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第18話 ダイエット目的の紹介患者

 さて、今回は肥満の患者だ

 なぜか総合内科に肥満患者を送り込んできた町医者がいる。

 そんなの、どこぞの街のダイエット外来を紹介しろと言いたいが、受診したからには仕方ない、診察するしかない。


「先生、ダイエットの紹介ですけど」

師長が言った。

「はい、そのようですね」

「そんなの、総合内科で診るんですか」

「まあ、病院が受けたからには仕方がないです。師長さん、入ってもらってください」


そして静かに入ってきた。物静かな感じの女性だが、入るなり爆竹が破裂したようにしゃべりだした。物静かどころか、騒がしいことこの上ない。


「先生、私何をしても痩せられないんです。なので、どこかに病気がないか調べてほしいんです。甲状腺機能低下症とか他に何か病気があるはずなんです」

「はい、甲状腺機能低下症で太るというのはあまり経験はありません。ネットには書いてあるとは思いますが、ちょっと違う気がします。とりあえず一通り検査はしますが、おそらく病気ではなく、単なるカロリーオーバーでしょう」

「少ししか食べてないのにカロリーオーバーなんですか」

「どれくらい食べていますか。大まかでいいですが一日何キロカロリーくらいの食事量ですか」

「計算はしていないのですが、朝はパンとサラダ、お昼はお弁当をすこし、夜はご飯を抜いておかずは少しだけです。あっ、たまに夜、ピザを二切くらい食べます。でも、これくらいのピザで、生地は薄いんですよ。それにチーズもあまり乗っていないし、それでも痩せないんです」


 典型的な例だな。自分の摂取カロリーも把握せずに、ひたすら少ししか食べてないと言う主張を繰り返す。ピザの生地がどうとか、意味不明だ。


「痩せる痩せないは、シンプルにインとアウトのカロリーのバランスだけだと思います。摂取カロリーと消費カロリーがトントンなら体重はそのまま、摂取カロリーの方が多いと太るし、消費カロリーのほうが多いと痩せます。なので、まずはご自分が毎日どれくらいのカロリーを摂っているかを把握して、痩せないなら、バランスよく摂取カロリーを減らせば良いのではないですか」

「薬とかで痩せられませんか」

「そういうのは指定病院で指定医が一定期間指導した後に可能な治療です。もちろん自費診療だとその縛りはないかもしれませんが、総合内科では一般的なカロリー指導と運動指導です」

「痩せる注射があるって聞いていたのですが」

「それなら肥満外来を標ぼうしているクリニックを受診される方がよいです」

「わかりました、肥満外来を探してみます」

「一通りの検査は要りませんか」

「それはいいです。病気じゃありませんから、私」


うーん、病気があるはずだと言ったり、無いといったり、もう勝手にしてくれと言いたい。言えたらいいけど言えない。最近意識しているのは、世のなか ”言っていいこと” と ”言ってはいけないこと” その中間の ”言わないほうがいいこと” がある。もちろん”勝手にしろ” とは ”言ってはいけないこと” だ。


 炭水化物抜きダイエットは、日本の食生活だと、炭水化物を抜くと単純にカロリーが減るだけ。

 リンゴダイエットなんて、愚の骨頂。ポリフェノールがどうとか書いてるオバカさんもいるが、どんなに糖の吸収を穏やかにしようが、吸収するのは吸収する。いろんなダイエット法がいろんな理屈をこねくり回しているが、カロリーのインアウトのバランスだけだ、ことの本質は。

 それに加えて、糖質・脂質・タンパク質のバランスと、適度の運動だけだ。

 それ以上でもそれ以外でもない。



 ダイエットは食べたら太る、食べなかったら痩せる。

 単純にそれだけだ。

 自然界の心理の、エネルギー保存の法則と似ている。


 さて、自然の摂理は置いておいて、どんどん太っている俺だが、腹は減るので昼飯は食べる。

 診察が終わって食堂に急ぎたいが、焦って食堂に向かうとなんだかさもしい感じがするのがいやで、ワザとにゆっくり歩いた。ゆっくり歩いて食堂に着いたら、定食が売り切れていた。

 急いで向かったら最後の一個に間に合ったのだろうか、それともに疾うの昔売り切れていたのだろうか。

 いやだ、そんなことを考えてくよくよする自分が嫌だ。


 仕方なくチャーハンを注文して、隅の方に座った。

 チャーハンをゆっくり味わって食べていると、食べ終わる直前に隣の席に日高ナースが座った。

 その直後に食べ終わったが、すぐに席を立つのも悪い気がして、しばらくそのまま日高友紀のおしゃべりに付き合った。

「日高さんってダイエットするの」

「しますよ。今ダイエット中」

「割とがっつり食べてるように見えるんだけど、ダイエット中なんだ」

「夜はサラダだけにするのよ。それより先生、最近お腹出てきたんじゃない。ダイエットしたほうがよさそうなお腹よ」

「そうだね、酒をやめるかな」

「お酒、やめられないでしょ」

「よし、じゃあ、俺も夜はサラダだけにするよ」

「絶対お酒飲む方に賭けるわ。サラダを肴にビール飲んでそうね」

「たしかにっ」

 

 午後からはグダグダと論文を書きながら過ごした。

 今晩は注文した電動のラジコンのバギーが19時から21時に届くので、楽しみだ。今日は早く帰ろう。

 でもまあ、届いたからと言って夜に走らせることもできないが、子供の頃憧れたラジコンを、この年になってやっと手に入れるんだから、楽しみで仕方がない。

お読みいただきありがとうございます。

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