第4章 Touring car final 8
優は苦々しく眉をしかめた。
「ああー、ばっきゃろうが」
「しまった……!」
雄平は幸いコースアウトせずに、ぎりぎりのラインで曲がれたものの。前3台とは差がやや開いて、5位との差は少し縮まった。
高速S字の下り坂を下り切り、高速左上り坂になり。上り切れば右コーナー、それをクリアすれば左、右の低速S字。ややフラットな区間。
「フィチもなかなかやるもんね……」
「あれを見越してわざと行かせたんでしょうか?」
とソキョンと優佳が言う。
「やるかもしんないわねえ、フィチだから」
フィチは無言。真意はわからないが。それだけ集中しているということだ。
「雄平、無理するな。言うこと聞かねえでクラッシュしてリタイヤしてみろ、今夜の打ち上げ、お前をハブるぞ!」
などと優は言い。レッドブレイドのクルーたちは苦笑。人生の懸かったプロの試合でも、そんなことを平気で言うのが、優という男だった。
「は、はい!」
雄平もさすがに懲りて無理はせず、前3台を虎視眈々と狙う。もしリタイヤしたら、打ち上げハブりでは済まない。
1位Spiral KのヴェロスターN。2位Honey BearのRS3 LMS。3位DragonのシビックタイプR。4位YouHeeのRS3 LMS。
「龍一、踏ん張りな!」
現時点ながら表彰台圏内だ。ソキョンは発破をかける。
そこに迫る1台があった。ボクスホール・アストラのRacingBallのミスで5位との差が開いていたが。徐々に縮まっているのだ。
その5位につけているのは、青いLynk & Co 03。
夜香楠が実況する。
「5位のGhost_SimRaceがトップ争いに迫っています」
「やや後ろからのスタートですが、見事な追い上げです!」
という風画流の実況通り、迫っているのは第1レースで2位だったGhost_SimRacerだった。
Lynk & Co 03は丸みのある愛嬌も感じるマシンデザイン。日本では馴染みが薄いが、リアルレースではチャンピオンを獲得している手強いマシンでもある。
Exmuhleと名付けられた区間を抜け、建物が見える下り坂を下り切って左に曲がりながら上り、次いで右コーナーをクリア。その間に、03は迫ってくる。相当なペースだ。
「おい後ろから来てるぞ。抜かれるな!」
「了解!」
そのペースの速さに優もジョークを飛ばさず、真面目に雄平に伝える。
「迫るGhost_SimRacer選手! 4台でのトップ争いが5台になりそうです」
と風画流。




