ループ ザ プール
「誰が一番息止めてられるか、勝負しようぜ!」
男の子がそんな提案をする。誰も反対しなかった。誰かのかけ声で、僕達は一斉にプールに潜った。
どのくらい経ったのだろう。友達は次々に脱落していき、最後に残ったのは、勝負を提案した子と僕だった。結果は、僕の勝ち。でも、賞賛を浴びるのは彼だ。心がチクッと痛む。
次は何をしようかと話していると、大人の人に帰ろうと声をかけられた。みんな、素直に更衣室に向かう。僕もその後に続いた。
扉を開き、一歩足を踏み入れる。扉を通り抜けた先は、更衣室に続く廊下ではなく、さっきまでいたプールサイドだった。
「え、なんで?」
もう一度、扉を通り抜ける。でも、やっぱりプールサイドに戻ってしまう。何度試してみても、結果は同じだった。
「うそだ……なんで出られないの!?」
友達はみんな更衣室に行けたのに、どうして自分だけ戻って来てしまうのか、わけがわからなかった。パニックになりかけたところに、一組のカップルが通りかかった。
僕は、勇気を出して二人に声をかけた。でも、二人は振り向いてくれない。まるで、僕の声なんて聞こえていないみたいだ。
もう一度声をかけようとした時、女の人がこんなことを口にした。
「ねえ、知ってる? ここ、出るらしいよ」
不思議そうな顔をする男の人に女の人が、
「幽霊だよ、幽霊」
と、当然のことみたいに言った。
嫌な顔をする男の人。でも、女の人はそんなことはお構い無しに話し始めた。
「昔、ここで小学生くらいの男の子が事故で亡くなったんだって。プールサイドで走ってる姿が目撃された直後に、滑って転んで頭打ったみたいよ。相当、打ち所が悪かったんでしょうね。即死だったって」
と、声をひそめて言った。
「でもさ、そんなことがあったんなら、普通に営業してるのはおかしくないか?」
男の人がそう言って首をひねる。
確かに、僕もそんな事故があったなんて聞いたことがない。
「事故があったのは、今から四十年前らしいよ。当時は、けっこう大きなニュースになったんだって。たしか、亡くなった子はひろあき君――」
女の人がそう言った瞬間、僕は息ができなくなった。だって、それは僕の名前だったから。急に怖くなった僕は、その場から逃げ出した。
怖くて怖くて、他の人にぶつかることも構わずに走った。でも、ぶつかっても痛くない。それどころか、ぶつかった感触さえない。もしかして、すり抜けてる……?
ソレじゃあ、ボクハ……ホントウニ?