表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ループ ザ プール

作者: 倉谷みこと

「誰が一番息止めてられるか、勝負しようぜ!」


 男の子がそんな提案をする。誰も反対しなかった。誰かのかけ声で、僕達は一斉にプールに潜った。


 どのくらい経ったのだろう。友達は次々に脱落していき、最後に残ったのは、勝負を提案した子と僕だった。結果は、僕の勝ち。でも、賞賛を浴びるのは彼だ。心がチクッと痛む。


 次は何をしようかと話していると、大人の人に帰ろうと声をかけられた。みんな、素直に更衣室に向かう。僕もその後に続いた。


 扉を開き、一歩足を踏み入れる。扉を通り抜けた先は、更衣室に続く廊下ではなく、さっきまでいたプールサイドだった。


「え、なんで?」


 もう一度、扉を通り抜ける。でも、やっぱりプールサイドに戻ってしまう。何度試してみても、結果は同じだった。


「うそだ……なんで出られないの!?」


 友達はみんな更衣室に行けたのに、どうして自分だけ戻って来てしまうのか、わけがわからなかった。パニックになりかけたところに、一組のカップルが通りかかった。


 僕は、勇気を出して二人に声をかけた。でも、二人は振り向いてくれない。まるで、僕の声なんて聞こえていないみたいだ。


 もう一度声をかけようとした時、女の人がこんなことを口にした。


「ねえ、知ってる? ここ、出るらしいよ」


 不思議そうな顔をする男の人に女の人が、


「幽霊だよ、幽霊」


 と、当然のことみたいに言った。


 嫌な顔をする男の人。でも、女の人はそんなことはお構い無しに話し始めた。


「昔、ここで小学生くらいの男の子が事故で亡くなったんだって。プールサイドで走ってる姿が目撃された直後に、滑って転んで頭打ったみたいよ。相当、打ち所が悪かったんでしょうね。即死だったって」


 と、声をひそめて言った。


「でもさ、そんなことがあったんなら、普通に営業してるのはおかしくないか?」


 男の人がそう言って首をひねる。


 確かに、僕もそんな事故があったなんて聞いたことがない。


「事故があったのは、今から四十年前らしいよ。当時は、けっこう大きなニュースになったんだって。たしか、亡くなった子はひろあき君――」


 女の人がそう言った瞬間、僕は息ができなくなった。だって、それは僕の名前だったから。急に怖くなった僕は、その場から逃げ出した。


 怖くて怖くて、他の人にぶつかることも構わずに走った。でも、ぶつかっても痛くない。それどころか、ぶつかった感触さえない。もしかして、すり抜けてる……?


 ソレじゃあ、ボクハ……ホントウニ?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ミスリードが上手く、きれいに収まっていてゾクリと来ます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ