも」


 手を伸ばして、スフィアに触れると頭の中に、ここにある全ての本の種類と、しまってある場所がわかった。

 読めないと思っていた文字も、問題なく、スラスラ読める。読めるというより、その本に意識を向けるだけで、内容がわかる。


 でも、魔力譲渡や、次元門の魔法が書かれた本はなかった。

 

「ないねー。面白そうなお話の本はいっぱいあるけど。この魔法使いの少年が学校へ行く話とか、スライムに生まれ変わったおじさんの話とか……あれ……(このお話知ってる気がする……)」

 

 魔力譲渡、自分でなんとかするしかないのかなぁ。

 んーと、ミミが使えない理由。この世界の魔素が少ない。世界の魔素を増やす。無理ダメ。

 わたしが魔力をぶわぁーってミミの周りに出す。ミミがその魔力を使う……ことは……


『出来ないね。魔素がルーナの魔力になっちゃってるからボクには使えない。直接魔力としてボクにわたしてくれるか、ボクが編んだ魔法をルーナが使うかじゃないと難しいね』


 無理かぁ。なにか役立つ本はないかなぁ……。


 ──ん?


 ──これ……使えるかも。


“エネルギー転送”、“生体同調”、“共鳴回路”


 えーっと……科学?


 知ってる気もするけど、知らない。なんだかモヤモヤする。


 でも、使えそうな気が……。


 その本に意識を向ける。


 ──知識が流れ込む。知らない魔法の使い方。でも……きっといける。


“エネルギー転送”──これで魔力を送れる。

“生体同調”──念話とほとんど同じ。大丈夫。

“共鳴回路”──んー。


 多分わたしとミミの魔力を、同じにするってことなんだろうけど……。

 酸っぱくて苦手なレモン水にハチミツを混ぜたら、わたしでも飲めるようになるみたいな?


 たとえば、わたしの魔力がハチミツで、そこにレモン水を混ぜようとしても、そんなすっぱいものわたしに入れないで。ってなっちゃうものね。

 ──うー。


 わたしがうなっていると、巫女さまが心配そうに近づいてきた。


「何かお困りですか? わからない事があれば遠慮なく聞いてくださいね」


「共鳴回路っていうのがわからないの。魔力を直接渡す方法はわかったんだけど、そのまま渡しちゃダメって事でしょ」


「そうですね。渡されても使えないですし、相性が悪ければ……。それはやめておいた方が無難だと思います」


 こっわ! すっごい怖いことを聞かされそうになった気がする。


「それを防ぐのが共鳴回路です。ミミさんのお付けになっている、その布にも共鳴回路が織り込まれていますね」


「じゃ、魔力を渡す事ができるってこと?」


 解決した! これでいつでも帰れる。


「その答えに関しましては、不明です。その布の回路を見てみないとわかりませんが、あまり大量の魔力共鳴は出来ないと思います。次元門を開く火力量も分かりかねますので」


 わからないことは、試してみましょう。


 わたしは目を閉じて、指先に意識を集中。

 ――ビリッ。空気が震える。

 白い光がじんわり滲み出して、ミミの首輪――あの“母さまのハギレ”が輝いた。


『魔力、最初に巻いた時より多く流れ込んでくる。それにあの時はちょっと異質な魔力だったけど、今はよく知ってる魔力。これなら次元門を開けられるかも』


 わたしはミミを抱き上げた。


「帰ろう。もらったおかしをテーブルに積み上げて、それを眺めながらゴロゴロしよう!」


『もちろん。サンマの約束も忘れてないでよ』


 食べることは忘れないわねぇ……やれやれ。


「じゃミミ。出てきた廃墟に戻りましょ」


『帰りはここからでも大丈夫。元の穴に繋げるだけだから、どこからだって問題なしさ』


 “母さま”に会えなかったのは残念だったけど、また来ればいいよね。

 おともだちもいっぱい出来たし。あの、おじいさんともね。


「巫女さま、ありがとうございました。無事帰れることができます。“お母さま”にもよろしくです」


「お気をつけて。“母さま”に感謝を」


「もちろん! じゃミミ、お願い」


 ミミが魔法を使うと床が白光で満たされたあと、そこに紅と黒の光が絡みあって、床の魔法陣が浮かび上がる。


 でも――


「あ! いけません!」巫女さまが叫んだ。」



「えっ!」




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