元、地下アイドル
「今日でこのグループは解散します!」
私の左手前に立つ女の子がマイクを両手に涙ながらに叫んだ。グループで一番人気だった子。別に悔しくなんかない、私達の活動拠点は文字通り地下のライブスタジオだった。首を大きく振らなくても客席全体が見渡せる。
ステージの手前いるおじ達は彼女の声に呼応する様に嗚咽していた。3人だけだけどね。他のおじは遠巻きにステージを眺めているし、壁沿いにいるのは関係者だし。ラストライブでこんなにスカスカなステージのグループで頂点とっても何の意味も無いでしょ。
クラスで一番、いや多分学校で一番可愛い自信があった。アイドルブームだし、私が東京に行けば余裕で天下とれる自信があった。だからアイドル活動するために、とりあえず東京の大学に進学した。上京後は高校の頃からSNSでやりとりしていた小さな芸能事務所に所属した。
でもアイドルってすぐに人気が出るものでは無くて、結構下積みが必要なことに気付かされた。入る事務所間違えたかな、普通にバイトしなきゃ生活できないし、レッスンあるから遊ぶ時間無いし、寝坊して単位落とすし。同じ大学の子と比べて、なんだかバカバカしくなってきたところだったから解散はかえって良かった。
でも一応アイドルだからさ、ステージ上ではちゃんと割り切ってますよ。センターの子に抱きついて、涙流して、みんなありがとーって。
グループ最後のSNS投稿は私の役目だった。みんなが画面に収まるように、決まった立ち位置から撮る。アイドルグループってメンバー同士がギスギスしているイメージがあるみたいだけど、私達は結構ビジネスライクだったから特にトラブルは無かった。
別にプロデューサーが悪いわけじゃない、レッドオーシャンだっただけ、運に恵まれなかっただけ。大袈裟に申し訳無さそうな顔をする40代のおじさんを、近くの居酒屋でメンバーみんなで囲むんだ。
ゾロゾロとライブスタジオから出る時にセンターの子と並んだ。
「終わっちゃったね」
彼女はプロデューサーのツテでちょっと有名な事務所に所属することになったらしい。そのせいか、今の発言はちょっとバツが悪そうにも思える。
「これからどうする?」と続けてきた。
私は非常口を眺めながら応えた。
「とりあえず、普通に就職かなぁ」




