とある少女はやらかした
一人称視点の文章って難しいなァ。
「もぉ〜っ最悪っ!」
階段から落下して気が付いたらヨーロッパみたいなお洒落な雰囲気の世界に転生していたアタシ。
鏡を見てみたらそこには、髪は向日葵色、眼は海色のキラキラ美少女が映っていた。
頭の中に浮かんできた”アタシのじゃない”記憶からすると、今のアタシは貧乏な子爵家令嬢(養子)
これってもしかして乙女ゲーの主人公に転生って奴!?とすぐにピーンと来た。
やった事があるから分かったって訳じゃないけど、だってこんなに可愛いとか絶対モブじゃないでしよ!
これは王子様とかにチヤホヤされて結婚するシンデレラストーリーに決まってるわ!来月から貴族の通う学校に通うらしいし。
よーし、頑張るぞ!と意気込んで、いざ通い始めたら早速王子様とかその周りの人達にも構われる様になって。
こういうのって逆ハー目指すと”悪役令嬢“にざまぁされちゃうもんだけど、それ抜きにしても、近寄ってくる全員に愛されたいとは思わなかった。
だってイケメンとは言っても女子高生……女子高生?年齢的には女子高生で合ってるよね、に手出す先生とかマジヤバくない?犯罪じゃん。
まあこの世界だと犯罪じゃないらしいけど、気持ち的に無いわ〜って。
だから慎ましく、王子様との一途な愛を(本当は自分が結婚したいけどアタシが本当に幸せになる相手ならばと身を引いた)周りが応援してくれてる♡って感じを目指したんだけどさ。
何人もの殿方を篭絡して傍に置くふしだらな女って言われ始めちゃったのよね。
酷い噂を流されて虐められてるのって王子様に泣きついたら何とかするって言ってくれたけどさ。
で、まあそんだけなら虐めにも負けない健気な女の子♡って事で寧ろ良い感じじゃね?って思って狙いの攻略対象達とイチャイチャし続けてた訳。
そしたら何よ。
一人さ、やっばいのが居た訳。
遠い国からの留学生だっていう褐色のイケメンで、これはまさか!ってなったのよ。
だってあるじゃない、王子様という身分無しでも好意的にしてくれた彼女に胸キュン♡正体を明かしてプロポーズ♡って!
だから擦り寄ったってのにさぁ。
王子様やその側近、上手くいけば王様も、と思って学校に紛れ込まされた暗殺者って何よ、ふざけてんの?
怪しんできた王様の弟殺したとか何してるの?
で、そんな奴ともベッタベタに仲良くしてて王子様達とも付き合ってるなんて暗殺の手助けしてるでしょ、って話になったみたい。
王様の命令だっていう紙持った兵士達が家に来て、捕まっちゃったのよ。
暗殺なんて知らないって叫びまくったんだけど、アタシを利用して暗殺対象に近付こうとしてたって相手が白状したからって事で取り調べも無く牢屋行きよ。
しかも牢屋に入れる時、思いっ切り、ドカーンッて突き飛ばしたのよアタシの事!
最っ低!暴力反対!
無実の女の子を捕まえて暴力振るったって事で捕まれば良いのに!
という事があって今、石の床で布団も無いのに寝ろったって無理よという気持ちもあって声が出ちゃった訳。
見張りの兵士がすぐ近くに居る訳じゃないから怒られないけど、近くに人が居ないって事はさ、いくらメソメソしたって可哀想って思われないしマジで最悪だわー。
眠れない夜を過ごして、人が来たから”無実なのに疑われてる可哀想な女の子”ぶってみたのに意味無し。
ゴリッゴリのむっさいオッサンの兵士にうるさいって怒られるわ、良いって言う前に喋ったら指の骨折るとか脅すわでマジ最悪。
折るぞって言ってた瞬間に指ミシッて言ってたし、めっちゃくちゃ痛いんですけどもう。
暴力で大人しくさせようとか頭昭和かよ。
で、無理矢理立たされて手首縛られて、目隠しも着けさせられて。
これからどうなるのって聞けないまま無理矢理歩かされてるんだけど、どうなっちゃうのアタシ。
(マジで最悪……)
声も出せず、心の中でボヤくしか無かった。