第6章 24H Nürburgring 4
もし下のカテゴリー車の後ろでゴールをしたとしても、GTカテゴリーの順位で評価をされる。
時間となった。
選手たちはうながされて立ち上がった。オープニングセレモニーだ。
アンディは少しして片膝をついた。フィチも。
照明が消えて、音楽が鳴り響く。
まず風画流が声を発する。
「Faster Fastest」
「より速く、一番速く――。24時間後、トップでゴールをするのはどのチームなのか」
それから、少し間をおいて。
「HOM電器提供、Forza Sim Racing Green Hell Cup、スタートいたします!」
と、最後は夜香楠と風画流が同時に声を発した。
照明がつけられ。音楽も少しずつが小さくなる。
ライブ配信画面は、25台のシムリグと25人の選手が映し出される。
風画流が言う。
「選手の皆さんに申し上げます。シムリグにスタンバイしてください」
そううながされて、選手たちはシムリグにスタンバイし、ハンドルを握り締めた。
シムリグのディスプレイは、メインストレートを映し出す。スターティンググリッドについている。
時間は、午後2時59分。そして、午後3時になれば。
マシンをゆっくり動かす。フォーメーションラップだ。
「それでは、このフォーメーションラップの時間を利用し、改めてチーム紹介をいたします」
プレイヤーカー25台、AIカー75台。計100台のマシンがニュルブルクリンクを回る。
夜香楠と風画流は交代しながら2度目のチーム紹介をしてゆく。3時から視聴する視聴者への配慮でもあった。
控室のクルーは画面を見入る。
2階中ホールの観客たちや、ライブ配信を観るギャラリーたちも、じっと画面を見入っていた。
会場は楽しさや期待や不安入り混じる程よい緊張感と、一体感に包まれていた。
24時間の、長いクライマックスが始まるのだ。
龍一は皆と一緒にいて、ふと、周囲を見回す。マルタと目が合い、互いに微笑み合う。
(この人たちと一緒にいたいな……)
そのために、トッププロたらんと必死にあがいてきた。しかし現実は厳しい。プロとしての義務と責任と、人情と。それらを合致させるのは、至難の業だ。
今でも覚えている。アイスランド、レイキャビクでの試合に、ホテルでの会食。
ぼっちゲーマーからグローバルへの、急展開。
映画のような、実車への誘いもあったが。龍一はそうせず、シムレーサー一筋なのも、ひとえにそれがあったからだった。
自分のこれからは24時間後に決まる。いや、決めるのだ。ウィングタイガーにいる、と。




